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森の王との対決

 夜が明ける。俺達は焚火に身を寄せ、睡眠を取った。


「フィルド様……だめです、フィルド様。そんな私から離れられないなんて、甘えられても困ります。もう……困った人なんですから。えへへっ……」


 ルナシスは都合のいい夢を見ているようだった。涎を垂らしながらニタニタとした笑みを浮かべている。


「おい! 起きろ、ルナシス」


 俺は肩を揺すりルナシスを起こす。


「あっ……フィルド様。おはようございます」


「おはようルナシス」


 ルナシスがいないと俺はエルフの国に行けないのだ。起こさなければどうしようもない。このまま置き去りにするわけにもいかなかった。


「なんだかとても気持ちのいい夢を見ていた気がします」


「……そうか。それは悪い事をしたな」


 何となく夢の内容が想像できた。


「いえ。いいんです。起きてすぐフィルド様のお顔を見れたのですから」


「起きたならいくぞルナシス」


「はい!」


 俺とルナシスは再びエルフの国を目指して歩き始めた。


 ◇


「もうすぐ、この先に霧の迷宮があります」


「霧の迷宮?」


「はい。霧の迷宮です。普通の人間ではエルフの国にたどり着く事ができません。霧の迷宮を見つける事ができませんし、そして入っても出る事ができません。そして、霧の迷宮を抜けた先にエルフの国があるのです」


「なあ、ルナシス。いい加減にしないか?」


「えっ? 何をですか?」


「なんでそんなにエルフの国に詳しいんだ。おかしくないか? そんなに詳しく普通の人間が知っているわけがない」


「それは……」


 ルナシスは口ごもる。


「別に言いたくないなら言わなくていい」


 そもそも俺達は暫定的にパーティーを組んでいるに過ぎない。本当の仲間とは言えない。それに仲間だからと言って全ての隠し事を否定するわけではない。嘘だって場合によっては優しい嘘もあるはずだ。隠すのにも理由がある。


「いえ、私だってフィルド様に隠し事をしたいわけではありませんっ! 私は――」


 ルナシスが言葉を紡ごうとした時だった。森の空気が震撼した。


「……ん? なんだ?」


「この気配は――」


 俺達は警戒した。森の奥から一匹のモンスターが現れる。そのモンスターはこれまで俺達が相手にした犬程度の狼ではない。


 本物の巨大モンスターだ。ビッグ・ウルフ。いわば森の狼達の親玉だ。


「ビッグ・ウォーウルフ。この森ではいわば主と言われているモンスターです」


 ルナシスは身構える。やはり剣聖、良い剣を持っていた。構えた剣はオリハルコンブレイドという。希少金属であるオリハルコンをふんだんに使用した一級品の武器だ。伝説系の武器ではないから唯一無二の代物ではないが、それでも家一戸くらいは買えるだけの値段はする。


ちなみに俺の持っているブロードソードの価格はその1000分の1ほどである。


「やっぱり、良く知ってるんだな。この森の事」


 俺も剣を構える。


 グウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!


 ビッグ・ウルフは唸り声をあげた。


「フィルド様、ここは私が」


「俺はルナシスに道案内を頼んだだけだ。戦闘まで任せる気はない」


「私がフィルド様のお役に立ちたいのです! そこで見ていてはくれないでしょうか?」


「そうまでいうなら任せた」


「はい!」


 ルナシスは構える。


「はあああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 迷いのない剣がビッグ・ウルフに襲い掛かる。ビッグ・ウルフの爪とルナシスの剣が激しくぶつかり合い、甲高い音を奏でた。しかしルナシスの剣の切れ味の方が上だった。ビッグ・ウルフの爪はあっさりと斬り落とされる。


「はあああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 気合の入った叫びと共に繰り出される次の一撃はビッグ・ウルフの胸元を貫いた。


 キャウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!


 ビッグ・ウルフは呻いて動かなくなった。


「やりました。フィルド様」


 俺はすぐに察した。


「甘く見るなっ! ルナシス! 大型モンスターの生命力をっ!」


「えっ!?」


 振り返ると満身創痍ながら、巨大な爪を振り下ろそうとしているビッグ・ウルフの姿があった。


「ちっ!」


 俺は舌打ちと共に剣を繰り出す。人類最速の踏み足で接近する。


 そしてビッグ・ウォーウルフの首を刎ねた。ゴロリと首が落ちる。


「ふう」


 俺は一息吐く。


「ありがとうございます! フィルド様! おかげで助かりました! 流石はフィルド様です」


「まあな……それだけ付与してた経験値が多かったからな。返して貰えばこれくらいの事はどうってことない」


「それよりフィルド様。なんだか私、以前より体が軽くなった気がします」


「そうか……ステータスを見てみるか」


 俺のポイントギフターとしての能力にはステータスを見るものも含まれている。


 相手のレベル及び付与されたレベルがわかるのだ。普通は特別なスキルがないとレベルを確認する事はできない。


「あっ! レベルがあがっているな! ルナシス」


 ルナシスのレベルが90から91になっている。


「えっ!? 本当ですか!! 嬉しいです。だって私もうレベルあがる事ないと思ってましたからっ!」


 ルナシスは飛んで喜ぶ。余程レベルがあがったのが嬉しいのだろう。確かにルナシスレベルの実力者であればもはや余程の事がない限りレベルもあがらないだろう。


「ああ。俺の経験値分配能力者ポイントギフターとしての能力には経験値を2倍付与するというものがある。ただこの経験値の分配は俺がコントロールできるんだ」


「大体私の場合、どのくらいの経験値量を頂いたんでしょうか?」


「そうだな。EXP(経験値量値)奴のが大体10000(スライム1万匹分)くらいだったから、付与されたのは倍の20000EXPだな」


 ルナシスのレベルになると1あげるだけでも一苦労だ。


「そんなっ! そんなに経験値受け取れません! フィルド様にお返しします!」


「いや。いいんだ。エルフの国に案内してもらうお礼だ。受け取ってくれ」


「ありがとうございますフィルド様。この御恩生涯忘れません」


 涙すら流しそうな顔でルナシスは礼を言ってくる。


「大げさだな、ルナシス」


「大げさではありません。私にとってはそれだけ重要な事です」


 ルナシスは湧き上がってきた涙を拭う。


「フィルド様、私の秘密ですが然るべきタイミングが来ればお話します。それまで待っていてはくれませんか?」


「別に話したくないなら話さなくていい。話したくない事なんて誰にでもあるものだ」


「いいえ。私はフィルド様にお話したいんです。私の事を。本当の私の事を知ってもらいたいのです。然るべき時が来たら」


「……そうか」


 ルナシスの目は今まで以上に真剣だった。何か重大な秘密を抱えている気がする。


「それでは行きましょうか。フィルド様」


「ああ」


 俺達はこの先にあるとされる霧の迷宮へと向かった。







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