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これが死に戻りってやつか

———やっぱり———


確認のために見つめていた右手から視線をずらし、周りを見渡す。


———十三年前とまんま同じか———


木造で六畳ほどの部屋。家具の類は自分が今いるベッドともうひとつの、ダブルベッドだろうか。それ以外一切ない。


部屋に唯一あるあけ放たれた窓からのあたたかな日差しと風が今現在が春であることを告げている。


———季節も同じ。てことは、この後———


自分が置かれた状況をしっかりと理解し始めていると、次第に大きくなる足音を耳がとらえる。足音は二つ。大股だからか、一歩一歩の間隔が長いものが一つ。


それとは対照的に間隔が短いものが一つ。やがて、足音は俺から見て足元にあるドアの前で止まる。


「ど、どうする?」


「どうするってあければいいじゃない」


「つったてよ、俺の顔見て泣き出したらっておもうと」


「じゃあ、顔出さなきゃいいじゃない」


「でも、顔みたいしよぉ~......あっちょっと待った!!」


大股の足音が遠ざかっていくのが聞こえる。しばらくすると、戻ってきた。


「ハァ、ハァ。じゃ、じゃあ開けるぞ」


「あなた、それでいく気なの?」


___ガチャリ


ドアノブが回される。ゆっくりと、ゆっくりと、のろのろ開けられていく__って


「遅いっ!!!」


「うわぁぁ」


バンと先ほどとは違いいきなり開けられる。その先には一組の男女。


美しい金髪に碧眼。ガイジンガイジンした、おっとり系の女性。背は、百五十あるかないか。顔も垂目で童顔のため少女に見えるが、視線をすぐ下に向けると明らかに少女と呼べないものがぶら下がっている。


———反則だろ。ボッカチオかよ。———


一体なんのルールに抵触したかは自分ではわからないが、目の前のデカメロンをみてそう毒づく。何度見ても違和感しかないな。


その隣には、百八十ほどの背丈の男がいる。がっちりとした胸板、浅黒く健康的な肌は背丈も相まって初めて見たものに威圧感を与える。しかし、それ以上にプレッシャーを放つのは男のかぶっている麻袋だ。


「ハァ、ハァ」


うわ、今回もかよ。どうしてこんなチェ○ンソー男みたいなカッコしてくんだろ。

予想はしていたもののおもわずギョッとし泣き出したくなるがそれを必死にたえ、れなかった。


「ふぇっ」


やばい、抑えろ。そう思ってみるが、体が言うことを聞かない。落ち着けこれは二回目じゃないか、予想外にちょっと動揺したくらいでなんでこんなに泣きたくなるんだよ。畜生、そんな自分に泣きたくなる、、、、、あっだめだこりゃ。決壊する。


「ふぇェェェェェェ」


うわ。とまんね。


「ちょっ、おい!ああぁぁぁぁ」


「もう!だから、言ったじゃない。それだったら素顔の方がマシよ。ちょっとあっち行ってきて。はぁーいよしよしいいこでちゅねー。」


俺が泣き出すと同時にうろたえる男をたしなめるとデカメ、、、、もとい女が近づいて俺を抱き上げる。

いい子ってどこが?そう思うが、彼女に抱かれると段々と心が落ち着きどうでもよくなってきた。


「ふふっ、泣き止んだわ。よしよし」


彼女の優しく声量を抑えた声を聴いてると眠くなってくる。泣き出した時と同じようにこの体は素直だ。瞼が重くなっていき、次第にかすむ視界に彼女をとらえながら確信する。


———これが、死に戻りってやつか———





「かわいいわぁ」


自分の腕に抱かれる赤子を見ながらつぶやく。

私の息がかかるたびに微笑みを浮かべる姿にとろけそうになる。


「なぁ、もう近づいていいか?」


「あら、ごめんなさい忘れてたわ。もういいわよ」


「忘れてたって、お前。一応夫なんだけどな」


「ふふっ。だから謝ってるじゃない。それに、夫だけじゃなくてパパになるんでしょ」


私の言葉に彼はニヤリと笑う。


「そうだったな。そうか、パパか。どれ、お前のとーちゃんに顔を拝ませてみろ」


のぞきこもうとしている彼のために顔がよく見えるよう体勢を変える。


「おお、かわいいな。顔色もよさそうでなによりだ」


「最初にこの子を見つけた時はひどい状態だったから、これでひとまず安心ね」


「しっかし、珍しい顔だよな」


彼の言葉に再び赤子を見やる。


「平たいっていうのかしらね。まだ小さいからよくわからないけど」


「それに、この髪見たことない色だぞ。黒って」


「そうね、でもそんなこと関係ないでしょ?」


「あぁ、誰が何と言おうとこいつは俺の子だ」


力強く言葉を発した彼の横顔に少しドキッとしながら、自分の子供となった赤子の漆黒の髪をそっとなでる。


そう、どんな事情があったとしてもこの子の行く道に幸多からんことを____




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