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第一神話 「神誕生!」

「櫻田悠人さん! 今日からあなたはこの世界の神になってもらいます!」


「冒頭から飛ばし過ぎだあああああ!!! まずは主人公の紹介シーンからだろうがっ!!!」





 ーーー無限に連なる多次元空間の中のある一つの次元の宇宙空間に存在する天の川銀河の端に位置する太陽系における三番目の惑星地球の日本列島と『人間』により概念つけられた島の東京という枠組みに属する渋谷で『人間』、固有名詞は「櫻田悠人」という生物が存在した。


『長過ぎだわ! 俺は櫻田悠人。21歳の理系大学生だった男で、後の神だ!』


ーーー.....すみません。確かに回りくどく説明してしまいましたね....ただ自分で神というのはちょっと...厨二病にもほどがありますよ? あと説明飛ばし過ぎはゴッドさんの方でして


『一々面倒くさいな サンさんよう まあいい任せるぞっ!』



ーーー渋谷のとある居酒屋で学生の友人達と櫻田悠人は12月24日という特別な日だというのに、虚しくも男同士で慰め合い会を開催していたのだ。


「なあ いい加減お前も彼女作ったらどうだ?」


「お前も ってなんだよ 『も』って! 俺たち全員彼女なんていないだろうが!調子乗るなよ」


「すぐに切れる癖直せよ! そんなんだから誰も寄ってこないんだよっ」


「違うだろ? 俺たちは理系学生だからできないんだよ。出会いという環境が根絶された世界ではできるもんもできない!!」


「ほう ならすぐ近くにあるあのファビュラスな大学生達とお友達になってくればいいじゃねえか!」


「そこまで俺ガッツいてないからな....」


「いやただチキンなだけだろ」


「うるせえ じゃお前が行ってこいよ」


「俺様は能動的ではなく受動的な生き方がしたいんだっ!」


「悠人、直人 お前ら恥ずかしいぞ」


「「最近女の子と話せたくらいで調子乗るなよ クリリン!」」


「息が合ってるじゃないか お前ら二人付き合えばいいんじゃねw?」


「「黙れ!」」


「それはそうと今日のニュース聞いたか? 奇跡の詰め合わせじゃねえか!」


「ハレー彗星到来と皆既日食とイエスの降誕が被ったんだろ?」


「ああ 凄い確率だよな... ハレー彗星は約76年周期で地球に接近する短周期彗星だろ?それだけでも人生で一度きりのイベントなのにな!」


「その所為で街中、カップルだらけだぜ.... 私たち奇跡の日に一緒にいられるなんて運命じゃん! みたいな乗りでよ」


「そんな暇あるならこのイベントの確率計算でもしてろよな」


「賛成!」


「まあ俺らには関係ないけどな どうせ皆既日食っていってもさ もうすぐ普通に日が暮れるぞ」


「関係ないとか言って昼から開いてる居酒屋探したのはどこのどいつかな?」


 その後、悠人達一行は話に夢中になり過ぎてすっかり奇跡のイベントについて忘れてしまい、飲み続けていたのだが、直人のリバースとともに飲み会はお開きとなった。


 直人の処理を済ませると悠人は一人、帰宅のためJR半蔵門線に乗車した。帰宅途中のサラリーマンがつり革に掴まりながら片手でスマホをいじっている様子がどこを見ても見られた。


 悠人もつり革に掴まりながら帰宅時間まで暇を潰すためネットサーフィンをしたり、SNSをチェックする。本当は音楽だけ聞いてボウっとしてみたい気もするのだが、地下鉄の闇の所為で電車の窓ガラスに反射する自分の像と対峙したくなかった。そんなに顔は悪くはないと思うのだが他人にナルシストだと思われたくない。


 電車が青山一丁目駅で停車し、人が電車内に入ってきた。そして、悠人のとなりに若い女性が並んで来たのをスマホを見ていた悠人は横目で確認した。いつもならラッキーと感じるが今回はアンラッキーと思ってしまった。先ほどの直人のリバース臭がもしかしたら自分から漂っている可能性があるからだ。漂っていようがいまいが関係のないことなのだが何故か気にしてしまう。少しずつ足の踝を回転させ離れようと試みるが反対側にオッサンがいたので作戦は頓挫してしまった。


(今日は奇跡の日じゃないのかよ!....あっ! イベント見過ごした!......最悪の日だぜ 周りはカップルだらけだというのによ! あんまりだぜ神様! 不平等過ぎるだろうが)


 数分経過したのにちっとも電車が発進しない。このままの状態は一番望まない展開なんだがな....運転間隔調整か?それとも信号が赤のままなのか? トラブルだったら面倒だ.... 駅員さんも大変だな....


 さらに数分が経過した。


(てかなんか静かじゃね?)


 悠人は周りを見渡した。電車は相変わらず止まっていたのだが、


 人も物もあらゆる物体が静止していたのだ。


(え!? 嘘やん 全部止まってるやん なにこれドッキリ!?)


 このような現象はたまにテレビでやっている海外ドッキリなので見た事があった。あと悠人の場合はスマホでも....


 少し恐ろしくなった悠人は隣のオッサンの様子を観察した。微動だにしていない。電車の中からホームの様子を確認するが、エスカレータに並ぶ者、階段を駆け下りる者も動いていない。さらに階段を駆け下りる者は僅かに地面から浮いた状態で静止している。


(やばい 時間止まってんじゃん!!)


 ふと悠人は隣に立っている女性に目がいった。相変わらず動いていない。今悠人の脳内で天使と悪魔が囁いている。


(俺はいかなる状況においても紳士である!)


 隣の女性に触れようとした瞬間、


「どこが紳士ですか?」


「......え? あっすみません....」


 女性が悠人の方に振り返ったのだ。しかも心の声に返答してきた。時間が止まったのだと思ったが女性は悠人同様に動いている。ただ周りの者は相変わらず静止したままだが、


「そんな痴漢した男みたいな反応しないで下さいよ。...まさかしました?」


 不敵な笑みを浮かべながら話しかけてくる。


「いや 別に ....というか周り見て下さいよ! みんな止まっちゃってます!ドッキリですかね?」


「ドッキリじゃないですよ。空中に浮いている人間なんて物理法則無視したドッキリあるわけないじゃないですか。ただ時が止まっているだけですよ。 おかしな事を言う人ですね!」


「時間が止まる方がありえないわ!! 一体どうなって....」


「櫻田悠人さん、私は天使のサンと申します。 突然ですが今の生活に満足してますか?」


「は?」


 突然おかしな事を言う人だなと思ったが、周りの状況を整理するに今自分はSF的環境にいることが判明したので、おそらく本気の話なのだろう。悠人は割と真面目に今までの自分の人生を振り返ってみた。


 頭の良い兄に近づきたくて、理系の大学を受験したが必死の努力も虚しく第五希望の大学に入学した。そして、高校の時に夢みたキャンパスライフも実現せず、つまらない数式を解いてろくに研究らしい研究もできていない理系学生だ。就活ももうすぐ始まると言うのに自分の軸となるやりたいことも特に存在しない。はっきり言って恵まれた生活ではあるが全く幸福ではない。


「いや全く満足してないよ。特に未練もないな....」


「そっか...それは良かったです。もしこの世界に未練があったらこれから先面倒なことになりそうだったので」


 自称天使のサンという女性は悠人のマイナスの発言を搔き消すような笑顔で、意味不な発言をした。ただなんか清々しく思えてくる。


「じゃあ 私の本当の姿をお見せしましょう!」


 そう言うとサンから後光が差し、電車内が明るい黄色の光に包まれた。光の眩しさに目を細めながらもサンを見てみると、


 白い布を羽織った彼女の頭には黄色の光を放つリングが、背中からは白い翼が生えていた。


(おいおい THE 天使 じゃないか!!!!)


「そうです この姿は悠人さんのイメージにある天使を具現化したものですから あなたが思う姿が私の本当の姿なのですよ。 my ゴッド!」


「なあ さっきから思ったてたんだけど ひょっとして俺の心の声聞こえるの?」


「はい!」


 満面の笑顔で返してくるが、何これ!? 恥ずかしすぎる!


「てかmyゴッドって!」


「まあ 折角の神との対話が半蔵門線の電車内というのもあれなので、詳しい話は転生してからにしましょうね! 未練もないとの事なので、悠人さん...いやmyゴッドがツンデレ主人公みたいに大事なモノに気づく前に早いとこ、この世界からオサラバしましょうね!!」


「え!? ちょっ 待ってーーー」


「次元移動開始!!!!」


 サンの光がより一層強くなり、あたり一面が光に包まれた。徐々に意識が薄れていくーーーー








「ーーて きてーーさい。 起きてくださーーい!」


 俺は目を覚ました。


「!? サン? 顔近いよ!!」


 どうやら意識を失ってしまった俺を起こすためにサンはずっと声を掛けていたようだ。それにしても顔が近すぎる!天使と言って過言でないほど美人な顔が目の前にあったら免疫のない俺は瞬殺されてしまうわ!


「私の見た目で死んでもらっては困りますよ」


 ああそうだったこいつ俺の心の内が読めるんだった。面倒だな


「なあ 一々読むの止めてくれない?プライバシー保護してよ」


「ええーーだってこの天界には私とゴッドさんしかいないからいいじゃないですか!」


「ゴッドさん?櫻田悠人さんだろ?そこは 俺はあんたに連れられたただの『人間』だぞ」


「それは前の世界の話です! 櫻田悠人さん! 今日からあなたはこの世界の神になってもらいます!」


「は?」


 何言ってんだこいつ


「あと神の名前が櫻田悠人というのはねえ....なので神つまりゴッドとして君臨してくださいっ!」


 いやいやそんな可愛く頼まれても俺にはちゃんとした名前があるのだが、まあニックネームだと思って受け入れてみるか! なんか気分いいし。


「ありがとうございます」


 .....相変わらず読んでくんなーーーー。


「なんか俺意識失ってたけどどのくらい意識失ってたんだ?」


「3年と5ヶ月12日です!」


「ええええええ!?マジかよ!? ほぼ植物状態やん! ....てかその間ずっと俺のこと起こそうとしてたのか...」


「当たり前ですよ 暇でしたし」


 なんと優しい人なんだ。意識を失った俺を3年もの間介抱し続けた上に俺に心配を掛けさせまいと嘘までついてくれている。天使のような人だ....あっ天使か。


「いやああ そんなに褒めても何もでませんよ。この天界には何も無いですけどね! ちなみに『人間』の時間感覚で3年と5ヶ月12日なので我々天界人には数分の感覚ですよ。同じ時間感覚の訳ないじゃないですか!なにせ天使と神なんですからあ!」


 なんか損した気持ちだ。あとなんか顔は美人なのだが、なんかこの天使ムカつく点があるな。


 てかなんかスースーする。


「うおおい!! 俺素っ裸じゃねえか!」


 え!マジでなんなん?電車内ではちゃんと服着てましたよ。


「ああ 前の世界の持ち物は持ち込めませんよー」


「少しは恥じらいとかないのかね?サンって女性でしょ?」


「女性の前に天使ですから そんな野蛮な欲望なんてありませんよ... ゴッドさんは神なりたてホヤホヤの元『人間』なのでそういう...欲望はまだ残っているかもしれませんが」


「マジかよ.... てか服ないの?見たところ雲の上って感じの場所だけど...ここ天国なの?」


「ここは天界です。神と天使しかいません。つまり今のところ私たちだけですね。あとここにはほとんど何もありません。....あっそういえば神の倉庫に幾つか在庫が残ってますが、そこから服を持ってきますね!」


 神の倉庫って


 神の感覚で数分後、つまり人間でいうと数年後、


 サンが服を抱えて帰ってきた。


「はい どうぞ服です。ゴッドさん! 神の倉庫にはそれしか服なかったのでよろしくです!」


 渡された服はおそらく雑貨店で売ってそうな白衣とジャージだった。とりあえず俺は渋々ジャージの上に白衣を着たのだが、


「俺神なんだろ?なんで何もないの?ここ」


「いやあ まあ端的に言うとお祈りをする人間が今地上にいないんですよねー それで天界も寂しい感じになったというか...」


「え! 何それ神の意味! てか神って何すんの?」


「ゴッドさんが分かるように言うと、世界を経営します」


「経営か...」


 元の世界では普通にやりたい仕事には就けず、普通にサラリーマンをしていただろう。三年の夏にインターンシップを受けてみたがあんまり芳しい成果は特に無かったしな。あのまま生活していたら絶対になることがなかった社長の仕事、経営。そんな経営を一つの会社の範疇をゆうに超えて世界を経営するだと!? できるか!


「大丈夫ですよ ゴッドさん この世界ではゴッドさんの行動こそが善であり、正義なのです!全てを決め全てを管理できるのですよ。 自由に何をしても構いません。何もしなくても構いません! おそらく暇でしょうが...天界人にとって暇が一番の敵なのです!」


 おおなんという素晴らしい世界。ひょっとして俺は夢でも見ているのか?それともVRの異世界か?ここは 何にせよ最高の場所ではないか。永遠にここにいたい。


「神は老衰しないので、永遠に生きられますよ」


「おお! それは嬉しいのかどうかはまだわからんけど...なんでもできるじゃん! でも人間いないのか...祈られない神など神なのか? 折角神になったのだからチヤホヤされたかったんだが」


「なら『人間』というかまず『生物』をこの世界に生み出すことから始めましょうか!!」


 この言葉を待ってましたと言わんばかりに食い気味にサンが嬉々として言ってきた。


「まあ暇だしなー。で、どうするんだ?」


「ではまず、地上の様子をみて下さい! 天界の地面にあたる雲に手をかざすと下が見えますよ!」


 俺は言われた通り足元の雲に手をかざしてみた。すると、手をかざした部分の雲が霧散し地上の様子が垣間見えた。


 というか高いな。俺高所恐怖症だったわ!


 俺がすぐに手を引っ込めると、軽蔑の眼差しをサンが送ってきた。お前天使だろうが! なんか文句でもあんのか!


「いやいや高所恐怖症の神とかっ フハハ! 受けるんですけどっ」


 腹を抱えて笑ってるサンに一発ゴッドパンチをかましてやりたい!


 もう一度雲に手をかざし地上の様子を見てみた。これ以上バカにされたくない。だって俺、神でしょ?


「ん?なんだこりゃ?」


 地上の様子はとても酷いものだった。酷いっていってもただの岩石があるだけだが...天界同様に何もなかった。どこを見ても岩石の大地が広がっているだけだ。


「何もないでしょう? だからこれからゴッドさんが『生物』を生み出すんですよ!先行投資ってやつです!」


「出でよ『生物』!!」


「......」


「何も起こらん! 神って思えばなんでもできるんじゃないのかよ!!」


「いやいや ゴッドさんって元理系ですよね? そんなんで『生物』がポンって出現するわけないじゃないですかっ フハハハ!」


 舐めんな!!!


「いい加減教えろや!!」


「わかりました。わかりました。わかりました。わか--」


「何回も言わんで分かるわ!!!」




 はあ 自由ってなんだろ?取り敢えず神になったんで、『生物』生み出して見ますわ!今後の暇つぶしのため、最高神と呼ばれるために! もしかして前いた世界にも神っていたのかな?


 偉大やん!!



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