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剣戟の幻想物語 4 紅血の鬼  作者: やきたらこ
一章~少年たちの追跡開始~
3/17

2.

 少しばかりの喧騒の中、一人で酒を呑んでいた中年の男に話しかけていた。



「いや、知らねぇな」

 返ってきた答えの内容に俺は拳を振りかざしかけた。すんでのところで、堪えることに成功する。

「何でもいい、噂話でもなんでもいいから教えてくれ……」

 男は数秒の沈黙の後、苦笑交じりに言った。


「ホントに確証は無いぜ?」

「それでもいい!! とにかく教えてくれ!!」

 手元のコップに視線を落とした男が続けた。


「この辺りには、古い噂話があってな。 なんでも、“吸血鬼”が綺麗な娘っ子をさらっちまうって話だ。こっから東の方だった気がするな。ま、ホントにさらわれるなんてこと起こらないから、誰も信じてないけどな……」

 俺は、膝の上に置いた拳を堅く握りしめた。

「ありがとう、ちょっと気になったから聞いたんだ」

 震える声でお礼を言い、席を立った。




「おっす、情報は集まったかい?」

 アイゼンは腕組みをしながら壁に寄りかかっていた。

 俺からの申し出で、俺が情報を収集することにしていたのだ。故に、彼には待ってもらっていた。

「敵がなんなのかってのが分かった」

 アイゼンは微笑を浮かべるだけだ。

 俺はそんなアイゼンへ向けて続ける。

「敵は“吸血鬼”。東に居るという噂だ」

 アイゼンは、そうか、と一言告げ、体を壁から離す。

「先ずは、東だな。お前の家に寄るのか?」

「いや、母さんたちには心配させたくない。宿を取る。砂漠も越えないとな」


 今いる西の都と、俺の故郷の間には、砂漠が広がっている。勿論走破するつもりだ。

「それじゃ、走って行きますか?」

 アイゼンがニヤリと微笑む。俺も微笑で返す。

「砂漠を舐めるなよ?」


 俺とアイゼンは東方へ向かって歩き出した。








「やっぱ、もう少し情報が欲しいところだな……」

 きめ細かい砂の上、日中とは一転して寒々しい風の中、軽く走りながら隣を走る金色短髪の相棒に向けて言葉を発する。

「お前の故郷でもう少し情報を集めるか……」

 俺はコクリと頷く。


 その時、唐突に後方で、砂をかき分ける妙な音が複数……

「言ってなかった。夜は魔獣が沢山出るから気をつけろよ……」

 隣を走る青年は引きつった笑みを浮かべ、続けた。

「さ・き・に・い・え・よ」


 迫る砂魚の群れから全力で逃げるべく、剣を抜き――生憎俺は、魔法術を行使する時、愛剣を用いなければ使用できない――後方の地面に炎弾を飛ばした。砂が大きく巻き上げられる。奇怪な鳴き声が砂をすり抜けて届く、砂魚が混乱したその隙に俺とアイゼンは全速力で駆け出した。






 ギリギリ視界の中央に俺の故郷が見える。あと少しの位置で俺とアイゼンは疲労のあまり、一休みしていた。

「分かったか? 夜渡るのはキツいんだよ……」

 膝に手をつくアイゼンに向けて言った。聞いてねぇよ、と小声で聞こえたが聞こえてないフリをする。

「ほら、見えてきた。あと少しだ」

 アイゼンも疲労困憊ひろうこんばいの顔を上げ、街の薄ぼんやりとした光を見てコクコクと頷いた。

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