序章 ジャックとの出会い
* 序章 *
―――――――
藍色に染まり始めた空気は生あたたかく
頭の中でする自分の吐息を吐息が凌駕することを許さないかのような
木々のざわめき
熱い、と呼べるほどの雨粒は
きっと ガラスに触れた時の体温ほど冷たい
わたしの 涙 なのかと
その 雨のことを
今では
そう思ってみたりも
するのです。
*―――――*
「・・・なんじゃ、こりゃ?」
祖母の家の書庫、本棚にならぶ本から適当に抜き出した一冊のはじまり。
それは、インクで書いた手書きのもので、ぱらぱらとめくると続いていた。
最後のページからめくり読む癖のある僕は、手書きのその本を奇妙に思った。
最初のページにいきついて、一枚は白紙で表紙の中の表紙として残してあった。
次のページに戻って、文字を読む。
【 ハァイ。ボーイ。あなたの名前はジャックよね?
あなたを『ジャック』してやるんだわ 】
僕の名前は、ジャック。
顔をしかめて本に寄せると、やっぱり僕のことが書いてあった。
【 あなたは今日、白いシャツに、短い紺色のズボンに、サスペンダーをしている 】
僕の名前はジャックで、今日はまったく本に書いてある通りの格好をしてる。
「なんじゃこりゃ??」
近くにあった椅子を引いて座り、本の続きを見てみる。
【 あなたが何歳なのか 当てましょうか?】
面白い、と思って次を見る。
【 十二歳 】
「ええっ?」
【 わたしは今、とある森の中。木でできた橋の側でこれを書いているわ 】
ん?と思って数秒の間。
僕は今十二歳だし、僕の祖母の家の近くに森がある。
そこに、木製の橋があるのを思い出した。