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剣戟の幻想物語 4 紅血の鬼  作者: やきたらこ
終章~鬼と少年の血戦録記~
13/17

1.

 手入れの行き届いていない庭を抜け、中庭と隣接している古扉を開いた。

「不気味なモンだな」

 隣でアイゼン・グリッダが呟く。心中で同意し、俺は中へと足を踏み入れた。

 向かって正面にあるのは横に大きな階段。上がると、左右に分かれている。



「簡単には行かせてくれないよな……」

 アイゼンの声と重なり、重そうな金属が擦れる音が響く。

 暗い階段上から降りてきたのは、重厚な鎧騎士だ。

 鎧騎士の顔はバイザーで隠れて見えないが、二つの紅い輝きは隙間からかすかに見える。

「リアン、ゼノ。お前らは先に……俺はコイツを止める」

 既に抜刀している相棒に向け、俺は言葉を投げた。

「でも! お前一人だと――」


「いいから、行け!!!!」


 返ってきたのは怒声だった。

 僅かに気圧され、身を引いた。

 その瞬間、アイゼンの眼前、俺の右隣で火花と金属音が飛び散った。


「早く……行かねぇと………シエルが……手遅れに……」

 一人の少女の名前が出た途端に、俺の思考がフル回転し始めていた。今は何を優先するべきなのかを自然とはじき出していた。


「グズグズしてんじゃねぇ!! 行くぞ!」

 既にゼノが先に走り始めていた。

 俺もすぐにその後に続いた。







 誰に語りかけるでもなく、アイゼンは独りごちた。

「ようやく邪魔者がいなくなったな」

 アイゼンの独り言に答えるかの如く、全身鎧騎士の大きな両手剣の重みが増す。

「始めようぜ!!」

 大盾で両手剣をいなし、右手の長刀を振るう。

 元が歴戦の戦士だったのか、鎧騎士は凄まじい速度で両手剣を引き戻し、アイゼンの長刀を防いだ。返す刀、両手剣は長刀を弾いた軌道から勢いを殺さず、アイゼンの首へ迫った。

 咄嗟に構えた大盾も大きく弾かれ、仰け反ってしまい、致命的な隙を見せてしまった。

 この隙を見逃すほど甘いレベルの相手ではない。

「ぐ、ぶるぉあ!!」

 金属に阻まれた奇怪な声をあげ、重そうな両手剣を大上段から振り下ろされる。

(ここじゃ、終われないんだな、これが)


 アイゼンは地面から左足を上げた。仰け反った勢いを殺さないように、右足を時計回りに半回転。そしてそのまま倒れこむように左足を後方へ踏み出した。


 体勢を整えるとそこには両手剣が床に突き刺さった鎧騎士。

「ここまでだぜ?」

 アイゼンは準備の整った術式を展開。眼前に複数の拳大の大きさの岩粒が出現した。鋭い方は全て鎧騎士へ向いている。

「地の力は悪しき者を浄化する!!」

 言葉と共に、長刀の剣先を勢い良く鎧騎士へ向けた。長刀の動きと呼応したかのように岩粒が一斉に動き出した。勿論鎧騎士へ向かって。

(終わったな……)



 アイゼンの考えが覆るのに時間はいらなかった。

「ごぅるぅぁあああ!!!!」

 低く太い声が城一階層に響き、両手剣の刺さった巨大な床タイル一枚が動いた。

 鎧騎士は引きぬいた巨大な床タイルを巨大な盾として扱い、岩弾を全て防いでしまった。次いで、両手剣から床タイルが外れるように器用に振るったため、アイゼンの方へ床タイルが飛んでくる。

 大質量の物体を真っ向から受け止めるのは自殺行為である。

「あっっぶね!!!!」

 間一髪、上体をかがめ、回避に成功した。

 後方で床タイルがバラバラに砕け散る音が響くが、アイゼンは視線を鎧騎士から離さなかった。

「只者じゃないな……」

 アイゼンの言葉に鎧騎士は何も答えない。答えたのは鎧騎士の持つ両手剣。

 両手剣がブウンと空を斬ると、アイゼンが構えた大盾と激しくぶつかった。

「楽にはいかないな……」

 またしても答えたのは両手剣による一撃だった。

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