プロローグ
俺はいわゆる、天才という奴だ。
世紀の天才数学者。
数学者というのは文字通り数学を解く学者のこと。
大抵は研究室に篭って、生活している。
ボサボサの頭でまるメガネをかけ埃のかぶった黒板を前にずっと腕を組んでいる。
要するに根暗である。
数学者というのは全員例外なく根暗なのである。
というのは言い過ぎである。
根暗なのはごく一部で、基本的にみんないい奴である。
ちなみに、俺もボサボサの頭にまるメガネ。
鏡に写った自分を見ると、しおれたハムスターみたいな感じ。
髪を整えればブサイクではないのかもしれない。
でも、根暗だ。
自分で言ってて悲しくなるけど、顔全体から根暗臭が漂っている。
なんだ根暗臭って。
しかし、ただの根暗ではない。
俺はユーモアセンスのある根暗だ。
例えば、
『π+πは?』と問われたとする。
並大抵の数学者なら、真面目な顔で
『2πですね』と答える。
これで会話が終わってしまう。
凡人。
しかし、俺の場合は違う。
迷いなく、
『おっぱいです』と答える。
パイが二つでパイパイというわけである。
実にユーモアセンスに富んだ返答である。
どうでもいいね。
大事なのは俺は優秀な数学者だったということ。
非常に数学の問題をを解く能力に優れていたということだ。
どのくらい優れていたのかというと。
大学生くらいの時、俺はミ○ニアム懸賞問題と呼ばれる超有名な七つの問題のうちの一つを解決するくらい優れていた。
ミレ○アム懸賞問題というのは。
......すごい問題のことである。
ごめんね、語彙力なくて。
すごい歴史があって、すごい人たちが取り組んできた、すごい問題なのである。
解いたら一億円もらえるらしいよ。
ちなみに、ミレニ○ム懸賞問題を解決したのは俺で二人目らしい。
検索したら、すでにペ○ルマンさんという天才がミレニ○ム懸賞問題一つ解いているようだった。
頭いい人もいたもんだね。
あ、俺もか。
てへぺろ。
自画自賛になるけど、解けた時はまじで俺って天才だと思った。
風呂場で鼻歌歌いながらシャワーを浴びていたのだが、その時にぴーんときてしまった。
んっ!
うんぬ......
ふむ!?
解けたっ!!
みたいな感じだった。
森の中を彷徨っていたら、視界がパッと開けるようなイメージ。
ずっと耐えて耐えて進み続けて、やっと手に入った景色。
この感動は、きっと数学の問題を考え抜いた経験のある人にしかわからないと思う。
それはそれは気持ちがいい。
非常に美しい問題だった。
こんなに綺麗な解法が存在するのかと興奮して鼻血が出た。
なんていう名前の問題だったかというと......ええ、忘れた。
まあ、大事なのは答えに至るまでの過程なのである。
名前なんてどうでもいいのである。
忘れた言い訳である。
論文を出して、それが正しいと認められたのが五年後のことだった。
かなり難解な証明だったので、理解されるのに多少時間がかかった。
そして今日。
知らない番号からメールが来る。
『Mr村上 あなたの論文のフィールズ賞を贈りたい』