準備期間―4
「さて、食べ始める前にみんなに言っておくことがある。今日は新しい家族が増えた。ほら、挨拶しなさい」
「は、はい。初めまして、今日から家事使用人として働くことになった四宮亘亮です。よろしくお願いします」
立ち上がり誰からも見える位置に立って自己紹介した。拍手とともに「よろしく」という声も聞こえてきた。若干の恥ずかしさを感じながら自分の席に戻った。
「では、いただこうか」
男性の掛け声によりみんな食べ始めた。食事は非常に楽しいものだった。門下生たちが誰が一番食べられるかを競っていて、いつの間にかゲンさんが混ざっていたりとにぎやかだった。
競争は食べるものがなくなった事で終わった。結果は意外に細身の女性の門下生が一番だった。食べ終わった門下生たちと男性は訓練に戻った。
ゲンさんと俺、他数名は後片付けだ。おばちゃんたち料理を作った人は休憩している。俺たちは食器を集めて炊事場に持って行った。
炊事場には水を張った大きめの洗い桶があり、その中にお皿を割らないように慎重に入れていく。
全て入れるとある程度汚れを落としてから、石鹸をつけた布で隅々までこすって隣の綺麗な水桶に入れる。
隣では俺が入れた食器を水で濯いで石鹸を落として更に隣に渡していた。更に先では受け取った食器を乾いた布で拭いている。
一連の流れがすでに出来上がっていた。俺の対面には大釜を洗っているゲンさんがいる。黙々と作業しているとあっという間に洗い終わった。
拭き終わった食器を棚に戻して一息つく。初めからキツイが周りの人はみんな優しく、辛さがあまり感じられない。
「これからする事ってありますか?」
食堂でお茶を飲みながらゲンさんに聞いてみる。まだ、どんな事をしたらいいのかが分かっていないから仕方がない。
「う~ん…そうだなぁ…あぁ、アレがあったな。よし、ついてこい」
ゲンさんが立ち上がり食堂を出て行ったので後をついて行く。ゲンさんは炊事場を通り、薪割り場を過ぎて更に奥に進んでいった。
物置のような場所を漁りブラシやバケツ等を出してくるとまた奥に進んでいった。奥には大きめの建物が2棟並び建っていた。
ゲンさんは向かって右側の建物に入っていった。建物の中に入ると暖簾が2つかかっていた。青と赤だ。
ここは風呂か。ゲンさんが青の暖簾の先に行ったので、俺もついて行くとそこは脱衣所になっていた。
棚に籠が幾つか置いてあるぐらいの簡単なものだ。ゲンさんはそれらに一瞥もくれず一直線に風呂場に向かった。
そこは大きな浴槽が1つだけあり、流しが4つ並んで設置されている。入り口近くには桶と椅子が幾つか置いてある棚がある。
「ここを掃除してくれ。こっちが終わったら女湯の方も頼む」
「えっと、『一人で』ですか?」
「大丈夫だ、今日中に終わらせなくていいから。俺はこれからする事があるから見てあげられないけど、晩飯の用意する時には声かけるし、それまでがんばれ。じゃあな」
ゲンさんは持っていたブラシやバケツ等清掃に使う道具を俺に渡すとすぐに行ってしまった。いつまでも呆けていても仕方がない。やるか。




