第2章【エピローグ】
<登場人物等>
〇ニグライン・レイテッド……太陽系近衛艦隊および太陽系近郊宙域統括軍総司令官
〇ファル・ラリマール・凰……太陽系近衛艦隊総隊長
〇ユーレック・カルセドニー大元帥……特殊能力部隊元隊長
[近衛艦隊将官]
〇クルス・ベリル中将……諜報治安部隊隊長
〇デン・ドリテック少将……陸上戦闘部隊隊長
〇リーシア・テラローザ少将……後方支援部隊隊長
〇ラン・マーシュローズ准将……第一宙空艇部隊『バリュウス』隊長
〇アウィン・バーント准将……第二宙空艇部隊『クサントゥス』隊長
〇螢・クラーレット准将……IT支援部隊隊長
〇オーランド・スマルト准将……メカニカル・サポート部隊隊長
〇クラック(オウムフィッシュ)……近衛艦隊司令官室長
〇ジュレイス・リトゥプス……太陽系近郊宙域統括軍元長官
〇ロカ・リトゥプス中尉……凰の副官。ジュレイス・リトゥプスの孫
〇セネシオ……太陽系近郊宙域統括軍長官
〇虹・グリーゼ……凰の元副官
〇アサギ……元第一宙空艇部隊のパイロット
〇ランディ・リューデス大佐……陸上戦闘部隊・元第一中隊隊長
〇ネリネ・エルーシャ・クラスト……元カフェ・セラフィーナのウェイトレス。Dr.クラストの末裔
〇ビローサ・ルビア……セラフィスの参謀。ネリネの幼馴染みでもある女性。
〇ツカイ……薬や洗脳によって思考を支配された者
〇モグリ……本人が知らぬ内にツカイにされた者
〇オーナー……ツカイを使役する者
〇アキレウス……宙空艇部隊の戦闘艇
〇キーロン……陸上戦闘部隊の重装甲機
〇キーロンJr.……3/4サイズの小型キーロン
〇ファルコンズ・アイ……凰専用の戦闘艇
〇マンデルリ……ネリネやビローサの出身星。
※DL:ディビジョン・リーダー
◇ ◇
冬の寒さも通り過ぎ、春の訪れに木々はみずみずしい葉を枝いっぱいに広げている。人々も身軽な服装で平和な日常を楽しんでいるようだ。
だが、軍部は太陽系に新たなる脅威が迫っている事を、セラフィスとの戦いの中で知っている。
そのため、先ず空席となった近衛艦隊・特殊能力部隊のディビジョン・リーダーに、念動力チームの大隊長であったシーモスが、新たに准将として8大将官に昇格。
元からの8大将官の中では、敵旗艦に突入し、セラフィスの首謀者であるネリネ・エルーシャ・クラストを守ったランと、火星のメイン・コンピュータでガニメデ砲の射線をはじき出し、被害を最小限に留めた螢が、それぞれ准将から少将へと昇進を果たした。
ランはケガの影響で今まで通りの操縦が出来ないからと、昇進どころか隊長からも辞退しようとしたのだが、第一宙空艇部隊隊員全員の署名が入った、『ラン・マーシュローズ隊長継続』の嘆願書がニグラインに提出され、辞退は却下されたのである。
他の昇進者の中で話題となったのは、総隊長の副官でありながら、小型重装甲機、キーロンJr.で敵の参謀と首謀者を捕らえ、ランの命までも救ったロカであった。彼女は中尉から大尉に昇進。並びに、名誉勲章も与えられたのだ。
ただし、現在、太陽系では軍服を華美にする事は禁止されているため、勲章も軍服には付けず、盾が贈られるだけになっている。
そして、セラフィスとの戦いで、ロカは自分に対して答えを出した。
◇
「う~ん……本気?」
ロカに謁見を求められ、マイスター・コンピュータ・ルームで書類を受け取ったニグラインは、司令官席でやわらかいウェーブのかかった白金の髪をいじりながら、少し困った表情をして聞き返す。
「はい。私にはその方が適任だと思っております」
「う~ん……」
意志の硬いロカに、ニグラインは頭を悩ませた。確かに、適任である。実力は実戦を持って示されていた。だが、ロカは文官としても優秀すぎるほど優秀で、将来的には軍を率いる事も可能なくらいの人材だ。
「私には、人望がありませんので」
「う、う~ん」
人望がない。というのが、祖父が統括軍長官の上に成績優秀であったために妬まれ、友人がいない──という事なのだと、ニグラインはわかっている。故に、理由にはならない。
「お願いいたします! 『キーロンJr.隊』に転属させてください!!」
ロカは座っているニグラインよりも遥かに低く頭を下げ、強く転属を願う。
『キーロンJr.隊』
セラフィスとの戦闘において、ロカの活躍により軍部に必要と見做され、正式に量産されるようになった『キーロンJr.』で構成する部隊である。
現在、搭乗基準に値する兵士を募っている最中だ。
キーロンJr.が所属する陸上戦闘部隊は、軍の中でも屈強な男性が多く、縦も横もコックピットに入るのは不可能なため、小柄でメカに強い者を集めている。しかし、女性のロカでさえ、身長的に上限に近い。
軍に戦闘兵として入隊してくる者は基本身体が大きく、なかなか募集人数に達しないでいる。文官であったロカが入る事で、やってみようと思う者も増えるかもしれないが……。
「──今、仕事が殆どないから……ってわけじゃないんだね?」
「はい! 私は前線で仲間を救いたいです!」
暇を持て余したロカが気の迷いで言っている……と思いたかったニグラインだが、どうやら転属願いを受理するしかなさそうだ。
「わかった。本日午後付で、陸上戦闘部隊への配属としよう」
「ありがとうございます!」
無駄口を叩かず、常に周囲への心配りも忘れず、『自分』を前に出さずに職務をこなして来たロカがここまで真剣に言うのだから、後は見守るしかないだろう。
ニグラインは転属願いの書類にサインをし、陸上戦闘部隊隊長のドリテックへと転送する。
「さて。ロカちゃんが転属しちゃったことだし、午後からの会議のお茶、準備しなきゃ!」
退出するロカを見送ったニグラインは、新しく8大将官となったシーモスは何が好きだろう……と考えながら、楽しそうにドリンクのワゴンに茶葉やコーヒー豆をセットし始めた。
◇
午後になり、近衛艦隊最高会議室には8大将官の他、統括軍長官のセネシオも迎え、遠隔のモニターで近衛艦隊・統括軍の各艦隊長も出席している。
ニグラインは全員にドリンクを配り終えると、会議の本題を口にした。
「今後の脅威に備え、近衛艦隊と統括軍、双方の艦隊をまとめた『連合艦隊』を発足する。それにより、連合艦隊総隊長を最高位の役職として置くこととした。──入って」
そう言うと、ニグラインは最高会議室のドアを解錠する。
足を踏み入れて来た青年は、長身を引き立てるバランスよく筋肉の付いた肢体を、彼のためにデザインされた制服で包み込んでいた。
その制服は、紺瑠璃を基調とした近衛艦隊の制服に、統括軍の黒をズボン・肩章・袖口・ベルトに配置し、襟章の右側には近衛艦隊章、左には統括軍章。そして胸元に〝長〟を表す両翼が、羽ばたくように金糸で美しく施されている。
若いながらも、威厳を持ってニグラインの隣に並んだ青年は、青みがかった黒髪に、青虎目石さながらの不可思議な色彩を伴う、鋭く光る瞳を持っていた──。
──完──
これで、一応【碧藍のプロミネンス】は完結となります。
太陽系の秘密が全て明かされたので、キリがいいかと。
ですが、エピローグを書いているつもりが、何故か第3章の1話のようになってしまいまして。
公式絵師である娘の路に相談して、今回のものに書き直した次第です。
この後、すぐに第3章が始まりそうですけれど、先ずは【ユーレック・カルセドニー 外伝】を書きたいと思います。
ただし、ご存じの通り遅筆ですので、もし読んで頂けるようであれば、SNS(X:@mau_kiriyu、Blue sky:@maukiriyu.bsky.social)をフォローしてくだされば、更新情報がわかります。
あとは、第2章までの同人誌を作りたいですね。
それでは、長い間お付き合いくださいまして、本当にありがとうございました。
感想・評価等いただけたら、嬉しいです。
〇完結記念MVがあります。
【碧藍のプロミネンス】より〜永遠の太陽〜/第2章完結記念MV
https://youtu.be/L3BEeu3wdOg
フォンスティーヴ様(@Steve_Re_birth/Youtube▶︎http://youtube.com/@Steve_Re_birth)より、【碧藍のプロミネンス】の世界が広がる、素晴らしい曲を頂戴いたしました。
フォンスティーヴ様、ありがとうございました。




