準備期間―19
戦利品を手早くサイドポーチにしまって立ち上がる。えぇっと…どっちから来たんだったっけ。目の前には少し離れた場所に曲がり角がある。
後ろを向くと真っ直ぐに道が延びている。こっちか。それにしても、不思議なものだ。道は真っ直ぐに延びていて遮蔽物もないのに遠くは霧に隠れて見えない。
感覚的にだが、手元の地図が表示される範囲と同じように思う。地図の範囲に視界が制限されているのか、ダンジョンの効果で制限されているのか。
恐らくは後者だろう。前にこの『腕試しの洞窟』に来た時は広く遠くまで見渡せたけど、地図には一定の範囲までしか表示されなかった。
ダンジョン効果で視界が制限されているのなら、さっきゴブリン達が急に現れたように見えた事にも説明がつく。
単に描写距離に入っていなかっただけ、という事だ。となると、視界は1mぐらいに制限されている事になるんだが…
いま立っている場所から曲がり角までどんなに短く見積もっても5mはある。あれ?説明ついてなくない?説明つく(キリッ)とか言っちゃったのに…
え、恥ず。恥ずかしいんだけど、コレ。そうだ、忘れよう。俺はゴブリン達については何も気づいていない。何も気づいていないんだ。
よし、記憶の彼方に消え去った。ゴブリン?何それ?俺はまだこの洞窟に入って一度もモンスターに会ってませんけど?
現実逃避おしまい!先に進む!道が続いているであろう方向に進んでいく。視界が制限されているなら突然の落とし穴には気を付けないと。
いや、落とし穴は視界が制限されていようとされてなかろうと気をつけろよ。ダメだな。まだ頭の整理が出来ていない。
深呼吸をして心を落ち着ける。ついでに地図を見た。道が若干書き足されていた。先頭の方は靄がかかっている様にはっきりしないが、どうやら道が分かれている様だ。
左右と前に。つまりは十字路。さて、どこから行こうか。俺はゲームでこういう分かれ道になっているダンジョンだと全部回ってから次の階層に行く派なんだよな。
今回は戦闘経験を積むのが目的だし、時間もまだある。全部回っても問題ない、というかむしろ回った方が良い。
問題は元に戻ってどこから進むか、だが。どこからでもいいか。こうやって悩んでいるだけ無駄だ。考えるくらいなら動いた方が良い。
そんな訳で、右の道から行こう。理由は特にない。強いて挙げるとするならば右利きだから(?)。
右の道はすぐに左に曲がっていた。曲がり角に近づくと何か音が聞こえてきた。それはどうやら鳴き声のようだ。
「グギャ」や「ゲギャ」などと聞こえてくる。ゴブリンの鳴き声だ。壁に背をつけて気づかれないように細心の注意を払いながら曲がり角の先を伺う。
曲がり角の先は真っ直ぐの道があり、その先にどうやら広い空間があるらしい。らしいというのは靄になっていてよく見えないからだ。
その部屋の入り口付近に3体のゴブリンが屯している。あれで全部か?3体なら工夫すれば戦えない事もないだろうけど…




