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十二章 残酷な選択 俺の決断は、不幸にしかならない

5月17日

ハスナは誕生日を祝ってもらうのはもう無理だと判断した。

それはいつもならいい夢か悪い夢を見ている時間当たりだ。

ハスナと天村は目覚ましでも、鳥の音でもなく悲鳴で目を覚ました。

「草野!」

天村は起き上がるとすぐに玄関から出ていった。

ハスナは窓から草野のマンションを見るが、草野の部屋が大きく壊れていた。

「・・・・・なんで、こんなことに・・・・・・・・」

自分のせいだとわかっていても、そうつぶやかずにはいられなかった。

中を覗き込むが草野の死体は見つからない。

死体が完全に蒸発させるとしたらこの程度の規模の破壊では無理だということは、ハスナが一番知っている。

ひとまず悲鳴をあげた段階ではまだ死んでいないとわかると安心できる。

草野にもハスナは今までの経緯を聞かせていたから今頃は逃げているはずだ。

「草野の命を助けるか私の命を消す・・・・・・海斗にそんなことさせたくない」

でも、もう無理だ。

体が動かない。

魔術はかけられていない。

怖い。

カッペイの時も天村が殺されると思うと怖くてすくみそうになった。

1人だけでそんなことになっていて今度は2人になった。

たったそれだけの違いが、ハスナに体が動けなくなるほどの恐怖を生み与えていた。

数分経ってようやく体が動けるようになった。

あの二人のもとに駆け付けて助けたい。

そう思った。

ハスナは急いで玄関から外に出た。

天村たちが向かっていそうな場所に走っていたのに、今は足が止まっている。

天村を見つけた。

違う。

あれは天村の左腕だ。

それを拾うと点々とついている血を追って走る。

天村が力を使えば腕も治ってこの血も流れていなかったものと考えれる。

(海斗・・・・・・成長が早い)

もし自分だったら、一日一回しか使えない力を持っていたとしたら、腕が取れた時点で使っていただろう。

どれだけ走ったのかだんだんとわからなくなってき始めた。

肉体を見たのは今抱えている天村の左腕だけだ。

そのほかには服の切れ端や血は落ちているけど、まだ死ぬ量ではない。

それにおそらく襲撃者は草野と天村を今は殺す気がないとハスナは思っている。

ハスナの最初の勘通り、あの二人をおとりに使われたらハスナは死の道を選ぶかもしれない。

もしそうだとしても天村の力を遠距離からでも使ってくれたら、力を取り戻してあの二人を助けれるからそこの問題はあまり考えていない。

「もし、あいつの考えで進んでたら、誰か一人は絶対に死ぬ」

その予感だけは避けたかった。

一人の人物が前に降り立つと同時にハスナは絶望し意識を失った。





体は動く。

でも10m以上の円の中でしか動くことができない。

ここがどこなのか天村にはわからない。

本当に地球なのかどうかも疑ってしまう。

空が赤い。

それに見渡せるだけでもかなりの大きさのクレーターに死体がある。

前にハスナから聞いた最後に絶滅させたと聞いた世界にかなり似ている。

切断された左腕を力を使って直そうとも考えたがやめた。

一番最初怪我をしたハスナの時力をつかえなかったことから、こういった事態では死のまぎわでしか使わないと決めている。

(俺が気絶してどのぐらいたったのか知らないけど、草野の姿が見当たらないな。あいつはうまいこと逃げてくれてると今は祈るしかないのか)

力のない自分が憎い。

「この場所はな。奇跡の場所といわておるのだ」

天村を気絶させこの場所まで連れてきた人物が言う。

「おぬしはハスナを知っているだろう。そのハスナに破壊されたはずの世界だったのだここも」

理解ができない。

ハスナには世界の破壊のことは聞いていた。

「ハスナが4年前から今日までで一度来たことがあるってことか?でもハスナが渡った世界は14・・・・・俺たちのも合わせたら15って聞いたけど、その14はすべて破壊してしまったって言ってたぞ」

自分の腕を切った相手とはあまり話したくないが、今この状況を打破させる道がないかをこの男との会話で見つける。

「我もこの世界は数週間ほど前、ハスナが力を失った日にこの世界も消えたと思っていた。しかしこうして存在する。この世界に限った話ではない、今までハスナが壊してきた14すべての世界が蘇っているのだ。残念ながら住民は生き返らなかったがな」

「なんでそんな話を俺にする」

男は黙り込む。

何かを考えたのか、ポケットから一つのクリスタルを取り出した。

そこには一人の女の子とその隣に一人の人物の輪郭がある。

「これは命写真というものなのだ。過去に取った人間が生きていればこの写真にそのまま写る。死んでいたら」

「輪郭だけに、なる」

うむ、と男はうなずく。

天村が口を開いた瞬間男の隣に紫色の亀裂が走り始めた。

「あまり時間がないな。天村海斗よ、時を操る力でハスナを助けてやってくれ」

「っ!どういうことだ、それは」

男は何もしゃべることなく消えていった。

ただ一つの写真を天村の手に握らせて。


「無関係な一般人を巻き込むのはあまり気が進みませんでした」

人が5人ぐらい通れそうに広がった紫の渦から出てきたファットメンはそう言いながら、草野を地面にソッと下ろす。

「こうするのがハスナを殺すのに一番手っ取り早く、人間の傲慢さも見れる」

次に出てきた男が、ハスナを草野のいる方向とは反対のほうにハスナを放り投げる。

「草野!ハスナ!」

「起きられましたか、天村様。今日はいい夢を見れましたか?」

「いい夢が見れると思うか?俺は今かなり最低なき・・・・・・」

それ以上喋ることが許されたかった。

ファットメンの後から出てきた男の手が腹に潜り込んできた。

「げがっ!」

せき込むことさえも口に突っ込まれた手で許してくれない。

「俺はうるさいハエは殺したくなるたちなんだ。死にたいハエになりたくなかったら、黙って俺の話を聞くようにしろ」

言い終えると、手を引っこ抜き元いた場所に戻っていく。

天村はただ痛みに地面でもだえる。

腹の傷はもちろんのこと手を口に突っ込まれた影響で喉までもが、かなりの傷を負ってしまった。

これでは喋れない。

(まだ、つか・・・・・うな。この程度、じゃ。死なないはず・・・・・だ)

めまいもする、吐き気もする。

できることなら今すぐ力を使って傷をすべて治したい。

「では本題に入る前に応急処置だけしておきましょう。もし天村様が動けなくなってしまっては大変ですので」

男の制止も聞かずファットメンは天村の傷を治す。

「あなたの力でハスナを助けてあげてください」

去り際、ファットメンは小声で天村にささやく。

「では始めましょう」

ファットメンが元いた位置に戻ると、男が何かを詠唱し始める。

しばらくすると二つの柱が草野の近くとハスナの近くに現れ、意思を持つかのようにその柱がそれぞれ草野とハスナを縛り上げていく。

それが完了すると、天村の前に1メートルほどの剣が地面に突き刺さる形で現れた。

何かを喋ろうにものどの傷が邪魔して声が全くでない。

それ以外にも喋って、腹に、のどにあの男の手が刺さるんじゃないかと思っての恐怖も影響している。

「今からゲームを行います」

(ゲーム)

「今から二つの選択肢をいいますので、そのどちらかを選択してもらうというものです」

背中から嫌な汗が流れ始める。

縛られた二人と自分に渡された剣が嫌な想像だけを膨らませていく。

ファットメンが腕をハスナに向けると、

「一つ目の選択肢は、天村海斗がハスナ・フローリエを殺す」

「ふざっけんな!そんなことできるわけないだろうが!」

自分の腹が貫かれるかもしれないということも忘れてただ叫ぶ。

それを無視してファットメンは今度は、二つの腕で人物を指さす。

「二つ目の選択肢は、ハスナ・フローリエの力を取り戻すことのできる人物、天村海斗が死ぬこと・・・・・・」

「だったらそ」

迷わず自分が死ぬ覚悟ができた。

ハスナと草野二人をために死ねるなら幸せだと感じた。

「と、草野由美を天村海斗が殺すこと」

「は?今・・・・・なんていった?」

「草野由美を天村海斗が殺すこと」

それでも変わらない。

三つめの選択しが新しくできても天村の決意は揺るがなかった。

そう、三つ目などないと知るまでは。







「そんなの一つ目と三つ目を選ぶわけないだろうが」

そうだ、俺が死ねば二人が助かる。

最後にあの二人と話したかったけど、仕方ないか。

「おまえ、勘違いしてるぞ?選択肢に三つめは存在しないってのは変わってねえからな」

なに、言ってんだ?こいつは。

「二つ目の選択肢が、お前が死ぬこととその前にお前がこの草野って女を殺すって選択肢だ」

ウソだろ?

三つ目がない?

ハスナか草野のどっちかが確実に死ぬ?

そうか、あいつらを殺せば俺も草野もハスナも助かる。

右腕一本でどこまでいけるかわからないけど、それが一番・・・・・

「ちなみに、もしお前が俺たちのこと殺そうと動いたらこの二人は即座に死ぬからそこんとこヨーク覚えとけよ」

なんでだ。

あいつはなんであんなに面白そうに笑ってるんだ。

意味わかんねぇ。

俺だったらいくら痛められても、脳さえ動けばもとに戻れるのにあいつらは・・・・・・あいつらは、どうなんだ?

『時を操る力でハスナを助けてやってくれ』

『あなたの力でハスナを助けてあげてください』

俺の力はいったいどこまで効くんだ?

胸を貫かれたハスナは元通り傷も治った。

「・・・・・・ここ、は」

「ハスナ!」

「かい、と?」

ハスナの声がこんなに落ち着くものだとは思わなかった。

今までで一番ハスナの声が聴けたのがうれしい。

やっぱり危険を追わずにハスナを助けたい。

そして、また一緒に暮らしてたまに草野が来て・・・・・・

「か・・・と。ころ・・・・・・ら・・・・・・わ、た・・・・し・・・・・・・」

ハスナの声がなんでこんなに途切れてるんだ。

俺はハスナの全身を見渡す。

傷は一か所だけ。

なんで俺は今まで気づかなかったんだ。

気絶してるハスナの姿を俺は見ていなかった。

怖かった。

そのまま死んでしまうんじゃないかと心のどこかで思って、見ていなかったんだ。

片方の胸に風穴があいているのを、認めたくなかったんだ。

「もう喋るなハスナ」

目の標準ももう会っていない。

「ご安心を、あと10分以内に治癒術をかければハスナは死なずに済みます。ただ、その時あなた様が二つ目の選択肢を選んでいる必要がありますが」

10分

高位の治癒術を使うのには5分時間がかかるってハスナが言ってたから、ハスナを助けるならあと五分で俺が草野を殺し、死ぬしかないのか。

怖いのに落ち着いている。

草野は怪我をしていない。

二人に何かを期待するのは無理だ。

意識がない草野を殺して俺も死んでハスナを助ける。

死にかけのハスナを殺して、俺と草野が助かる。

まて、俺はさっき自分の力のことを考えていただろうが。

思い出せ、今まで俺が力を使ってきたときのことすべてを・・・・・・・・

「天村様、ハスナを生かすならそろそろ決断を」

もうそんなに時間がたったのか。

死にたくない。

だから、俺は、剣を引き抜き歩く。

「人間ってのは自分が一番かわいくて仕方がない生き物だ。それはお前も変わらないってことだな天村海斗」

あの男の声には耳を傾ける必要はない。

「か・・・・と。・・・・・お・・・・わい。は・・・・や、け・・・・・ど・・・・・・・・し、て」

血を吐きながらせき込みながらハスナはそういう。

それがハスナ・フローリエという女の子の最後の願い。

俺は剣を持ってハスナの前に立った。

「ごめんなハスナ。もうお前を泣かせたくなかったのにそんなに泣かせてしまって」

次からあふれてくるハスナの目元をぬぐってやると、ハスナは嬉しそうに顔をほころばせる。

やっぱりこいつは強い。

自分がもうじき死ぬってのに、笑えるなんて。

俺がハスナの位置だったらどうだっただろうな。

「ごめんな。お前のこと守ってやるって言ったのに、俺がお前を殺すことになって」

ハスナはとても弱弱しく、首を横に振る。

なぜかそれがうれしかった。

多分ハスナはあと5分以内で死ぬ。

もう生かすことができないとファットメンの顔を見るとわかる。

「・・・・・・・・・・・」

ハスナは何か言いたいんだろうけど、口が動くだけで声が出てこない。

「ファットメン。ハスナの思考を教えてくれ。いいかハスナ?」

それをハスナはうなずく。

よく観察しないとわからないほど小さなうなずきだったけど、今のハスナはそれだけでもかなりしんどいんだろう。

「ではハスナの思考と天村様をリンクさせます」

短い詠唱とともに俺とハスナの心臓がある位置から一本の線がつながる。

『海斗』

『ハスナ』

『私ね、もし海斗が由美を殺したらそのあと海斗のことも殺そうと考えてたよ』

全部は知らないのか。

草野が死ぬ場合俺も一緒に死ぬことはハスナには伝えない。

本当は伝えるべきなんだろう。

『もうじき私は多量出血で死ぬけど、ものすごく今苦しいよ。今すぐに全部投げ出したい。その前に海斗に私は最後のお願いするね。いっぱいあるんだけど、三つだけ』

『かなえてやるさ。三つとは言わずに十個でも百個でも』

『もうそんなに時間はないよ。一つ目はね』

かなりせっぱつまってるのが分かる。

自分の死が感じられるのは怖くないのか。

聞きたいけど聞けない。

『由美とこれからも仲良く遊んでね。二つ目はしなくてもいいんだけど、海斗の世界に私のお墓を作ってたまにメロンを供えてほしいの』

『ああ、その時は最高級のメロンを持っていく』

『最後・・・・・は、ね。お誕生・・・・・おめでとう。って・・・・・・・言って、ほしい・・・・・・か・・・・・な・・・・・・・・・』

ハスナらしい願いことばっかりだ。

『ああ、一日早いけどお誕生日おめでとう』

俺の眼から涙が流れてきた。

『と・・・・・っても・・・・う、れ・・・・・・し・・・・・・・い』

ハスナは最後に笑うと、息を引き取った。


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