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010 よめない

010 よめない



冒険者ギルドでちょっとおかしな事態が起こっていた。


30人の冒険者のギルドカードに妙な文字が出ていたのだ。


『従魔・主人 吉永拓郎』


日本語で表示されたそれを、ギルド職員の誰も読む事ができなかった。


何かのエラーだという事でしばらく様子見となった。



俺はティムレベリングで2つレベルが上がった時、謎の文字がギルドカードに浮かび上がっているというのを知り、焦って全員テイム解除した。


およそ10日間程度の事だった。

みんな、何かの魔法的なエラーだったんだろうと忘れた。





危なかった……





そら、相手のギルドカードにも出るよな。

これは難しいかもしれん。


モンスターを倒して経験値を得られる人間で、ギルドカードの様なものを持っていない人間……


そもそもモンスターを倒す事を生業としているのは冒険者ギルドだけではないものの、こういうステータス表示カードは色んな所で使われているのだ。



ギルドカードを取り出せない戦闘中などにテイム、テイム解除すればバレないだろう。

が、それはとても面倒くさい。




「モンスターを倒す仕事で、ステータスカードを持ってない人間?」

「はい……」

困った時は薬師のおばあさん。


「うーむ…… 多分城勤めの連中は持ってないんじゃないかねぇ」

「そうなんですか?」

「ああ。貴族連中は自分たち独自の魔道具があるんだよ。騎士も多分そうだろうね」


話によると、貴族達はギルドカードの様な普及型の品ではなく、旧来の据え置き水晶型のステータス表示装置を使っているらしい。

性能は水晶の方が高い。

扱える魔力量や検査深度が全然違うらしい。

だが、水晶を使わないとはっきりわからないぐらい魔力が強い人間はだいたい貴族なので、一般民衆にはカードタイプで十分。


そして、立場とプライドの問題もあって、カードタイプのものを使う貴族はほとんどいないらしい。



多分、水晶でも従魔表示は出ると思うけど、水晶が無いとわからないなら、外に出ている間だけテイムすればなんとかなるか?





その後しばらく貯金して、俺達は引っ越した。



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