南仙道駅22番ロッカーに関するメモ
2016年 5月28日
腕時計とビジネスバッグとメモ用紙。バッグの中には現金3万円が入った財布のみ。身分を証明するものはない。メモ用紙には『・次の電車で逃げる』のみが記されていた。
駅案内所で規定に従い保管する。
2016年 6月3日
スーツ上下一セット、ワイシャツ5着、メモ用紙が一枚。乱雑に押し込まれており、ほぼ隙間のない状態で放置されていた。ワイシャツの内一着は破れていた。メモ用紙には『今から追いかけます』と記されていた。
いたずら目的で利用されている可能性アリ。類似性の高い案件が発生次第、警察に被害届を提出する。
2016年 6月14日
メモ用紙一枚と砕けたスマートフォンが入っていた。『・たすけてくれけいたいおいていく』と記されていた。念の為警察に相談し、提出。当該ロッカーは相談の結果、封鎖することとする。
また、監視カメラを常に22番ロッカーにロックし、当番には入念にチェックするよう伝達する。
2016年 6月26日
何者かによって当該ロッカーの鍵がこじ開けられた。大量のメモ用紙が詰め込まれていた。メモ用紙には2種類存在している。
1:『にがさない』
2:『(判読不可)県南仙道市12-10 コクボマンション304号室』
警察に被害届は提出済み。監視カメラで確認したところ、深夜2時前後に女性のものと思しき人影が、無理やりバールでこじ開けている様子が撮影されていた。
なお終電は既に発車している。念のため戸締まりを確認したが、女が侵入できるようなルートはなかった。
2016年 6月27日
井上が仲介業者に話を聞いてくれた。
メモ用紙に書かれていた住所は、何年も前から人は住んでおらず、空き部屋であるとのこと。
詳しく聞くと、その部屋で女の首吊自殺があったらしい。瑕疵物件。
2016年 6月30日
22番ロッカーの前でひどく錯乱している男がおり、鉄道警察が連行していった。後で知ったが、「逃げても殺される」「助けてくれマサヨが逃してくれない」とうわ言のように繰り返していたため、一日保護するとのこと。
2016年 7月2日
鉄道事故発生。身元は6月30日に保護され、帰宅したはずの男性とのこと。
頭以外のパーツが見つからなかったらしい。
2016年 7月7日
22番ロッカーから異臭がすると客より通報があった。
警察の立ち会いでロッカーを開放すると、腕やら足やらが出てきた。
また、一緒に出てきたメモ用紙には『ずっといっしょ』と書かれていた。
2016年 7月16日
DNA検査の結果、7月2日に死亡した男性のものであるとのこと。
2016年 7月30日
あれから、ロッカーに何かが詰め込まれることは、なくなった。
書くのが少し楽しかったから名残惜しいが、これ以上関われば呪われそうなので、今後は酒の席での笑い話に留めておくことにする。
2016年8月17日のニュース
鉄道会社勤務の男性が、ホームから転落し、運行していた列車に撥ねられ死亡しました。
警察は事件事故両面で捜査するとともに、当時の状況について乗客に話を伺っております。
警察の聴取を受けた乗客
「なんか、黒い髪の女性なんですけど、『よくものぞきみしたな』って言ってその人を落としたんですよ。でもみんな見えてないっぽくて。ヘンですよねぇ」