準備期間―17
すぐにさっきの部屋に入った。修道服を着た女性がひどく驚いた様子で俺の顔を見てくる。当然だ、出て行ったかと思えばすぐに戻ってきたのだから。
「すみません、治療協力に来ました」
「えっ…あぁ、はい、治療協力ですね。では、こちらに来てください」
女性に奥の方にある椅子に案内された。椅子の他には近くに小さな棚の様なモノがあり、その上に水差しとコップが置かれているだけだった。
「初めてという事なので、軽く説明させていただきます。そちらの引き出しにはクッキーなどがございますので、ご自由にお召し上がりください。それから、水差しに入っている液体ですが、教会内にある井戸の水を入れております。軽微ながらも魔力回復が期待できますので、定期的にお飲みください」
説明を終えると女性は入り口近くの定位置に戻った。椅子に座るとすぐに人がやってきた。若い男性で腕に小さな切り傷が幾つもある。
対峙して初めて気づいた。魔法の使い方が分からない。男性は傷を前にして固まっている俺を怪訝な顔で見てくる。
どうしよう。と、取り敢えず、魔法名を言ってみるか。傷に右手を翳して小さな声で【小回復】と唱えた。
すると、傷が見る見るうちに塞がっていった。それも手を翳していた場所だけでなく、全体の傷が余すところなく治った。
こんなにもすぐに治るものなのか。医者いらずだな、これは。傷が治ると男性はすぐに立ち上がり行ってしまった。去り際にお礼を言ってもらえたのは嬉しかった。
魔力の方はそれほど減っていなかった。これならまだまだやれる。水で喉を潤しながら次の人を待った。
休み時間を全部治療協力に費やした。そのおかげでレベルが1上がっていた。レベルの上がり幅以上にステータスが上がっていたのはもう気にしない。
道場に戻りいつもの作業をこなし、夜には筋トレをしてから寝る。今日からはこのルーティンに昼に治療協力をする事が加わる。
◇◇◇
ルーティンを続けているとあっという間に1週間がたった。そして、今日までにもう1レベル上がって、最終的にはレベルが3になった。
魔法も新たに『解毒』を覚えた。剣士系のスキルは未だに覚えられていない。
こればかりは実戦経験が少ないから仕方がないかもしれない。だが、その問題も今日やっと解決できる。
今日は週に一度の休みである黄の列だ。先週に引き続き今日もまた『腕試しの洞窟』に挑戦しようと思っている。
この一週間は今日を楽しみに過ごしていたと言っても過言ではないほどずっと『腕試しの洞窟』の事を考えていた。
今回もまた藍華さんに同行をお願いしたところ二つ返事で引き受けてくれた。万が一の時は助けてもらえるという安心感は非常に大切なものだ。特に今回は。
今回は2回目の挑戦ではあるが、『腕試しの洞窟』を攻略するつもりでいる。いつまでも足踏みしている訳にもいかない事と前回と違って状態異常の回復手段が手に入った事が理由だ。




