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三月、幽霊少女と出会いました。  作者: 藍川ことき
一章 三月、幽霊少女と出会いました。
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『いやあ少年、酷いじゃあないか通話を勝手に終了』

「電波障害ですよーきっと」


うーん、感情の起伏を押さえて会話をするのって結構難しいんだな。

『そうか電波障害か。ではきっとさっきの言葉も聞こえてないだろうから、もう一度言っておくよ』

「いや大丈夫でした。しっかり聞こえてましたよ」

『お嬢さんとデートをしてこいっていうか、それに近い何かをしてきてくれ』

 一度言われかけたことで耐性がついたのか、わなわなと疼く俺の右腕(の親指)が携帯の通話終了ボタンをポチッとするという行為には及ばずに済んだ。

「……………」

『あれ?聞こえなかったのかな…じゃもう一回言うからしっかり聞いておいてくれよ。君の家に現在居候中の幽霊な彼女とデー』

「聞こえてましたから大丈夫ですからお願いですから処理落ちしちゃいますからこれ以上俺の思考回路に過負荷をかけないで下さいこの野郎」

『大丈夫か?というか今の発言はそんなに少年にこたえる発言だったのか…敬語が外れるのをすっ飛ばして罵倒されたぞ』

「俺は被害者です」

『なるほど。なら加害者は誰だ?』

「あんただ!」

『まあ世間話はほどほどにして、本題に入ろうか』

「ああもうどうぞ」

 もうどうでも良くなってきた。多分俺は一生この人を言い負かせられないだろう。

『いや、別にこれは君をからかっているとか、そういうものではないんだよ。こっちにも確固たる信念と目的があって、少年に現在デートを進めてるわけなんだ』

「ほう。では是非ともその信念だか目的だかを説明していただきたいものですなぁ」

『うん。少年ならそうくると思ったよ。安心したまえ、今回の説明は非常に分かりやすいから。聞いて驚け、なんと一言だ』

「………?」

 それは説明と言わないのでは?という俺の疑問が口をつくよりも早く、真奈は息を吸い込んでその『説明』を喋っていた。

『それ即ち…デッドオアアライブだッ!』

「…………はあ?」

 なんだこの人は。何だ生か死かって。

『あ、間違えた。なんとかアライブだった』

「なんとかアライブ…って何ですか?」

『いや、今の説明は忘れてくれ。もうちょい分かりやすい趣旨があった』

「最初からそっち言って下さいよ〜」

 まあまあ、と俺を諫めてから真奈は一呼吸を置き、こう告げた。

『―デートして、デレさせる』

 ブツッ。

 …何ででしょうね。多分なんだか右腕(の親指)が疼いちゃったんですよきっと。

 あーやばいそうこう言ってる間にも携帯の電源ボタンを俺の疼く中略が長押しして画面をブラックアウトさせてそのままポケットに以下略。

 というか、さっき真奈が言っていた『デッドオアアライブ』だの『なんとかアライブ』だのと今の発言から察するに、真奈は間違いなくあの作品のことを指しているだろ絶対。

 なんだよデッドオアアライブって!?

 約三文字ほどが違うだけでここまで意味合いが変わっちゃうものだっけ?

 とかいう疑問を頭の中にリフレインさせつつ、家に入った俺を迎えたのは固定電話の着信音だった。

 普段通り反射的に手を伸ばして電話に出ようとしたが、寸前でその手が止まる。

 普段はロクに働かない第六感が、俺が電話に出ることを激しく拒否していた。

 いや、存在すらしない可能性だけれども。存在しそうだから怖いのか。

「いや、ないってないって…」

 うはは、と乾いた笑みを浮かべ、受話器をとった俺の耳に入ったのはその有り得ない可能性だった。

『いやあ少年、どうにも今日は電話日和ではないようだねぇ。電波障害に続いて電話までもが通じなくなるとは、電波塔が死んだのかな?』

「あ、あはは……そうっすね…」

 そのまさかだった。ってかどうやって家の番号を探り当てたのだろう。

『じゃ改めて説明させてもら』

「いや待てどうやって家の番号突き止めたんだよあんた!?」

『おいおい、話の腰を途中で折るとは、少年はマナーがなってないな』

「教えて下さい」

『少年、世の中には若い内に首を突っ込んだらよくないこともあるんだよ』

「さてはハッキングだな!?ハッキングしたんだな!?」

『そうだねぇ、強いて言うなら答えは神のみぞ知るってとこかな』

「あなた警察に突き出しますよ!?」

『安心したまえ、証拠は一つも残ってないからな』

「やっぱりしたんじゃないですか!」

『まあまあ少年は優しいから許してくれるよねきっと』

「俺が許しても法が許しませんねそれは」


『ま、法如きで私がどうこう出来るとか思ったら大間違いだけど』

「すでに法を超越してたんですね」

『じゃないとこんな仕事なんてやってられないからねぇ』

 仕事のために法を敵にまわしたのかあんたは。

「わかりました、ハッキングの件に関してはいずれ出るところに出てキチンと白黒つけるとして、電波障害の前に真奈さんが言っていたことを説明してもらってもいいですか」

『そう物騒なことを言いなさんな少年。裁判などで私の春休みのオーストラリア旅行を潰さないでおくれよ』

「連れて行ってもらえるんなら考えますけどね」

『少年、残念ながら私は年下は好みではないんだよ。おまけに澪も連れて行くから、子供もいるのにそういうことをするわけにはいかないだろう』

「何言ってんですかあんたは」

 どんだけ踏み込んだ拡大解釈をしたらそんな話になるんだ。

 ってかそこだけ嫌にシリアスな口調で言わないでいただけますかね?若干引きましたよ俺。

『おやおや、自分からナンパしておきながら不利を悟ったら尻尾巻いて逃げ出すのか』

「いつ俺がナンパして尻尾巻いて逃げ出したってんですか」

『いや、さっき実にさらっと私をナンパしてくれたじゃないか』

「まあさっきの発言はそう言う意味にもとれなくもないですけど、残念。チキンの俺が犯罪に走れるほどに真奈さんは魅力的じゃないっす」

『ほう。なかなかどうして手強いじゃないか少年。ほんの少しだけ見直したぞ。女の子に手を握られただけでその子のことを好きになっちゃうようなティーンエイジャーだったら、てっきり私の言葉に慌てふためくものかと思ったのだが、ここまで切り返してこれるものとはな』

「もし同年代だったとしたら破壊力は十倍増しでしたよ」

『では冗談や世間話はこのくらいにして、ここからはシリアスパートだ。よく聞いておくんだよ、少年』

「それでまた『お嬢さんとデ以下略』とか、『デッドオア以下略』とか言ったらこの電話切りますからね」

『別に構わないさ。切って損するのは少年だということは忘れるなよ』

「知ってますよ。でも人間は最後は感情で動く生き物なんで、衝動を理性が押さえられなくなって通話ブチ切っちゃったらすんません」

『そのときは寛大なる私の慈悲の心でもってもう一度電話をかけてあげることにするから、安心してくれたまえ』

「そのときがすぐにはこないことを心から願ってます」

『よし。じゃあ説明を始めようか…なんて振り出しからちんたらやってたら、途中で少年が私の退屈で単調な説明に飽きて、通話を終了されたら困るからね。簡単にすませようか』

「俺をどんな人間だと思ってるんですか」

『年上はタイプじゃない、というかぐっと年下を熱愛しているくせに年上の私をナンパしてきた人だろう。時間もないし余計な質問は控えてくれるかな』

「人を勝手に自分の中で性癖持ちに変えないでくれますか!?」

『クレームは受け付けておりません』

「やめて下さいそういうの」

『ところで少年。今少年に悩みはあるか?』

 さらっと受け流しやがった。

「何ですかいきなり」

『少年だって健全なひとりの男子高校生だろう。悩みがないとは言わせないぞ』

「どうせあれでしょう、この質問が説明の一環的なやつですよね。一回やられたらバカでも二回目は気づきますよ」

『ノリが悪いぞ少年。本当の賢者というのは説明を全て終えてから『ま、実は全部分かってたんだけどね』みたいなことが言えちゃう人なのだから、賢くありたければ今は黙っていようか』

「別に賢くなりたくはないんで」

 っつーかそんな発言するのはただのバカ。完全理解してないヤツのセリフだろそれ。

『素直になろうよ少年。反抗期真っ盛りなのは重々承知だけども、人間はねじ曲がっているだけじゃ生きてはいけないんだよ』

「ご忠告傷み入ります」

『分かったのならいいよ。まあ話を戻そうか。さっき悩みがないかと聞いたが、あれは悩みを聞いたあとにその悩みを誰に相談するか聞こうとしたんだ』

「で、その悩みを相談するのは一般統計的に見ても普通に考えても、親しい人であるのは間違いないから、親睦を深めて未練を向こうから話し出させるためにちょっとデートしてこいって感じですか」

『鋭い洞察力だね。でも惜しい、95点だ』

「その心は?」

『後ろからのストーキングに気を配るのを忘れるなっていうのが入ってない』

「やっぱり通報しましょうか?」

『だから私は既に法に縛られるような身ではないと言っただろう』

「この電話番号や名前を使って」

『即刻破棄すればいいし名前は偽名だ』

「でも自宅の住所が」

『ざっと全国に十カ所はあるから一カ所くらい捨てても大丈夫』

「こうなったら武力行使をば」

『法廷にでるのはそっちだね』

「…情報戦では勝てそうにないっすね』

『だから言ったじゃないか、澪と魅力的な年上の男性以外は私の敵のうちにも入らないと』

「そんな大それたこと言ってましたっけ」

『ごめん。さすがに私も国家レベルの捜査にかけられたら逃げおおせられるか分からない』

「それ以下は対処できちゃうんですね!?」

『まずなる予定がないから大丈夫だけど』

「ならないでくださいよ、少なくとも俺の依頼を解決してもらうまでは」

『その言い方だと解決したあとなら別にいいみたいに聞こえるんだが』

「その意味で言ったんですが」

『冷たいなあ少年』

「事実ですから」

『言っていい事実と言ってはいけない事実ってものもあるんだよ。知ってる?』

「知ってますって。ってかこれ以上話してると美穂が感づきそうなんで、今日はいったんここで」

『そうか。検討を祈るよ』

「ストーキングは禁止ですよ」

 そう言って通話を終了し、受話器を置く。

『デートしてこい』

『デート的な何かを』

『デート』

『デート』

『デー…

「あーもう!」

 さっき真奈が言っていたデートという単語だけが、ずっと頭に残っていた。

 なんですかデートって。

 多分俺に最も縁のない言葉のベスト3には入るかもしれない。


ちょい時間あいたけどまだまだ連投するよ

投稿しがてら自分でも読み返してみてるんだけど…

一年前ってこんなんだったんだね…


数年したらどうなってるんだろ(´・ω・`)

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