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眼っていうと中二っぽいし、目っていうとかっこ悪い、瞳っていうとラブコメだ

説明が長くてすいません

痛く、はないな。いつものように異常がないことが分かったので目に込めていた魔力を弱めていく。


腹時計からそろそろ飯の時間だということが判明したため、魔力切れで気絶してしまうのは困る。


この眼について、俺はあれから実験を繰り返し効果を確認していた。


データ採取のため使いすぎるといちいちぶっ倒れるので結構日にちが経ってしまったが、大体の効果は判明した。


で、わかった事はこれがとんでもないシロモノだということだ。


初めに、この眼は魔力とは異なるものが見える。魔力も見えるのだが、それよりもすべての物体に何かが見えるのがそもそもおかしい。

この世界において生物、無生物の線引きは魔力の有無でなされる。


しかし、魔力の有無に関係なく、自分の体やあらゆる物、さらには空気中にも何かは存在する。


特に空気中のそれは見ていると大まかに分けて二つの種類があることが分かった。


なぜ、判別できるか。


それは、この眼の二つ目の特殊な点について関わりがある。


先ほどから散々「見える」といってきたが正しくはない。正確には「視覚化」されている、といった方が正しい。これに気付いたのは、最初に使ったときだ。あの時、瞼を閉じたにもかかわらず流れ込んできた情報。

あれは、視界の情報ではなかった。


あの時見えていたものが、視界の情報であれば、強力になった眼が瞼の奥を透視するまでに至ったと考えることもできただろう。


だが、「見えた」のは__すべてだった。


部屋のすべて、絶対見えないはずの背後が、絶対に見えないはずの自分の背後が何かで構成されているのが見えた。


明らかに目で見た情報ではない。加えて与えられた情報は自由自在に範囲、精度の調整や分別を行い、見ることができる。


そこから「視覚化」だと予想を付けた。また情報についての範囲を大きくしたり、精度を上げると消費する魔力は増加する。そのため、範囲を限定して精度のみあげるなどして能力の限界をはかった。

魔力が途中で切れたため限界は今でもわからないがそのさ中、空気中にある何かが二種類あることがわかったのだ。


振動しているものとしていないもの。振動しているものは、手で触れると移動する。一方で振動していないものは、全く俺の行動に影響されない。


また、俺の体やほかの物のそれはそれぞれ異なる構成をし、異なる振動を行っている。


この事実から、ある仮説に行き着く。


———見えている奴って、分子とかそういう類じゃね?———


あいにく、<過去>で物理を基礎までしかやっていなかったため何故振動しているかなど詳しいことはわからない。


しかし、物体を構成しているものとなるとそう考えるのが自然だ。


物事によって様々な「何か」の在り方があるのは、分子や原子の種類に対応しているからだと考えると辻褄があうような気がする。


そんなことを考えているとドアが開く。


ようやく飯か。やってきた飯のにおいでいったん思考を中断する。


飯を食った?あと、満足したのでしばらくしてから思考を再開する。


現在、魔力増加のため必死に特訓しているが、この眼、戦闘に使えるとは思えない。


万物を構成しているものが見えるといっても、それが何?で終わるだろう。


ここまで、調べ上げたのは純粋に興味からだ。痛みが怖かったけど抑えきれぬ好奇心が恐怖にまさった。


まぁ、やってみたら痛みがなく拍子抜けしたけど。


とにかく、大方調べ尽くしたと思うのでこの眼は魔力消費と暇つぶしにつかうかな。


さてと、満腹になったし寝る前に魔力を消費するか。


目をつむりながら眼を発動する。


範囲や精度を変更しながら部屋の中を眺める。そのとき


「あっ」


飯を食べさせてくれた母さん(一応、自分の子だと明言してくれるまで呼ぶのをさけていた)の胸のボタンがとれたようだ。

そりゃ、そんなぱっつんぱっつんならそうなるわな。


部屋のすべてが見えている俺は、ボタンがダブルベッドの下に入り込むのが見えた。母さんに伝えたいが今は赤ん坊の身、どうすることもできない。

しばらくすると、お気に入りなのか必死にあたりを探していた母さんも、ベッドの下を探し始める。


「暗いわね、≪光よ≫」


ぽうっと明るい光が母さんの指にともる。


———なっ———

母さんの指に魔力が集まると同時に母さんの近くの「何か」が淡い光を出す。


さらには、空気中の振動していなかった「何か」が魔力に集まり振動を開始していく。


その現象に先ほどの仮説よりもとんでもない考えが思い浮かんだ。


母さんが行ったのはこの世界における「魔法」だ。魔法というのはイメージから魔力を変容させ、火だとか水だとかを作り出すものとされている。

(これに当てはまらないものもあるが大抵、魔法はこれを指す)


イメージはそのものに対する「概念」で、例えば水は「冷たい」「形が変わる」「かけると火が消える」などがそれにあたる。

また、魔法で作った水は魔力を込め続けないと消えてしまい、純粋なH2Oの水ではなく、水を作り出した魔法使いの水に対する「概念」が魔力で形をなした水っぽいモノである。と一回目では思っていた。


が、目の前の光景は何だ?


魔力の放出と同時に淡い光を放つ「何か」が集まり、振動を始め、魔法が発動した。どう考えてもこれは


———魔法を発動させるのは魔力だけではなく、この「何か」も関わっているのではないのか?———


さらに、この「何か」は物体にも存在する。母さんの魔力に集まっていたことから、「何か」に魔力で干渉できることが分かった。


つまり、うまくコントロールしこの眼でみた水の「何か」の構成を真似ることができれば、イメージなんかじゃない本物の水ができるのではないか?


ぞくり、再び好奇心が沸き上がり興奮で震える。


はやく、試したい。


そんな俺の思いが伝わったのか、母さんはボタンを見つけると、すぐに部屋を出ていく。

気配が完全に遠ざかっていくのを感じながら、さっそく実験を始める。


魔力量は先ほどかなり使ってしまったので、今までの感覚から十分弱しかもたないだろう。


まず、よだれを出す。えっ、汚い?仕方ないだろほかに水がないんだから。


空気中にもあることはわかっているが、何分様々なモノが様々な比率で存在しているので、どれが水かわからない。


よだれは、大部分が水なので特定がしやすいのだ。眼の範囲を狭める代わりに精度を上げる。


これ、かな。


構成の異なる二種類の「何か」が三つ、つながったように常に一緒にうごいている。一つがO、二つがHだとするとこれが水だ。水を発見したので、次に「何か」への干渉を行う。


ここで、気付く。


———どうやろう———


魔力に反応するのはわかった。


しかし、ただ単に反応しないことは俺の体を包む魔力に集まってこないことから分かる。

体からでる魔力は生きている以上出るもので、魔法には関係ない。そういえば、魔法を行うには大量の魔力と、魔力をイメージで指向性を持たせることが必要だとされている。


なるほど、魔力に指向性を持たせれば反応するわけか。だが、どうやる。


こうしている間にもタイムリミットが迫っている。ええい、ままよ!!


難しく考えるな、イメージだ。


水の構成を思い浮かべながら、魔力を集める。水になれ、水になれ、H2Oの水になれ~っ。

俺の渾身の思いを詰め込んだ魔力を指から放出した。


おお、魔力に「何か」が反応しているのか淡い光が現れる。

成功だ。何とかなるもんだな。


成功したことに喜びながら指向性をもたせた魔力の放出を続ける。

振動していなかった大量の「何か」は水の構成へと集まりだしやがて振動をはじめ…………落ちた。


思いが強すぎたのか、たらい一杯程ある水が俺が寝るベッドすぐ横の床をびしょ濡れにする。


やば。


指を上に向けていたため結構な高さから落ちた大量の水はおおきな音を立ててしまった。


「な、なに?」


音に気付いたのか母さんの驚きの声が聞こえる。


まずい、母さんは十中八九俺を心配してここに来るだろう。そこでこの惨状を見られたらどうだろう。

確実にジ・エンドだ。


俺が普通の赤ん坊でないことがばれ、親バカが若干入ってる二人は一回目と同じように周りに言いふらしてしまうんだ。


赤ちゃんの俺はやめてといえないまま再び殺される運命へと歩み始めてしまう。


足音が聞こえてくる。


あああああ、頼む消えてくれ。神様仏さまサタン様叔父さん叔母さんなんでもしますから助けて。もう、力のせいで誰かに振り回されるのはたくさんだ。俺は家族が守れればそれでいいんだ。


それに、死んだとして再び死に戻りするとは限らない。消えてくれ、消えてくれ、消えてくれ。「何か」へと戻ってくれ。


魔力をさっきから出しているが水は消えない。水の生成ができたんだから分解もできると考えたのは浅はかなのか。


何だ、何が、足りない?考えろ。


魔力、「何か」、構成、水、空気、指向性、振動……そうか!


魔力に反応していたのはすべての「何か」だったが、実際に集まり水を構成したのは振動していない「何か」だった。


つまり、まず魔力によって構成を変えるようにするにはこの振動を止めなければならない。

消えろとさっきまで込めていたイメージを止まれ、というイメージへと変える。


足音はもうすぐ近くへと迫っている。


失敗したときのことを考えてしまい指の震えが止まらない。頼む。お願いだ。もう一度天に祈り魔力を放出した。


「何か」の振動の変化を逃すまいと全神経を研ぎ澄ませ注視する。変化はまだ現れない。


時が伸ばされたように時間の感覚が狂う。何秒たった?いや、何秒もたっていないのか。


まだか、もう駄目なのか。変化しない「何か」をみて次第に絶望が俺の体を蝕み始めたとき、

ガクんと「何か」の振動が遅くなる。


やった。喜んだのもつかの間。


ゆっくりと振動が収まっていく水は突然、氷へと変化する。

間違ったのか?絶望が再び浸食を開始していく。


__ガチャ。


いつの間にかに来ていた母さんがドアノブに手をかける。ダメか。開かれていくドアを放心しながら見ていた俺は最後に____





「あら?」


とれたボタンを付け直していた私は、いきなり聞こえてきた水音に驚いた。


驚いた拍子に針で指をさしてしまったが、水音が聞こえた方向のことが気になってそれどころではなかった。あの子がいる部屋。それで心配になり私たちの息子の部屋と向かったが……


「なにもないみたいね」


特に異変のない部屋。水なんてどこにもない。私たちの息子はすやすやと眠っているようだ。

白目なのは気にしない。どうやらこの子は寝ると時々白目になるようだ。


「空耳だったのね」


異常がないことを確認しほっとした私は治癒魔法で傷を治しながら、ボタン縫いの続きをするために部屋を出ていく。


途中、もしかしてこの子が魔法を使ったのかしら、という考えが頭をよぎるが馬鹿馬鹿しいと頭を振る。


歴代一といわれた大賢者は三歳から魔法を使ったという。あの子は見たところ生後六か月といったところか.自我が芽生えるか芽生えないかの時期だ。


ありえない。やっぱり空耳だったんだわ。


そう改めて考え


———歳かしら?———


自分が空耳を聴くようになってしまったことにショックを受けるのだった。



ようやく次から物語が進んでいきます。

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