エルフの国へ向かう情報を集める
「エルフの国ですか!?」
「ええ。エルフの国に行ってみたいんです」
俺は王都アルテアの王立冒険者ギルドにいた。俺の次なる野望はエルフの国に行く事だった。エルフはあまり人目につく場所に現れない、神秘的な種族だとされている。
だから俺は猶更エルフの国に興味を持つようになったのだ。
そこで俺は受付嬢から話を伺う。
「うーん。エルフはあまり人間のいる場所へ現れませんからねぇ。森の奥で生活していて滅多に目にしないという事くらいしか知りません」
受付嬢は溜息を吐く。申し訳なさそうに目を伏せた。
「ごめんなさい。あまりお力になれそうにありません。エルフに関する情報が得られた場合、お伝えしますね」
受付嬢は作った笑顔を浮かべる。
「わかりました。また何か情報が得られたら教えてください」
「はい。またのお越しをお待ちしております」
俺はギルドを後にした。
◇
「うーん。やっぱりエルフの情報はなかなか得られそうにないな」
俺は王都アルテアの市場を歩いていた。アルテアには様々な人種が行きかう。中には亜人種もそれなりにいたが、確かにエルフは見当たらなかった。
エルフから直接話を聞く事はできなさそうであった。俺のエルフの国に関する情報収集はなかなかに難航していた。
――と、その時であった。
「フィルド様ああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
「お、お前はルナシス!!」
突如、抱き着いてきた金髪碧眼の美少女。剣聖ルナシスだ。
「ど、どうしたんだよ!? いきなり」
突然美少女に抱き着かれ、俺はまたもや通行人から好奇の視線で見られる。中には不愉快そうに舌打ちする男もいた。
「こんなところで遊んでて良いのか? 『栄光の光』の仕事もあるだろう?」
「辞めてきました。あんな所。フィルド様のいないギルドに用はありませんから」
「辞めてきたって。それで、その後何をするつもりなんだよ?」
「それは勿論! フィルド様とパーティーを組むんです!」
「それは前に断ったはずだろ」
「そうですか。それは残念です」
ルナシスはしょげる。美少女を悲しい顔にさせるのは男として罪悪感にかられた。
「す、すまない、ルナシス。俺は別にお前を傷つけるつもりじゃ」
「じゃあ、パーティーを組んでくれるんですか!?」
「それはしない」
「えー! ……残念です」
またしょげる。
俺が言えば従いこそするが、本当の意味で諦めてはくれない感じがした。
「ところでフィルド様は何をしているのですか?」
「俺はエルフの国の行き方を探していたんだよ」
「まあ、エルフの国ですか!?」
「何か知っているのか?」
「実は私、エルフの国の行き方を知っているんです」
「な、なんだと!? それは本当か!?」
思わぬ方向から助け船が出てきた。
「はい! そうです。フィルド様はエルフの国に行かれたいのですか?」
「うっ。うん、そうだよ。俺はエルフの国に行きたいんだ。だからその行き方を探していたところなんだ」
「そうだったのですか。あーあっ。どうしようかな。フィルド様が私とパーティーを組んでくれるなら、案内してあげてもいいんだけどなぁ」
もったいぶった感じでルナシスが言ってくる。
「ぐっ……」
俺は口ごもる。
「わかった。ルナシス。一緒にパーティーを組もう」
「本当ですか!?」
ルナシスの表情が一瞬で笑顔になる。
「ただ、エルフの国にたどり着くまでの暫定的なものだ。一時的にパーティーを結成するだけなら構わない」
「わーい! フィルド様とパーティーが組める! わーい!」
「聞いているのか! あくまでも一時的なパーティーだぞっ!」
俺は念を押す。俺は一人でいたいんだ。たとえ相手が剣聖だろうと、とんでもない美少女だろうと例外ではない。
もう集団の中で虐げられたり、誰かと必要以上に関わるのは御免だ。
「わかっています。けどフィルド様とパーティーを組める事には変わりませんから」
ルナシスはとびっきりの笑顔を浮かべる。恐らくは俺にしか見せないであろう笑顔だった。その笑顔に俺のスタンスが少しばかり揺らぎそうになり、それを必死に堪えた。
「どうしたんですか? フィルド様!?」
ルナシスが俺の顔を覗き込んでくる。
「なんでもない。それより、早速案内してもらおうか。エルフの国へ」
「はい!」
俺とルナシスはエルフの国へと旅立った。こうして暫定とはいえ、剣聖ルナシス・アークライトとパーティーを結成する事になったのである。
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これからしばらく怒涛の1日3回更新! 昼12時 夕方6時 夜8時を予定しています!
また1日3回更新期間終わった場合はあとがきに書きますね。