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第二章 白い天井

「うーん」

最初視界に入ってきたのは白い天井だった。

左を向くときれいな海が見える窓。

右を向くと、

「なにこれ」

いびきを立てた天村が隣で寝ているのだ。

魔術で吹き飛ばそうと目の前の男に手を当て魔術を発動

―――したはずだった。

いつもならこんな男ぐらいきれいに消えるのだが微動だにすらしない。

失敗したと思い何度も繰り返すが何も変化しない。

起き上がりけり飛ばそうかと思ったが体がうまいこと動かず起き上がることができない。

知らない男の人に隣で寝られているのは多少怖いが起こすのもなんだかかわいそう(殺そうとしたのにおかしいが)と思ったので首を動かしあたりを確認する。

どうやらどこかのベットの上で寝ているようだとしか認識できなかった。

少女にとってこのような施設は初めて見たものなのだ。

「魔力が感じられない」

そこが決定的だった。

今まで少女の見てきた建物などは、魔力によって固められたりしているのだが、この建物はそういった痕跡が一切見られない。

ここまでわかったのだが、なぜこんなよくわからない世界で寝ているのかいまだにわからない。

順を追って覚えていることを思い出す。

「たしか、あの世界・・・何て名前だったかな?」

最後に壊した世界の名前を思い出そうとするが一向に思い出せないので、思い出すことをあきらめた。

「自滅されて・・・・」

少女はすべて思い出した。

空間移動のために脳にある核を破壊したことも。

これで合点がいった。

なぜ隣で寝ている天村を動かせないのか、ただ魔力を発動できないからだ。

核が再生するかなんてわからないが、今はただ生き残れたことに感謝することだけだ。

「この人に何もされてないよね・・・・・・・」

年頃十三の少女はそんなことをつぶやき、

「されてたら殺す」

と声に似合わない言葉と同時に天村を睨みつける。




「ぐぎゃああああああ!!」

天村が起きたのは一時間ほど後のことだ。

といっても自然と起きたわけではない。

体が動けるようになった少女が起き上がり、ジャンプすると全体重をひじに預け、そのまま天村の腹に落ちた時の痛みで起きたのだ。

「いってー!何すんだ!」

「それはこっちのセリフよ!何女の子のと一緒のベットで寝てるのよ!」

なんのこと?と聞くと少女の目で追いつけない速度の蹴りをあごにくらい、危うく気を失いそうになったが、意識をなんとか持ち直すことができたが正直つらい。

腹も痛いしあごも痛いし。

それに目の前の少女はもう一度蹴ろうとしている。

あの蹴りがさく裂したら倒れる、と天村は直感した。

「おい待て、蹴るな!」

天村の言葉はむなしく少女の蹴りによってかき消され、一人が倒れた。


「あれ?なんで、倒れてるの・・・・・私」


天村の直感は自分が倒れるのではく、この少女が倒れるだろうと思ったものだったのだ。

それも当然なことだ。

大怪我に大量の血を流しただけでも体力はかなり削られているうえ、人が目にとらえられない速度でこのような小さな少女が、動けば自分を追い込むようなものだ。

天村がこんなことをわかったのは変わった知り合いが一人いるからだ。

「っと」

「ちょっ!お、おろしてよ!こんなのセクハラよ!」

天村は冷たい地面からベットに移すために少女を持ち上げたのだ。

その格好はお姫様だっこに近い形になっているため、少女の顔は怒りの赤から恥ずかしさの赤にみるみる変わっていき、いくら暴れても無駄だと悟るとベットまでの短い距離を天村に任せた。

「あぷっ」

ゆっくりおろされるのかと思っていたのだが放り投げられる形でベットに落ち、情けない声が口から出る。

「何すんの!投げることないじゃない!」

叫ぶことが多いなと思いながら少女の言葉を無視して少女に質問する。

「なんでお前は俺の家で、素っ裸で、血まみれで倒れていたんだ」

と、少女の耳元で大声で叫ぼうかと考えたがいつもの音程で話す。

返事を待つが首を傾げたり顔を赤くしたり馬鹿などと連語してきたためそれどころではなくなり、しまいには枕や物を投げられ部屋を追い出されてしまう始末だ。

部屋に入ろうとドアを開けると果物ナイフを投げようとしているためうかつに入れない。

謎の力を使えば無傷で行けるかもしれないが朝起きた時から、なぜか使えなく体が無性にだるいのだ。

それに初対面の人に対して使えば怖がられるだけだ。

仕方なくドア越しでもう一度同じ質問をすると返ってきた言葉が「スケベ!」の一言でますます混乱することになった。

質問の中からスケベ!を意味するとすれば素っ裸ぐらいだよな、と結論付け

「確かに裸だったけど―――」

―――血まみれでそれどころじゃなかった、と言おうとした矢先に後ろでバギッって音がしたかと思うと、と何かが首をかすめる感触があったかと思った瞬間、目の前の壁に何かがドスッ、という音ともにそれは壁に埋まりこみ、何だったのかわからなかった。

何をしたら目の前のように物が壁に見えなくなるまで埋まるのだろうか。

天村はただ茫然と壁にできた幅二センチほど深さ不明の穴を見つめていた。

無意識のうちに首に流れてきた物をふきそれを見ると赤い血だった。

(絵具?ケチャップ?トマトソース?あと赤いものは・・・・)

この正体を探すべく赤く液体に近いものを知っている限り頭に浮かび上げていく。

匂いは鉄っぽい。

これは間違いなく。

ガラッっとドアを勢いよくあけると

「あれはナイフか!?俺を殺す気で投げたのか!いや絶対にそうだ言い訳は許さんぞ!?」

なぞと叫ぶと何かが四つ飛んできて、気が付いたらさっき穴があいたとこを背中に壁に密着していた。

「は?」

理解できない。

ベットの上の少女が何か投げた後の構えをしているとこから、何かを投げたのはわかる。

それでも、それでもだ、こんなもの普通投げるのだろうか。

投げた物は両手両足を見ればすぐわかった。

ベットから落ちないようにしている棒を四本、ベットからむしり取り、身に当たらないように服に当たり貫通したのだが、それ以上服を突き破らず後ろの壁に激突し、壁に棒が刺さりこの状況になっているようだ。

偶然廊下を通る人がいなかったのがせめてもの救いかもしれない。

その後数分間いろんな危ないものが身の一ミリほどに飛んできては壁に突き刺さりを繰り返された。

当然ながら恐怖で動けるわけもなくただじっと少女の怒りなのか殺意七日が消えるのを待つしかない。

「ぜーぜー」

あれだけ派手に動き回ってつい先ほど倒れたばかりの少女が、丁寧にも壁に突き刺さったものを全部とる作業まで終わったのは、奇跡に近いのかもしれないと天村は思ったが、口に出して下手に間に触ると怖かったので作業が終わるまでひと言もしゃべらなかった。

「わすれてよね」

「何を・・・・ですか」

壁針での恐怖か口調が自然と敬語になっていた。

年下に敬語を使ったのは何年ぶりだろうか、なんて考える余裕もないぐらいに緊張しているほどだ。

「その・・・・裸のこと」

顔を真っ赤にしながらそっぽを向き少女はそういった。

「あー、あのときは血のことでいっぱいだったからそこまで見てないぞ」

少女の怒りの原因がわかりホッとすると敬語をやめた。

同時になんだかおしいことをしたような気もしたのだが悟られないように頭を横に何度かふりかやの外に置く。

「いろいろ聞きたいことがあるけどそろそろ飯が来る時間かな?」

時計は七時三十分を指していた。

天村が謎の力の検査の時入院した時はこのぐらいの時間にご飯が運ばれてきたのを思い出した。

それを聞いた少女はなぜか首を横にかしげて不思議そうな顔をし始めた。

そして、少女は言った。


「飯って、何?」



前に一週間と書いていましたが、少し遅れてしまいました

すみません


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