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第六章 一億の殺戮者の過去

まずいことになった。

家に帰った途端天村は今後の人生を、高校生ながら考える羽目になった。

最初に考えたのは、殺人犯の逃亡を手助けた共犯は今後の人生にどう響くのかだ。

何しろ、家から30分ほどの距離でついさっき人が一人死んだのだ。

その殺人犯はというと、

「おなか苦しいから寝る、って言ってふつうすぐ寝るかね」

ベットを占拠すると数分と立たずに、スースーと寝息を立てながら寝ていた。

男子の近くで無警戒に寝たのは、そういう知識がないのか、警戒していないだけなのか、それとも誘ってい・・・・・・

「何考えてんだ俺は!」

ガラガラ

「天村君、叫ぶのはいいけど夜は近所迷惑だからね?」

と、同級生の茶髪でショートカットの女の子が注意してくる。

名前は確か草野由美だ。

周りの奴らは窓越しに女の子の家があるのは羨ましいなどとほざくが、天村はこれを災厄だと常日頃思っている。

せっかく親元からさなれるために、マンションに住んだというのに、窓を開けるとおせっかいな同級生がいた時はものすごくショックを受けたのは今でも覚えている。

「頼む。今は俺に考える時間をくれ」

「考える?・・・・・えっ!私まだっ・・・・って違うの、違うんじゃなくて」

「何言ってんだ?」

「何って・・・・・」

(確かこいつ人の悩み事解決は得意なはず。相談・・・・・してみるか?どうせ近いうちにばれることだし)

「俺は今から重要なことを話す」

草野の顔が真っ赤になってくる。

「な、な、な」

「風邪か?」

天村の手が伸び草野のオデコに触れる。

窓と窓の距離は乗り出せばギリギリ渡れる距離だ。

「ちょっと熱いな。一応熱測って微熱とかだと早めに寝ろよ?」

「風邪ちゃう!」

そういうと慌てるように天村の手を振り払うと、勢いよく窓を閉められカーテンも閉められた。

そのあと何度も声をかけたが返事がなく、しまいには「これ以上はストーカーとして通報する」とまで言われてしまった。

「共犯になるかもしれない時に、ストーカーになるのはかなりまずいよな」

と、草野の法の知識はあきらめざるを得なくなってしまった。

「どうしたらいいんだ。俺は」

殺人犯である少女はどうやってあんなにぐっすり寝ているのか知りたいぐらいだ。

けど今思えば少し妙だ。

ファミレスと天村の住んでいるマンションの距離はあるが、ファミレスと警察署の間に天村のマンションがあるはずだ。

なのに、30分以上たっているが、サイレンの一つもまだ聞いていない。

とゆうより、あの場に警察がいて、天村のたちの顔を見たはずなのにこの付近を捜索していないのも何かおかしい気がする。

この世界で一番頼れるとしたら悔しいことにあの殺人犯かもしれない。

寝ている女の子が寝ている部屋に、無断で入るのは少々気が引けたが構わずに入る。

「あれ、起きてたのか」

ハスナは無言でうなずくと、おなかに手を当てる。

ぐー、と抑えられたお腹から音が鳴ったのは気のせいではないはずだ。

「おなかが苦しいときどうすれば治るの?」

今日何回か聞いた質問だ。

「飯を食う。以上だ」

同じ答えを返してやる。

ハスナは無言で立ち上がると、尻尾を動かし天村の腕に当ててくる。

「そういえばお前って人間なのか?化け物なのか?」

天村自身、自分の言っていることの意味は理解していないがこれだけは聞いておきたかった。

「・・・・・いやな質問だね。それ」

うつむきながらハスナはつぶやく。

初めて見たかもしれない。

この少女とあってまだ少しだが、こんなにつらそうな顔をした人を初めて見た。

「私は人間でありたい。でも、私の強すぎる力のせいで化けもの扱いされて・・・・・・・しまいにはそれだけのせいで、お母さんまで!」

ハスナの方が震えている。

ただの高校生の天村には、ハスナの言っている意味がほとんどわからない。

ただ、一つだけわかる。

「お前の言ってることは、魔術だのなんだの知識がない俺はわからない。なぜ化けものって言われてるのかも、だから全くわからないけど・・・・・お前は・・・・・人間だ」

ハスナはそれを聞くと顔を上げずにため息をついた。

そして、

「君は化けものなんだね」

「っ!!」

思わなかった。

コンクリートなどが、木っ端みじんになるようなものを受けても、平然としている女の子に化けものといわれるなんて・・・・・

「この世界の人から見たら君はそう見えるかもね。でも私は君を一人の人間として見る。私のことを人間だって言ってくれたから」

違った。

あの化けものは、この少女が天村に対していったものではなかった。

「それとね」

ハスナはいたずらっ子みたいな笑みを浮かべながら

「魔力でできた尻尾に触れられてるときは、相手がその時思っていることとか全部漏れるから、無心になったほうがいいと思うよ?」

「なっ!!」

「そんなことあるはずがない。いや、今当たったのはたまたまで、そうだ別のことを考えれば・・・・・・・えーとこいつ胸ちい」

ゴンッ

天村の顔面に赤面したハスナの拳が飛んできた。

痛みで転がってるとこに、もう一発けりが来てしばらく再起不能となってしまった。

「悪い。本当に全部読まれてるとは思わなかった」

「・・・・・次同じこと考えたら指一本ずつ折っていくから」

ハスナは赤面しながら天村の指を一本逆方向に曲げてくる。

「いてててったい!マジ折れる!」

途中変な音が聞こえたのは気のせいであってほしい。

「化けものじゃなくてけだもののほうがあってるかもね」

「まてっ。その先は考えてないだろ。単にお前の胸がち、グエッ!」

指折りではなく膝蹴りが腹にもろに入った。

「次考えたら指折るって言ったのに忘れたの?」

自分の指を逆方向に曲げているのは、次はないということだろうか。

「悪かった」

尻尾がまたくっついてきたのは、口に出すことも考えることもするなという警告になる。

「俺信用されてない?」

「あってから1週間は人を信用しないほうがいいよ?そうしないと死ぬから」

物騒な言葉はおいておくとしよう。

「てか、寝たばっかなのに、何で起きたんだ?」

「さっきも言ったけどおなかが苦しくて起きたの!」

グーとなるたびに、おなかを抑えている女の子の絵はなんだか可愛そうだ。

普通ならご飯を上げたいとこだけど受け取ってくれない。

「ご飯とかいうのは食べないから」

「考えてること全部読まなくてもいいんじゃないのか?」

「かわいそうだと思うなら、ご飯とかいうの食べる以外に、お腹の苦しさなくす方法考えて」

「確か、お前って今まで魔力で生きてきたんだよな?」

ハスナは何も言わずにうなずく。

「だったらその魔術を使ったらいいんじゃないのか?」

「言ってなかったっけ?私の核、あ、核ってのは魔力を生成させるためのものね。で、私のは今破壊された状態だから私の魔力がほとんどないの」

ハスナは頭の右を指でつつきながら説明する。

「質問は後で受け付ける・・・・・っていうより君の考えてることは、全部わかるからそれに合わせながらやるかも」

「考えてること全部知られるのは気味悪いけど、それのほうがこの場合いいかもな」

「君がさっき疑問に思ったことだけど、私があいつの攻撃を無傷で防いだのは魔力のおかげ。なら、それを生きるために使えばいいんじゃないか?って思ったみたいだけど、私が今持ってる魔力は私のものじゃないの」

天村は両手を上げて首を振る。

特殊な尻尾を使って、天村の考えていることを読んでいるハスナはため息をつき尻尾を天村から遠ざける。

「自分の考えが全部読まれるのってそんなに大変なの?」

「だな。最初はまあ余裕はあったけど、途中から別のこと考えないようにとかで、かなりしんどかった」

「ふうん。で、私の話は理解できた?」

「あんまりだ。それより俺はかなり聞きたいことがあるけどいいか?」

ハスナは手をおなかに当てると首を振る。

「聞きたかったら、お腹苦しいのどうにかしてよ」

「だったら飯食べてくれるか?それしか腹が苦しいの治す方法ないぞ」

何度も唸りながら決心したのかハスナはしぶしぶうなずいた。

とにかく大変だった。

聞いた(というよりハスナが自分から話したことだが)何かを体内に取り入れて、生きていくような世界は初めて見たとのことだ。

世界とは何かと尋ねても、苦しさを治してからといわれてしまった。

「なあ」

「・・・・・」

「腹苦しいの治したいって言ったのお前だよな」

「わかってる・・・・」

簡単にインスタントラーメンを作り、ハスナに出したのだが、一向にめんが口に運ばれない。

一度天村が口に運んでみようとしたのだが逃げられた。

「本当に私の魔力がない今、これしかないの?」

「他人の魔力?じゃ生き延びれないのか?」

ハスナは首を横に振る。

「少しならできたけど、これ以上は自分の魔力じゃないと無理なんだけど、私の核は破壊されてるからもう二度と作り出せないの」

「・・・・・俺にはやっぱよくわかんないな」

「海斗」

ハスナがまっすぐと天村の目を見つめてくる?

照れくさくて目をそらしそうになったが、できなかった。

その顔が真剣そのもの、もしいま目をそらしたら自分はこの先死んでしまう、そんな錯覚が生まれてしまった。

「私はお母さんが殺された憎しみでたくさんの世界・・・・たぶん1億人ぐらい殺したの。もちろん私を処分するため捕まえようとする兵もいた。だけど私は、お母さんが殺される原因だった強すぎる力で全員殺して、全く関係のない人間まで殺してしまった」

「待ってくれ。お前の母が殺された?お前が1億人殺した?何言ってんだよお前」

「嘘じゃない。私の髪の毛の色わかるでしょ?」

天村はハスナの髪の毛を見てうなずく。

血のように赤い色。

その色はところどころで色が少し暗くなったりもしている。

「血の色って血管の場所によって変わったりするの」

何が言いたいかなんとなくわかる。

やめろ

口を動かしたはずなのに声が出てこない。

ハスナの髪をみてうなずいた瞬間から、頭の中に映像流れ込んできていた。

止めたくても止められない。

目をつぶっても頭の奥で再生される。

500人ほどいる広場の中心で、ハスナの母が心臓を貫かれ殺された。

それより前のハスナの色は赤じゃなかった。

ハスナの母を殺すよう命じた人物がいた。

そいつにハスナは叫んだ。

『なんでお母さんを殺したの!?父さん!』

返事はそっけなかった。

『私に話しかけるな。化けものめ』

目の焦点が外れその場にハスナは倒れこむ。

「やめて・・・・くれ」

何とか声は絞り出せたが、映像は止まらない。

その眼には涙はない。

ただ見開かれた目に映っているのは父・・・・いや、

『殺ス殺す殺す殺す殺す・・・・・殺す!!』

殺しの対象。

ただの殺戮が始まった。

それを止めるべく広場にいた人々はハスナにあらゆる魔術を使った。

なのに、誰一人ハスナに傷を負わせることなく死んでいった。

天村の知らない魔術を使って死んでいくもの。

殴りかかってきたら逆に吹き飛んでいくもの。

だが、結局は全員たどる道は同じだった。

言うまでもなく死。

殺す命令をしたのが誰とか、どうでもよかった。

誰も助けてくれなかった。

最後に残ったのは母を殺すように命じた殺すターゲット。

広場には500人の兵がいたはずなのに、今は誰一人息をしていない。

すべてハスナの手によって、ただの肉片に変えられてしまった。

『皮肉なものだとは思わないか?化け物よ』

その瞬間ハスナは殺しのターゲットの懐に入っていた。

あとは全力の魔術を使えば終わる。

ハスナはそう確信できた。

殺し合いなどわからない天村ですら、なんとなくそんなことが分かった。

そして終わった。

殺しのターゲットのたった一言で、ハスナが戦意を喪失するという形で。

『お前の母が死ぬ原因となった力を直後に使い、お前の母が最も嫌いだったことをするとは』

崩れ落ちた。

殺しのターゲットではなくハスナ自身が。




そこで映像は終わった。

「今のは私の過去の記憶を君に見せたもの」

「今のが、お前の過去・・・・」

ひどいなんてものじゃない。

「私はたまに理性が飛んで今みたいになることがあるの。何がきっかけでこうなるのかわからない。それでも・・・・っ!!」

天村に手を握られハスナは後ろに飛ぼうとしたが、ひっくり返った。

「っ! な、何するのよ!?」

「こけたのは俺のせいじゃないぞ?お前が椅子に座ってるのに後ろに飛ぼうとしたから」

「・・・・わかってる」

ハスナがひっくり返るとき手を握った天村も引っ張られ上に覆いかぶさっている状態だ。

机越しだったのに、どうしてこうなったのか不思議なものだ。

「このあと私は逃げた。わけわからなかった。気づいたら広場にいた人もみんな死んでたし、全部私がやったって記憶もあった。私は逃げた・・・・・」

「誰だって死ぬのは怖いもんだと思う」

ハスナは首を横に振り天村の手を振りほどく。

「違う!確かに捕まったら死刑されるのは確定したけど・・・・そんなんじゃないの。怖い。今もこうして君とお母さんに関係してる話をしてること自体怖い」

天村には、ハスナが何を怖がっているのかわからなかった。

ハスナは天村が戸惑っているのを無視して続ける。

そして、天村が全く予想していなかったことを・・・・その少女は涙を一滴流し告げた。

「いつ私が、君を今までの1億人の人みたいに殺してしまうんじゃないかって思うと、ものすごくこわい」


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