004 奴隷商館にて
004 奴隷商館にて
奴隷商人は俺を頭の先からつま先まで見た。
品定めだろうか。人間を取り扱っているだけの事はある。
そんな出会い頭のチェックの後
「もうしばらく後に奴隷を買いたいのだが、奴隷を扱った事が無いので、金額やどんなものかを確認したい」
という言葉を聞いて、待合室に通してくれた。
どんなものか、というのは容姿や技能だ。
どれぐらいの値段でどれぐらいのものが買えるのか。
しばらくして奴隷商人も待合室に来た。
これ待合室じゃないのかな?
職業が冒険者であると答えたら、奴隷商人は再び俺の頭の先からつま先までジロジロと見た。
わかる。
今日はオフだし、それなりの格好はしてきたけど、それはこっちの冒険者とは全然違う。
冒険者は街中でも鎧や剣を装備している事が多い。
示威行為だ。
力以外に寄るところがないせいなのかもしれない。
少しかわいそうにも思える。
たまにビキニアーマーのおっさんとかいてビビるし。
本人達はかっこいいと思っている。
まぁ、女性向け雑誌に書いてある男性ウケなどは、女性が理解できる、女性が信じられる範囲での事しか書いてないし、逆もまたしかり。
男性と女性の間には深くて遠い川が流れている。
男女だけではない、冒険者達の中でも、俺は浮いていた。
現在の俺の格好は、地球で言うと、白シャツと黒スラックス。あと、マフラーをしている。
センスはともかく、見た目はシュッとしていて、街の人達の中でも浮いている。
俺は地球にいた頃からファッションセンスがない。オシャレはさっさと見限って、とにかく綺麗な服装を心がけていた。
マフラーは…… マフラーというかショールだが、その実態は風呂敷である。
タオルがわりにも使えるし、結構便利。
帰りに果物屋寄ろうと思ってたので。
白シャツというのはイメージだ。
このシャツは暗い黄色で、薄めた黄土色。
ただし、汚れていない。
そして、サイズが合っている。
ごちゃごちゃしていない。
これが大事だ。
『ブスは清潔感を大事にしろ』という言葉があった。
それでもデブをファッションで隠す方面の事が色んな雑誌で宣伝されていた。
元々センスがないなら清潔である事。
そして、サイズが合っているとなおのこと良い。
それはこの異世界でも通用した様だ。
ずっと服のサイズを選んでいる俺は不審がられたけど。
どこかの小さな商家の三男坊、ぐらいには見られているらしい(薬師のおばさん曰く)
寝る時とか仕事に行く時とかは全然違う格好だけども。
おかげで、奴隷商人の態度もやわらかい。
冒険者と知るまでは小さな商家の三男坊。
今はそこそこ稼いでいる冒険者という風に思われている様だ。言葉の端々から感じる。
貯金がある、奴隷を買うつもりだ、というのを信用させるのに服装と物腰は役にたった。
ボロボロの格好でも貯金はできるが、それはそれ、ボロボロの格好や冒険者の格好では奴隷商人の態度も違っていただろうし門前払の可能性もあった。
ヒゲは剃ってはいない。、こっちのカミソリが怖くて使ってない。
細菌感染とか怖いし。
しかし、ある程度短く切っている。
髪も短めに。
野良作業が多いので手の状態は隠しきれないが、顔はしっかり垢を拭き取っておいた。
なんというか…… 奴隷商館とか初めてなんで、びびって気合入れてきた。
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まずは雑談から。
腹の探り合いとも言う。
そこで俺を信用できると思ってくれたらしい奴隷商人は、目標額相当の奴隷を5人連れてくる様、控えていた使用人に指示した。