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剣聖ルナシスにパーティーを組みたいと懇願される

 俺は近衛兵に連れられて、王城を訪れた。大きくて綺麗な城だった。俺達は王城に入る。そこに国王はいた。威厳のありそうな風格のある国王だった。


「国王陛下! フィルド様がいらっしゃいましたっ!」


 一瞬、国王が険しい顔をしている気がした。しかしその表情は明るいものに一転する。


「おおっ! 君がドラゴンを倒したという冒険者のフィルド殿かっ!」


「はい。はじめまして、国王陛下」


 俺は一礼し、ひざまずく。流石に国王陛下相手に横柄な態度を取るわけにもいかない。


「そう堅苦しい態度を取るな。貴公は言わば我が王国の英雄なのだからな。我々も山岳地帯に出現したドラゴンには手を焼いていたのだよ」


「そうだったのですか。それは良かったです」


 あくまでもドラゴンの肉を食べたいという個人的欲求から始まった行いだ。それが結果として国の為、皆の為になっていたのならそれ以上の事はない。


「待っていろ! セバスよ! 褒美を持ってこい!」


「はっ!」


 セバスと呼ばれた執事らしき人物が何かを持ってくる。


「フィルド様。受け取ってくださいませ」


革袋を握らされる。ずっしりとした重みがあった。


 これは金貨なのか? ……だとしたら明らかにおかしな量の金貨が詰められた革袋だった


「そ、そんなっ! 悪いですよ! 受け取れませんっ! あくまでも私が個人的にした事ですので」


「そういうわけにもいかない。フィルド殿。貴公は我が王国アルテアの英雄だ。英雄を手ぶらで帰すわけにもいかない。どうか受け取ってくれ」


「どうぞ。フィルド様」


「ありがとうございます」


 俺は褒美を受け取った。

 

 中身、金貨なのか? 一体何枚入ってるんだ。最低でも100枚以上は入っているぞ。


「本当なら領地のひとつでもくれてやりたいところだが……どうだ? 領主となってみる気はないか? フィルド殿」


「そ、そんなっ! め、滅相もありませんっ!」


 個人的な欲求でしたドラゴン退治で領地まで貰うなんて、恐れ多すぎる。

それに俺はこれからエルフの国を見て……それから……とにかくやりたいことはたくさんあるんだ。領地なんてもらっても管理しきれる気がしないし、したいとも思わなかった。


「それに国王陛下。私にはまだやりたい事があります。領主となるのはいささか早すぎます」


「……うむ。そうか。是非フィルド殿にこの王国にとどまって欲しいと思っていたのだが、貴公の器には領主では収まらなかったか」


 やはりこの国王食えなかった。そういう魂胆があったのか。俺は溜息を吐く。


「それではまた何かわし等にできる事があれば力を貸そう。それを第二の褒美としよう」


「ありがとうございます。それが何よりの褒美です」


 俺はそう陳謝し、程なくして王城を去った。



帰り道での事であった。


俺は小包を広げる。すげえ、やっぱり中身は金貨だった。ずっしりとした重みがある。


何を買おうか。この前のギルドでの報奨金の上に国からの報奨金。買いたいものは割りと何でも買えそうであった。


何を買おうと思い悩んでいた時の事であった。


「フィルド様ーーーーーーーーーーーーーーー!」


 声が聞こえてきた。


「誰だ? えっ!?」


 突如、少女が抱き着いてきた。柔らかい感触。そして女の子特有の気持ちのいい匂いがしてきた。


「き、君は――」


 金髪をした絶世の美少女。彼女には覚えがあった。直接の面識はない。だが、彼女は有名人なので知ってはいた。


 剣聖ルナシス。他所のトップギルドでエースをしていた少女だ。俺が『栄光の光』に所属していた時の事だ。今どこで何をしているかまではわからない。


「ルナシスさん」


「やっぱりフィルド様だ。フィルド様、大変お会いしたくありました。あなた様と一緒に居たくて、私は『栄光の光』に移籍してきたのであります」


 ルナシスは頬ずりさえしてきそうな距離で俺を見つめてくる。


「私、フィルド様の事をずっと尊敬していたのです。ご自身の経験値取得すら犠牲にして、ギルドに尽くすその自己犠牲、利他精神、とても真似できるものではありません」


 周りからの視線が痛い。こんな絶世の美少女に抱き着かれているのだから当然か。誰だって嫉妬くらいする。


「私、わかっております。『栄光の光』の躍進の全てがフィルド様の陰の活躍あってこそであると!」


「ちょ、ちょっと、ルナシスさん。皆見てるよ」


「フィルド様。そんなルナシスさんなんて他人行儀な呼び方しないでください。どうか『ルナシス』と呼び捨てにしてくださいませ」


 色々ややこしそうなので『ルナシス』と呼び捨てにする事にした。


「ルナシス」


 剣聖の称号を持つ少女を呼び捨てにするのは正直は憚られた。


「はい。フィルド様」


「フィルド様って、俺は様付けなのか」


「フィルド様はフィルド様ですから」


「まあいい。とりあえず、抱き着くのをやめてくれ。周囲の視線が痛い」


「そうですか。私は気にしませんが、フィルド様がそういうのでしたら」


 大人しくルナシスは従う。これでやっと落ち着いて話ができる。とはいえ相手は絶世の美少女だ。少なくない緊張と動揺が走る。


「それでルナシス、俺に何か用か?」


「はい! 私はフィルド様と一緒に居たいと思い、『栄光の光』に移籍してきました。ですがどうやらフィルド様は在籍していない様子、そうですよね?」


「そうだ。俺は最近ギルドを辞めたんだ」

 

「まあ、どうしてですか?」


「辞めたというより辞めさせられたんだ。俺なんて何の役にも立たない。経験値ももう十分稼いだから用済みだ、って具合でな」


「そ、それは酷い! 彼等は見る目がないのですっ! ギルドの躍進もフィルド様のご活躍あってこそなのに!」


「それで稼いだ経験値は俺の元に帰ってくるんだけど、それでもいいのか? って念を押したんだけど、連中はクビを逃れたいが故の言い訳だって聞かなくて。それで今ではフリーの冒険者として気ままにやっているんだ」


「つまりフィルド様は今はどこのギルドにも所属していないという事なのですね?」


「ああ」


「それは良かったです。フィルド様のいない『栄光の光』など私は微塵の未練もありません。フィルド様! 私とパーティーを組んでください!」


「あ、あんな綺麗な子に言い寄られて、なんだ、あの男は」


「なになに!? 愛の告白!? 逆プロポーズ」


「うらやましい野郎だなぁ。おいっ!」


「っていうか、あれは剣聖ルナシス様じゃないか。有名人の」


「ほ、本当だ!? ルナシス様だ。あ、あの男は一体」


 野次馬が勝手に騒いでいた。


「俺とパーティーを組みたいのか!?」


「はい! そうです! 是非パーティーを組みたいですっ!」


 ルナシスは無邪気な笑みを浮かべてくる。


「断る」


 俺は即答した。


「ええーーーーーーーーー! どうしてですかフィルド様! わ、私の実力では不足だというんですか!?」


「剣聖であるルナシスの実力は疑う余地もないよ。だけど俺は前のギルドで徒党を組む事に懲りたんだ。これからは一人で気ままに活動していきたいんだ」


「そうですか……」


 ルナシスは少し落ち込んだ様子だった。美少女を落ち込ませるのは流石に気がねした。だが、ここは仕方ない。自分の主義を曲げるつもりもないからだ。


「でしたら仕方ありません。ですが、私、諦めません! フィルド様のお気持ちが変わるまで! 私は絶対に!」


「……そ、そうか」


「それではフィルド様! またお会いしましょう!!」


 そう言って、ルナシスは快活な笑顔を浮かべその場を去っていった。


「またって……全然諦める気ないな」


 俺は軽く溜息を吐く。剣聖ルナシス。彼女とは近いうちまた再会するだろう。そんな予感がした。



 


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