ミッションインポッシブル
「いてらっ!」
「「いてくっ!」」
如何にも冒険者らしい姿でおれ達は影丞に見送られた。
おれと真一は、一日に必要になる分が入っている背嚢を背負い、素材屋は全員そろいの作業着の上に、ショルダーガードのないプレートアーマに鋼板入りのロングブーツ。
観ようによっては如何にも駆け出しだが、戦力としてはかなりヤバい。
おれと真一はアバターの写し身で、凡そ人とは考えられない身体能力だし、他の三人も召還勇者と呼ばれる者で、おれ達ほど壊れたスペックではないが、現地の冒険者より腕が立つ。
この世界、戦争がかなりあるらしく、冒険者ギルド国ごとに独立した組織になっていて、国と国を跨いで情報を共有する組織は商人ギルドくらいのもので他は下手すると都市で完結している所も少なくないらしい。
つまり、影丞がいない他国でなら何をやっても大丈夫だ。
―そういう事だろ?
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後ろ姿を見送るがすげー不安。
「…やりすぎて指名手配されなきゃいいけど。」
「ストッパーが居ないんですから、心配するだけ無駄ですよ」
呟きに答えた雅美ちゃんのやけに投げやりで不安が募る一方、素材屋の海外派遣部隊は街道を進んでいく。
見送り完了。
「…でも、よく他の人と行動する気になったよね」
「誰がですか?」
「健と真一」
「別に普段から他の人と行動してますよ?」
わかるけどそうじゃないんだ。
「アイツら二人だけなら、山脈越えも時間かかんないから、面倒くさがるんじゃないかと思ったんだよ」
「そこはほら、人として行動してますから問題ないと思いますよ?」
「そこ!!オレに合わせなけりゃアイツら超人だよ?」
最後にゃめんどくさくなって全部ぶっ壊してきそう。
「いくらお二人でも、それはないでしょうに…」
いや、今の二人ならあり得るんだよ。
「…今更か」
「…今更ですよ。帰ってドクダミの入ってない豚汁でも作って下さい」
「それはあり得ないよ」
―全ての具材が抜けたとしてもドクダミだけは抜かないよ?
「あのですね。そろそろドクダミを食べないでいいくらいに生活は安定してきてると思うんですが…」
「貧乏だからドクダミを食べるんじゃないから抜かないよ」
十薬ドクダミ、ドクダミは十の薬になるんだから毎日食べて損はないんだよ。