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【追放者サイド】ギルド員がストライキを起こす

「……ったく。ひでぇ目にあったぜ」


 クロード達『栄光の光』の幹部は王城から自分達のギルドに戻ってきた。散々国王に糾弾され、何とかそれを必死に誤魔化してきたのだ。誤魔化しきれていないかもしれないが。


「そうよ。なんで私達がこんな目に合わなきゃなのよ」


 ドロシーは嘆いた。その端正な顔立ちを醜悪に歪める。


「どれもこれも全てはフィルドのせいです」


 カールはフィルドを責めた。


「ああっ! あいつのせいだっ! あいつの存在が悪いんだっ!」


 ボブソンも責めていた。


 他責する事で自己保身に走っているのだ。


「ったく。けどなんでだ? フィルドの奴、なんでまた急に強くなったんだ?」


 暗殺に失敗したクロードは疑問を投げかける。


「そうね。その通りね」


 ドロシーも頷く。


「それに、なんか俺、最近、疲れやすくなった気がするんだ。カール」


「はい」


「俺に回復魔術をかけてくれ」


 回復術士(ヒーラー)であるカールは死にかけのHPすら一気に回復させる効力があった。


「わかりました。回復魔術(ヒーリング)


 カールは回復魔術(ヒーリング)をクロードにかける。しかし一向に体力が回復している気配がない。


「なんだ、この回復量は、温泉にでも漬かってた方が余程体力が回復しそうじゃねぇか」


「ほ、本当です。な、なんでこんなに効かなくなったんですか?」


 カールは慌てふためいていた。


「ボブソン。そこに甲冑がある。殴って壊してみろ」


 怪力無双のボブソンは以前は硬いモンスターすら素手で倒せる程であった。武器を持った場合、その無双っぷりは鬼人の如し。まさしく鬼に金棒だった。


「ああっ! うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 ボブソンは甲冑を殴る。

 

 ボキィ!


 良い音が響いた。手首がひしゃげた。


「うわああああああああああああああああああ! 手首が曲がったよおおおおおおおおおおおおおおおおお! 痛いよおおおおおおおおおおおおおお! ママーーーーーーーーーーーーー!」


 巨体のボブソンがまるで童子のように泣き喚いた。


「ボブソン!」


 ドロシーが声をあげる。


「ボブソンが強気でいられたのもその絶対的な力があったからだ。俺はこいつが実は弱気で泣き虫な臆病者だって知っている」


 クロードは嘆いた。


「ま、待っててください。ボブソン。回復魔術(ヒーリング)


 カールはボブソンに回復魔術(ヒーリング)をかけた。


「うわああああああああああああああああ! 全然効かないよおおおおおおおおおおお! 痛いよおおおおおおおおおおおおお! ママーーーーーーーーーーーーー!」


「大の男が無様に泣き叫ばないでよ。見苦しい」


 ドロシーは吐き捨てる。


「けどこれでわかった事がある」


「なによ?」


「俺達、すげー弱くなってるんだ」


「なっ!? なんですって!? それは本当!?」


「ああ。それ以外に考えられない」


「でもなんで?」


「フィルドだ」


「「「フィルド!?」」」


「ああ。それ以外に考えられねぇ。奴はギルドを去る時、分配していた経験値が戻るとか言っていた。あれを俺達はクビを逃れたいがための見苦しい言い訳だと思っていたが、どうやらそうじゃないらしい」


「くっ! そんなっ! じゃあ私達の以前の強さはフィルドのおかげだったっていうの!?」


「ああ。ポイントギフターなんて経験値さえゲットしちまえば用済みだと思っていたが、どうやらそうではないらしい。くそっ! あいつはうちのギルドに必要な人材だったんだ!!」


「ど、どうするのよこれから!!」


「それはこれから考えるしかねぇだろ!」


「大変です! 二人とも!!」


 カールが大声を出す。


「どうした!?」


「ギルド員が!! ギルド員がストライキを起こし始めました!!」


「なんだって! すぐに向かう!」


 クロードはストライキの現場へと向かっていった。



「どうしたんだ!? お前ら! いきなりストライキなんて!」


 クロードの目の前にはストライキを起こしているギルド員がいた。


「やってられるかよ! こんなギルド!!」


「ああっ!! なんでだよ!?」


「今のギルドのあり様、とてもトップギルドとは思えねぇ!」


「そうよそうよ! 急にギルドのレベルが下がり過ぎたのよ!」


「このままじゃ、とてもクエストをクリアできると思えねぇ! このところのクエストも失敗続きで、『栄光の光』の評価もガタ落ちだ!」


 ギルド員はそろって不平不満を漏らす。


「落ち着けよ。なっ!? 問題は俺が必ず解決するっ!」


「無理だ! フィルドさんがいたからこのギルドは保っていたものだ!」


「そうよ! フィルドさんがいたからこのギルドはトップギルドになれたのよっ! その恩恵を忘れて、身勝手な理由でクビにするからっ! だからその報いを受ける時が来たのよ!」


「くっ! どいつもこいつもフィルド、フィルドって。うるさい奴らだなっ! 安心しろ! お前ら! 俺達にはあの剣聖ルナシスさんがいるっ! ルナシスさんならきっと俺達を導いてくれるさ! なっ! ルナシスさんっ!」


 クロードはさっきっからその様子を傍観していたルナシスに声をかける。


「その事ですがクロードさん。お話があるのです」


「お話!? なんですか!?」


 クロードは嫌な予感を抱いた。


「『栄光の光』を抜けさせて頂きたいのです」


「なぜだ? なぜだよ! なんでなんだよ急に!?」


「王都でフィルド様に直接お会いしました」


「フィルド! あいつに会ったのか!!」


「はい。それでお話をお伺いしました。フィルド様はもう『栄光の光』には所属していないとおっしゃていました。今の役員達に追い出されたのだと」


「くっ、ううっ!」


 もはや嘘のつきようのない事実を突き付けられ、クロードは口ごもった。


「私はフィルド様が所属していると思っていたので『栄光の光』に転籍してきたのです。フィルド様のいないギルドに用はありません。ましてやフィルド様を粗雑に扱ったあなた達と一緒にいたいとは思いません」


「ま、待て! 待ってくれ! 報酬は以前の提示額の倍出す! いや3倍だっ! ギルドがこのありさまだ。今あんたに抜けられると困るんだよ!!」


「しつこいですよ」


 ルナシスはギルドを去ろうとする。


「待ってくれ!! なあ! おい!」

 

 それでもクロードはしつこく食い下がる。ルナシスの肩をつかんだ。その瞬間、ルナシスの全身に殺気のような気が漲った。


「なっ……」

強烈な殺気を受けたクロードはそのプレッシャーに負け、呼吸することすら出来なくなった。


 まさしく蛇に睨まれた蛙だ。クロードは失禁しそうになるのを堪えるが、その場にへたれこんでしまう。


「私に触れて良いのはフィルド様だけです。汚らわしい手で触れないでください。それではさようなら。短い間でしたがお世話になりました」


 いよいよルナシスはギルド『栄光の光』を去る。


「くっ……な、なんでなんだよ! ちくしょう! なんでこうなるんだよっ!」


 クロードは嘆いた。剣聖ルナシスが脱退した事で、いよいよ『栄光の光』はギルド員の流出を免れ得なくなってきた。

 

 ルナシスが所属しているという事がギルドにとっても最後の砦であったのだ。


トップギルド『栄光の光』はいよいよ本格的な転落劇を演じていく事になる。







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