ギルドでドラゴン退治の褒章を受ける
商人達とドラゴン料理のパーティーをした俺は王立の冒険者ギルドへと報告に向かった。
「いらっしゃ……フィルドさん! ご無事で何よりです」
心配した様子の受付嬢を安心させるために仕舞っておいたものを取り出す。
「情報ありがとうございました。これが討伐証明のドラゴンの牙と角です」
「えっ……本当に倒したんですかっ?! それも一人で!?」
「ああ。本当だよ。私達も一緒にいて、倒したドラゴンを料理して食べたんだから間違いない」
「食べたっ!? それは本当ですか!?」
受付嬢は大層驚いていた。
「こほんっ。気を取り直して、それではドラゴン退治の報奨金のお支払いになります。報奨金は金貨100枚です!」
カウンターに小包を置かれる。俺はそれを手で持ってみた。ずっしりとした確かな重みを感じた。
「金貨100枚って、そんなに貰えるんですか!?」
金貨100枚。あのギルド『栄光の光』で働いていた時なんてそんなに貰った覚えはないぞ。大体月金貨2~3枚の固定給だった。金額まではわからないが、幹部の連中は相当な金額を貰っていたはずなのにだ。
「ドラゴン退治にはそれだけの価値があるんです。これでも少ないくらいですよ。はい。受け取ってください」
「ありがとうございます」
俺は金貨100枚を受け取った。これで資金の問題はなくなった。やはり生活をしていく上でお金は必要不可欠だ。あればあるに越した事はない。
「そうだ。フィルド君。改めて君にお礼がしたいんだ」
街道で知り合った大商人が俺にそう言ってくる。
「お礼!?」
「ああっ。おかげで無事、街道を通れて荷物を届けられたし。そのお礼だよ。君がドラゴンを退治してくれたおかげさ。申し遅れた私の名は商人のゴンザレスと言ってね」
大商人――ゴンザレスはそう俺にお礼を言ってきた。
「この近くに私の店があるんだ。フィルド君、是非来てはくれないか?」
「ではお言葉に甘えて」
断るのも申し訳ないと思い、俺はゴンザレスの店にお邪魔させてもらう事にした。
◇
「うわ! すごい大きなお店ですねっ!」
俺は感激していた。大きな商店だった。中には様々な物がある。例えばマジックアイテムであったり、貴重な宝石だったり、はたまた強力そうな武器であったり、何でもありそうな総合商店に思えた。
「待っててくれたまえ。今、お茶を出すから。そこに座っていてくれ」
「はい!」
俺は高級そうな椅子に座る。
――と、その時だった。
「お待たせ。待たせたね。フィルド君」
ゴンザレスがお茶を持ってきた時の事だった。
「ここにフィルドさんという冒険者はいませんか?」
男が商店に入ってくる。兵士風の男だ。
「は、はい。フィルド君ならそこにいますが」
「申し遅れました。私達は王国の近衛兵です。王立ギルドで話を聞いたところ、フィルドさんは商人のゴンザレス様と商店に向かったとお聞きしましたので伺わせて頂きました」
「フィルドは俺ですけど、一体何の用ですか?」
「国王陛下がお呼びです。山岳地帯に出現していたドラゴン退治の褒賞をしたいという事で」
「い、いえ! いいですよ! 滅相もない! 褒賞なんて!」
俺は断ろうとした。しかし大商人が。
「フィルド君! それはまずいよ! 国王陛下からの褒賞を断るなんて!」
「うーん。そうですか」
「フィルド様……!」
「……わかりました」
たしかに国王陛下の申し出ともなれば受けないのはまずいか。
「ありがとうございます。それでは、ご用件がお済みになりましたらお声掛けください」
そう言って控えようとした近衛兵をゴンザレスが引き止める。
「ああ、さすがの私も国王陛下の予定があるなら引き下がるさ。フィルド君、この御礼はまた後日改めて」
「わかりました」
近衛兵の男に連れていかれ、俺は国王陛下のところまで向かう。
◇
一方――。
国に呼び出された『栄光の光』の役員達は顔面蒼白になっていた。目の前にいるのはアルテア王国の国王ガゼフ=アルテアである。
「商人達が貴公等のギルド員に拘束されたと報告をしてきた。それは本当であるか?」
「そ、そんなわけありません!」
「そう! 我々ではありませんわ! 国王陛下!」
「……そうか。では誰が拘束したというのだ?」
「俺達の名前を騙る! あくどい連中です! なんたって俺達のギルドはトップギルド! やっかむ連中は無限に存在するんです!」
「そ、そうです! その通りです!」
「そうだ! 俺達は無関係です!」
ギルドの役員達は必至に反論する。
「うむ……そうか。やっかむ連中の所業か。そう主張するのだな?」
「そうです! 国王陛下! その通りです!」
「そうですわ! 国王陛下!」
自己保身のためなら平気でうそをつく。それがクロード達の人間性でもあった。
「まずい」
クロードは呟く。
その場にいたルナシスの態度が急速に冷めていくのを感じた。ただでさえ今までの積み重ねで冷えて行ったが、ついに氷点下を下回り、マイナスになった、そういう感じだ。
このままではまずい。クロードはそう感じていた。トップギルド『栄光の光』は今までにない程の窮地に陥っていたのである。
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