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剣戟の幻想物語 4 紅血の鬼  作者: やきたらこ
二章~交わる剣の共同戦線~
6/17

1.

「………そぉだな…………分かったって……」


 熱心に語る若者の話を遮り、ゼノは立ち上がる。

「あ、まだこれからなのに……」

 残念そうにションボリして俯く若者の頭に、ゼノは声を投げかける。


「大丈夫だ。これだけ分かれば十分だ」

 踵を返し、彼の家から暗い闇夜へと足を踏み入れた。

――やがてゼノの姿は完全に闇夜へと消えていった。





(これから北方の山々に向かえばいいのか……)

 無事、共和国入りしたゼノは吸血鬼ヲタクを見つけ、話を聞いた。長々と話していたので、少々手荒な調子になってしまったが、重要な情報を引き出すことに成功した。

 次の進路が決まり、ゼノは月や星の位置で北を見つけ、歩き出す。


「…………だから……もう…………行けるだろ!!…………」

「………………情報……………ないと」


 右手の方で話し声が聞こえた。ただならない事態の話のようだ。

 何か有益な情報なら得になるため、建物の裏に回りながら、聞き耳を立てる。

「今すぐ…へ行くんだよ!! 早く………を…けに…かないと!!」

「落ち着…、もう…し情………めないと」

 聞き覚えがあるような無いような声だったが、あまり関係無さそうなのですぐに進路へと歩きだそうとしたその時だった。とある単語が耳に入った。


「早く“吸血鬼”から………を取り…さないと!! …遅れに――」

 ゼノの体が勝手に動いた。自分でも意図していなかったが、ゼノの足が会話の聞こえる方へ向いていた。




「なんだぁ、聞いたことある声だと思ったらお前ぇらだったのか……」

 ゼノは二人の男の姿を認め、素直な感想を言葉に表した。


「お、お前は!?」

 漆黒の少年の方は鞘から剣を抜き放ち、ただならぬ警戒の色を見せる。隣の金色短髪に全身アーマーの青年も険しい顔つきで、腰の長刀の柄に手を掛けている。

「おいおい、なんだよ久しぶりに会ったてぇのに挨拶も無しかよ」

 ゼノは肩をすくめ、薄く笑う。全く構えないゼノの様子を不審に思ったのか、黒髪の少年は剣先を降ろしかける。


 ゼノは大仰な動作を加え、続ける。

「それにしても奇妙なことが起こるモンだなぁ。二度と会わないと思ってたぜ?」

 ちらりと黒髪の少年を見ると、その少年が口を開いた。

「同感だな、俺もそう思ってたところだ」


 痛い沈黙が――ゼノは痛いと思っていないが――場を包む。

 じり、と少年の足元で靴が擦れる音が聞こえる。そんな些細な音まで聞こえてくるほど静寂が支配していた。



 唐突に隣の金色短髪に全身アーマーの青年が長刀を鞘に収め、棒立ち状態になった。

「リアン、ここで争っている場合じゃない。恐らくお前もその筈だ」

 青年に見抜かれたゼノはやれやれと肩をすくめ、認めた。

 黒髪の少年も渋々といった様子で剣を背中の鞘に戻す。

「ここはお互いの利害の為、協力するのはどうだ?」

 青年がゼノへ向けて提案を口にした。

「ほぅ……」

「お前は、俺たちの会話を聞きつけここまで来た。俺たちの会話で重要な語句は“吸血鬼”しかない。だったら如何なる理由であれ、お互いの敵は吸血鬼だろ?」

「そこまで見抜かれてたか…………」

 的確な観察には、ゼノ自身、舌を巻かざるを得なかった。

 黒髪の少年もハッと息を飲んでいる。



「そぉだな。俺の理由は言えねぇが、協力することに異論は無ぇぜ。そちらの血気盛んな少年君の返答次第だがな……」

 ククッと笑い、またも肩をすくめた。


 対する黒髪の少年は目を伏せ、

「吸血鬼を倒すことは、正直、俺らだけじゃ力不足だと感じていた。戦力が増えるなら致し方ないだろ」







「オーケー。よし、先ずは情報を集めよう――」

 アイゼンという青年が意見を口にすると、すぐにリアンという少年が、

「だ・か・ら、そんな暇無いんだって!! すぐに助けに行かないとシエルが……」

 そこでリアンは俯いてしまう。アイゼンも口を閉ざしてしまった。

(進まねぇじゃねぇか)

 ゼノは溜め息を一つ、

「俺の情報で良いか」

「えっ? あ、あぁ」

 キョトンとしたリアン。なんか癪に障るので問う。

「なんだよ?」

 リアンは薄く笑い、すぐに答えた。

「こんなに協力的だとは思わなくて、少し意外で……」

「なりふり構ってられねぇからな」


 クエスチョンマークで首をかしげるリアンを置いといて、情報を伝えた。

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