準備期間―10
「どうです?買いませんか?本当は大銀1枚なんですけど、いまなら中銀5枚でいいですよ」
「えぇ!?本当ですか!じゃ、ちょっと待ってください」
『武具チェンジャー10』があった場所に行き、残りの2つを持ってレジに戻った。職業は10種以上あるからだ。
「これもください」
「さらに2つも!?てか、これって……やっぱり、在庫全部だ……ありがとうございます!もう3つで大銀1枚にオマケしちゃいます」
本来なら3つで大銀3枚なのが1枚。大銀2枚の得だ。断る理由がないので大銀を1枚払った。紙袋を受け取り店を出た。
その後、雑貨屋で色々と買い物をしてから道場に帰った。
◇◇◇
夜。風呂に入りみんなが眠りについて静かになった頃、僕は自室を出て庭に立っていた。昼間は門下生たちがたまに訓練をしている。
だから一人で何かをする分には十分すぎるほどの広さだ。夜遅くにこんな場所に立っているのには理由がある。
資金を手に入れ武具を買えるようになった。すぐにでも装備を整えて外に飛び出していきたいが、それをしてしまうと最悪死んでしまうかもしれない。
僕は知識がある訳でも運動をしていた訳でもない。ならば知識をつけ体力をつける事が先決だ。昼は知識を夜は体力を。
今日実際に武器を手にして思った事は『筋力が圧倒的に足りない』と言う事だ。大剣は持ち上げられなかったし、片手剣でさえ振り回すとどこかに飛んで行ってしまいそうだった。
筋力を鍛える必要があるが、筋トレに詳しい訳ではない。体育でしたことがある腕立て伏せ・腹筋・背筋を取り敢えず20回する事にした。
月明かりに照らされながら庭の中央で筋トレをする僕。傍から見るとおかしく映るに違いない。でも、やっている僕としては真剣そのものだ。
この世界で生きていくのには戦いを避けられないはずだ。僕はまだ死にたくない。少しでも生き残る可能性を上げるためにしている事なので手を抜くことはない。
ただ、それだけが理由ではない。僕は嬉しかったんだ。僕に人生を掛けてやり遂げたいと思えるモノが出来た事が。
僕は日本にいた頃、特に目標もなく、死にたくないからという消極的な理由で生きているに過ぎなかった。
でも、この世界に来た事でそんな気持ちは消えた。勇者となり人類の存続を脅かす存在である魔王を倒す。なんと素晴らしい事か。
僕は人類の死を嘆いて魔王を倒す訳ではない。魔王を倒してちやほやされたい訳でもない。
僕はただ魔王を倒し人類を助けた、という素晴らしい事を成し遂げた感動を味わいたいだけだ。つまりは自分だけの為に魔王を倒すのだ。最悪、魔王を倒したと人に知られなくてもいい。
そう言う訳で人生の目標を達成するための努力は惜しまない。幸いなことに僕は一度魔王に会っている。
魔王の力のほんの一部も垣間見た。あの力に追いつく、いや、追い抜く。追い抜いて魔王を倒すんだ。
目標を強く意識し、握力を鍛えるべくグーパー運動をしながら庭を駆け回った。




