アジトアジトあじ
携帯故障からのアクシデントで新規登録ですー。しばらく説明回が続きますが、こちらで続編再開しますので、新規様も以前からの読者様もよろしくお願いします。
本作は、作者の過去作品【十薬☆どくだみ】の続編です。
詳しい話は“薫る柚茶”で検索し十薬☆どくだみ前作を参照してください。
▼アジトの中で▼
街から離れた廃村を再建したアジトで物語は始まる。
「今日は暇ですね」
「きゅい」
ルカと名付けられた幼女を抱きしめた雅美ちゃんが縁側で寝そべっていたのをはっけんしたオレは風呂場からコッソリ二人の様子を窺っていた。
短パンと魚河岸シャツとアジトではみなれた、異世界ではあり得ない服を着ている。
そもそもこの世界には、ボタンがない。シャツは縫い付けられた紐で縛る物で、ズボンは紐で縛りベルトもなんかもない。
雅美ちゃんとルカちゃん以外にもアジトには女の子がいるが、雅美ちゃんは、オレの中ではアジト三大美少女の人柱である。
ちなみに、我が身も女でありなからアジト内部では男としてみんなに理解してもらっている。
真っ裸で二人の様子を窺っていたのだが飽きて来たので数秒だけ湯に浸かり上がる。
「長湯しちゃった」
「十分のどこが長湯なんです。頭流してからは、ずっとコッチ見てただけですよね?」
風呂場の見張りをしてくれたらしき雅美ちゃんに声をかけると覗きがバレていたらしい。
「…なんでわかるんだろ」
「風呂に浸からない人が、あれだけ静かになれば予想くらいつきますよ?」
なるほど。誰もわざわざオレの裸を覗きに来ないだろうし、見張り役を覗いてみる事にしたんだけど失敗したか。
「…その考えはおかしいです」
◇
「それで、こっちにきてからは嫌がらせはおきてないんだな?」
「流石に部外者は入れないからね。いつも通りだよ」
「そうか、なら良かった」
夕飯時、オレの正面の席に陣取った草薙健が安堵したようだ。
山盛りのご飯の上にアジの素揚げとネギを載せただけの“男飯”を勢いよくかっこんでいく。
「しかし、アレは何が狙いだったんだろうな?」
「さあ、オレに聞かれてもわかんないよ」
アレと言うのは、健そっくりに変装した子供の事だ。
不意にわき腹をつついたり、風呂上がりに脱いだ服を着て逃げたり、寝床に侵入したり色々あり此方に非難する事にしたのだ。
「それにさ、おれの通ってる孤児院の子供の一人がさ、町の外で保護された訳よ」
「ほうほう、それで?」
「孤児院のマーサに起こられてた」
マーサと言うのは、孤児院を切り盛りしてる僧侶の一人で金髪の若くて綺麗なお姉さんだ。
過去に草原で出会ってから、健はコソコソと孤児院に通うようになり、今ではインベントリの中に所有していた備蓄食糧をまるごと寄付するほどに孤児院に肩入れしている。
マーサ狙いならまぁ許せるが、他の人狙いだと困る。
なんせ、マーサ以外の職員は40以上だし、孤児院の保護されている子供は10才までだ。
ちなみに、10才を越えると全員宗教系の寄宿学校に通うようになる。国営で徴兵もかねているらしく全員王都近郊の学園に行くので、オレ達くらいの少年や少女がいないとか…。
「お姉ちゃんがいなくなっちゃったから街を出たかったらしいぜ?」
「あむ?青春だの…」
一度しか行ったことないが、そんな活発そうな子供いたかな?と思いながらモグモグする。
「わからんならいいが、次に町いく時は孤児院の方もよってやってくれ」
「ふむ、なんか知らんが了解」チョムチョムと米を口に運びながら健に答える。
健とちがい小さな茶碗と味噌汁と小さなアジの開きがおいてあるだけだ。
燃費のいいこの体で、おかわりをすると食べ過ぎて動けなくなるので少量をゆっくり味わいながら食べるようになった。
健みたいにかっこんでしまうと、あっと言うまにご飯が終わってしまうのだ。
へたな坊さんよりも慎ましやな食事とか冷やかされる事もしばしば。
とにかく、嫌がらせはもうないだろうと健が最後につけ加えた。
こちらの話が一区切りした所でドカドカと荒々しい音を立てある集団が食堂に乗り込んできた。
「飯十人前お願いしやーす」
「あと、お櫃も二つ」
好き勝手な事を厨房に言いながら空いてるテーブルに座った。
その中のひとりが、見た目に似合わない口調で健に声をかけた。
「健さんちゅあーす」
「おー、ユウは今から飯か?」
「キリの良いとこまで来たんで飯食わないでやってたんすよ」
優等生みたいな顔してるくせに荒々しく変貌した大工達を取り纏めているユウくんだ。
名字?忘れたさ。
オレの幼なじみ2人とルカちゃん以外、雅美ちゃんも含めみんな新興国に勇者召喚された勇者なんだよね。
で、中でもユウくんは筆頭勇者してたくらいだからかなり強い。
でも、オレの悪戯により何かを悟ってしまったとかで、新興国の一団がヤバい薬に手を出していたらしく、この国の兵士に捕らわれた訳さ。
それで、クラスメート達をみんなウチ(素材屋)で引き取って廃村を改修しアジトを作ってる間に職人に目覚めてしまった勇者だ。
他の人は素材屋の一員として冒険者してんだけどね。
どうしてこうなった?
「健さん、影丞姉さんと飯食わせてもらっていいっすか?」
「食い終わったからいいぞ」
ユウくんの言葉に健が席を動いたが、六人から最大8人座れる長テーブルでなんのいみがあるのか。
「食器頼むわ」
「あざーす」
他にも椅子あいてるのにキミもなんでわざわざ正面にくるかね?
「えー、別にいりゃいいじゃん」
「おれは今から昼寝すんだよ」
「たらふく食べた後寝るとブクブクになるぞ」
「おれらに限ってそりゃないわ」
オレと同じアバ体の健は成長しないし来たときから15才には見えなかったくらいに育ちきっている。
そんな訳で、健を保護者に仕立てたら、まわりからはしっかり健の妹として扱われるようになった時期もある。
だが、オレが町では普段黒いローブに仮面をつけて全身を隠していたお陰で影法師も定着した。
常駐してる騎士団の人からは法師様と呼ばれたりするがたいした回復技がないのが難点である。
どくだみ出し忘れたのはナイショよ?