続 月明かりの夜に
暫く時間が経つと少女は泣き止んだ。
少女は抱き付いていた相手の顔を見てみた。
そこには悲しい顔をした優しい顔があった。
優しい顔をした怪盗はその様子を
見て優しい声音でこう言った。
「君だけのモノなら何でも奪ってあげられる。他に何かないのかい?」
少女は少し黙ってからこう言った。
「私の…私の寿命。」
「寿命?基本的に命は扱わないんだけどな…寿命を奪っちゃうともう背は伸びないよ。」
「それでも…いい。」
「それと寿命を奪っても君は死なない身体になる訳ではない。老いて死ぬ事と、ガンで死ぬことがなくなるだけで、大きな怪我をしたり首を絞めたり怖い病気になったりしたら死んでしまうからね。それでも良いのかい?」
「…」
少女は真剣な面持ちで少し黙って…それから言った。
「じゃあ私が大人の身体になった時にまた来てくれる?そうすれば今より病気に強くなるし怪我にもなりにくくなるから。」
「いいよ。君がそれを望むなら僕は待っていよう。その時が満ちたら呼んでおくれ。」
「ありがとう。それじゃ…よろしくね。私の事、忘れないでね!」
「もちろん。あ、そうだ。これを持っていて。」
「これなぁに?」
「それはお守りみたいなモノさ。あ、でもあまりお守りを頼らないでね。本当にいざという時だけ君を守るモノだから。そのお守りは君が僕と次、会った時に僕に返しておくれ。」
「わかった。」
「じゃあ…気を付けて生きるんだよ。ここからずっと南に行けば君を守ってくれる人がいるハズだ。そうだ、方位磁石もあげよう。こっちが南だからね。南を目指すんだ。そこまでどれくらいかかるか、あいにく僕には検討がつかない。とにかく南を目指すんだよ。」
「どうして怪盗さまはそんなによくしてくれるの?」
「怪盗は、謎あっての怪盗だよ。それじゃ気を付けて。」
少女は怪盗に手を振って歩いて行った…怪盗は彼女が見えなくなるまで見送っていた。
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