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2話

 私の名前はリリライラ・ワーグナー十七歳。皆私をリイと呼ぶわ。肩まで伸びている黒髪に 淡い青色の瞳。何処にでもいる普通の女の子。そんな私も今、人生を大きく左右される局面に立たされていた。


 ああ、遂にこの日が来てしまった。


 この国は、十五歳で成人を迎えた者は王都から国民へ通達される手紙が届く。手続き上遅れていた私はようやく手紙が届いた。二年前も、去年も手紙が届く日を待っていたが来なかったので、もしからしたら自分には届かないのではと、勝手に安堵していた。


『パートナー適正検査の日程が確定されました。指定された日時に王都研究棟までお越しくださいませ』


 パートナー適正検査、略してパトナとは、この国に定められている掟であり、王族貴族国民全てが受けなければならない儀式だ。パートナーって私のいた世界で使われたていた言葉なのだけれど、不思議とこの世界に馴染んでいる。私と同じように昔転生者が使った言葉なのかもしれない。

 この国は十五歳になると、男女共に王都で儀式を受ける。早い話、自分の運命の相手がわかるそうだ。術式を行った導き手からその相手の氏名を告げられる。魔法らしいけれど、まるでネットワークの応用みたいね。選ばれた側にもパトナ適正検査の結果報告通知がいくが、私には来なかったし、油断していたわ…


 運命の相手とお互いに顔を合わせ、深く契りを交わせば、互いに同じ刻印が身体の一部に刻まれる。場所は様々。互いに魔力の供給、援助など行えるので、戦闘でも勇利に戦えるし、優秀な者同士恵まれているとされる。パトナ相手は、男女固定。例外はない。


 ずっと昔から続く掟。いつの間にか、パトナ適正相手=運命の結婚相手と定着され、結婚するのは当然と認知されている。勿論、パトナ検査を受けた者同士でなくとも、結婚は出来る。個人の意見を尊重した処置がないわけではない。性別、種族に隔たりはなく男女、男同士、女同士の恋人達や結婚をする人もいるし、同じ人種同士が一般的だが、稀に種族の壁を越えてパトナになるものもいる。


 しかし、その場合男女が結ばれたとしても出生率がほぼゼロになる。子供が、生れないのだ。けれど運命の相手同士の場合それは解消されて、個人差はあるものの子供も生まれる。多くの科学者がその謎は未だ解明されていないらしく、詳しくはわからない。


 そして私もその検査を受ければ、その相手と結婚をしなければならない。


 決められた旦那。私は、嫌に決まっている。顔も分からない相手と結婚するなんて。けれどこの世界の人達はそれが当たり前だと受け入れるものが大半だ。パトナ同士で結ばれなかった者達は異端だ、差別だという連中もいるのが現実。でも、違和感ありまくりなのよね。そんな人生。


「はあ……」


 目の前には王都へ出発する為の荷造り用の鞄。誰もいないのに、大きな溜息が落ちた。



 ファスト王国の王都までは馬車で片道五日はかかる。王都に到着した時刻は午後の昼下がり。お腹も空いている。空は快晴だった。流石王都。大きな街だけあって人も多いし、大通りは馬車が行き来している。街並みは中世ヨーロッパ風かしら。この世界には魔法が存在する。属性は火、水、風、土、雷、闇、光。個々の魔力の強さによってランク付されており、S~E迄存在する。

 ちなみに私の魔力ランクはD。平均的魔力はCとしてランク付けされる為、一般よりやや劣る。水の魔力と火の魔力がほんのちょっと使える程度だ。ランク上位の人は王国に仕える騎士や冒険者といった旅人、ギルドに参加して魔物退治専門を生業としている人達もいる。

 私は、魔物を倒すなんてとんでもない。ゲームの世界ではたくさんの魔物達を相手に戦ってきたけど、今の私は特別勇者様や聖女様といった力が備わっている訳ではないし、普通に生活が出来ていれば

十分満足だった。それに小さな魔力でも火をおこすには便利なのよね。マッチの代わりになるし。


 他にも魔力を蓄積させる魔鉱石があるのだが、魔鉱石を原料とし、様々な生活の面で応用している。

例えば街灯の明りもその一つだ。電気、というより魔法の力で明りを使っているイメージなのよね。

「すまなかったね、遅れてしまって」

「いいえ、大丈夫ですよ。無事に間に合いましたから」

 本当なら昨日到着予定だったのだが、予定が大幅に遅れパトナ適正検査当日になってしまった。

「色々と緊張はすると思うが、頑張って」

「はい、ありがとうございます」

 御者さんに別れを告げ、王立研究所の前で降ろしてもらい、走り去る馬車を見送った。


 ああ、決まってしまうのか…いよいよ私の運命の相手が。


逃げ出したい。でも私に拒否権はない。逆らうならこの世界で言う警察、治安維持部隊に逮捕されて牢屋送りになってしまう。パトナ適正検査を受けない罰は、重い。建物はいかにもお役所って感じの大きな施設の様だ。警備員の男性がちらりと私を見たので小さく会釈をして、私は建物の中に入って行った。指定された日は今日。時刻はいつでもお越しくださいとあったので、検査をする人、少ないのかしら。建物の中に入り受付のお姉さんに手紙に同封されていた検査を受ける書類を手渡し、しばらく待ってから、奥の部屋へと案内された。思っていたよりもあっさりと早く検査室に連れて行かれて緊張が走った。

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