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三月、幽霊少女と出会いました。  作者: 藍川ことき
一章 三月、幽霊少女と出会いました。
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どうも、アキです。

なんだかしばらく投稿を続けているうちに無事最終話まで投稿できたようです。

ここまでこの作品を見てくださってありがとうございました。

といっても、分量的にここまでの話は新人賞などで応募される一巻分なので、一応今後の展開を書くことも考えています。

もしくは別の話でも書いてみようか……

皆さんの意見も感想もお待ちしております。


まあとにかく、この話はここでいったん書いていた分を全部掲載し終えました。というわけで、ここでひと段落です。

あと数日したらゴールデンウィークが始まるのですが、そのときまでにどうするかを考えておきたいと思います。

どちらにしても、この話を書いたのは実は半年から一年ほど前のことなので、これ以降に上げることがあればすこし文体が異なるかもしれませんね。


では今日はこのへんで。




>

「それは違うよ。今の私は、ちょっと前の頃みたいに泡沫みたいに儚くて、ほっといたら消えちゃうような幽霊なんかじゃない。今は、生きたいっていう強い意志と、目標がある。だから、その意志が消えない限りは、絶対に消えない。そう決めた」


「……そっか」


何とコメントを返したらいいのか分からなくなって、やっぱり結局話しを切り上げてしまった。


「…………そういえば、君にはまだ私のほんとの未練、話してなかったね」


「俺には、ってことは真奈さんあたりには話したんだな?」


「まあ、半ば尋問みたいな形で。カツ丼はなかったけど」


「あんなもんあってもなくても変わんないだろ」


「うん、とりあえずそこはスル―しよ?……あー、えーっと、どこから話した方がいいんだろうな?確か、ちょっと前に君に、私自身の過去、って言って話をしたことがあったよね」


「まあ、あったな。嘘だったんだっけ?」


「半分嘘、半分本当、かな。母子家庭だった、ていうのは本当のこと。私がグレて、不良少女になったってのは嘘だよ。ついでにいうと、私のそもそもの死因もね」


「いちおう通り魔事件でお前が死んだわけではないだろうってことは真奈さんも予想してはいたみたいなんだけどな」


「そこはさすがに私も読んでたよ。ちなみに、私の本当の名前は違うってことは?」


「普通に読まれてた。でも下の美穂は同じだろうって言ってたな」


「へー。そこまで分かるんだ……あ、でも呼ぶ時は普通に美穂でいいよ、どうせ名字は使わないだろうしね」


 美穂はそう言って苦笑した。


「……で、話しを元に戻すけど。私が死んじゃったのは、別に誰かに殺された、ってわけじゃないのよ。生前私は、中学三年生の頃にひどいいじめにあって、そこから不登校になったの。その時に、不登校を通り越して完全なひきこもりになっちゃってさ、ロクに栄養も取れずに衰弱して、それが原因でコロっと死んじゃったのよ」


「へぇ、それは初耳だったな」


 美穂の死因が長期に及ぶ衰弱だとしたら、美穂の変に偏った貞操観念の身に着き方も腑に落ちる。仮に美穂が中学生で男女共学の学校に通っていたとしても、クラスのませた男子が「夜這い」なんて言葉を使うことははまず使わないだろうし、仮に言っていたとしてもその会話を聞いた美穂が適当な意味解釈で間違った意味を覚えていたとするのならば十分にあり得る話だ。男女で一つ同じ屋根の下で寝ることに対してあまり抵抗がないのも、まだ中学生で純粋だから……という解釈でいいはず。


 ついでに言えば、キス等を恥じらったりするのは少女漫画あたりでもそれなりに読んでいたから、と推測すればおおかたつじつまが合う。


「初耳なのは当然でしょ?まず君に言ったことがある私の過去は偽物だし」


「そこを悪びれるつもりはないんだな」


「なんか、君に謝ってる回数が増えるにつれてだんだん罪悪感が薄れて来たんだよね」


「それはひどいな」


「ま、それは置いといて。……私はね、君みたいな学生がうらやましかったんだよ。普通に生きて、恋をして、失恋して、みんなはそんな平凡な人生はいやだって決まっていうんだけど、私はその平凡な人生すら送れなかったんだから、私からしてみれば、恋人欲しいとか、一躍有名になりたいとか、そういうのはすっごい贅沢な悩みなんだよね。――見てなかったかもしれないけれど、遊園地で私がカップルにぶつかったときに私がすっごい暗い表情をしていたのは、今思ってみれば、多分生前の自分とそのカップルを呪う感情が一気に表に出て来たからだ、って言われれば納得するかも」


「ああ、それで……」


「……あ、あのさ、その、なんていうか…………」


美穂の口調がまたつっかえつっかえになっている。だが、その声音に含まれる感情は、羞恥と言うよりは恐怖のそれに近かった。


「……私の事、嫌いにならないでいてくれる?あんな表情を見てもまだ、私の事を悪く思ったり……しない?」


 その言葉を聞いた俺は、無言で自分の携帯を?み、それで軽く美穂の頭を小突いた。別段深い理由はない。俺がそうしたかったからそうしたまでだ。


「…………?」


 美穂は頭を小突かれたのが不意打ちだったのか、きょとんとして固まっている。


「そんなこと、いちいち気にすんな。この全世界どこを探しても、自分以外の全ての人間から嫌われる人間なんていないんだからさ」


「でも、私は、あの時私の周りの人は全員―」


「昔は昔だろ?それに、もし仮にこれから先、誰もお前の事を嫌わない人がいなくなるような事があったとしたら、――俺がその嫌わないヤツになってやる。だから、そのことはもう気にすんな」


「…………」


 美穂は寝転がって黙ったままだ。今の言葉が、きちんと響いてくれればいいのだけれど。


「……そうだね、分かった。もう、そのことはできるだけ気にしないよ。でも、君もこれだけは約束して。今の言葉に、嘘はないと誓ってほしいの」


「分かった。この約束だけは守るよ」


「うん。……あ、それとね、君には話しておこうと思ってたことがあるんだけど」


「……美穂の未練、か」


「そ。って言っても、ほとんど自分で話しちゃったんだけどね。……私は、みんなと同じ、普通の生活が送りたいの。実も蓋もない言い方をすれば、青春したい、ってとこかな」


「青春、ね……」


 その言葉を反芻しながらも、俺の頭の中は美穂の壮絶な過去に思いを巡らせていた。


 若くして自分の人生の先を断たれた美穂。彼女は、死の足音が迫ってくる瞬間に何を思い、何を望んだのだろう。そもそもそういう世界にまだ縁のない俺には、とうてい想像もつかないようなことだが、そんな暗い過去をひきずったままこの世から強制的に消し去ってしまうよりは、多少おせっかいと言われようが、この世に残しておいて正解だった、と直感的に感じていた。


 自分の黒い部分を少し話したくらいで、嫌われるかどうかの心配をするまでに心のすさんだ彼女を元に戻すには、方法は一つしかない。


 たくさん、青春と名のつくものを経験させてやればいいんだ。


 そして、今日はおそらくその第一歩だ。俺がたった今、そう決めた。


 うーん、と思いっきり伸びをして、凝り固まった体を伸ばす。


 朝からゴロゴロしていた所為でたまっていた体の中にある淀んだ部分が、それだけでほどけて無くなったような気がした。


「……よっしゃ、決めた!おい美穂、今から出かけんぞ」


 ベッドから跳ね起き、唐突にそう宣言する。


「え!?いきなり何言ってんの?」


「いいじゃねぇか、青春したいんだろ?」


「いや、それとこれとでどういうつながりがあるの!?」


「あれ?もしかして行きたくなかった?勿体ねえな、外はこの上なく晴れてるってのに。まあいいや、行かないってんならしょうがない、俺だけ一人で行ってくるから、留守番よろしくな」


「あ、待ちなさいよ!誰も行かないなんて言ってないから!」


「仰せのままに、お嬢様。ではお待ちしております」


「えーっと確か服の替えがここに……って、覗いてんじゃないわよこの変態執事もどき!玄関に行ってて!」


「へいへい」


美穂に言われるがまま、部屋を後にして階段をゆっくりと降りながらも、俺の顔にはうっすらと笑みが浮かんでいた。


「青春したい……ねぇ」


何と平和な願いだろうか。


 まあ、ろくな中学生活を送ることのできなかった美穂にとっては、それが本心からの願いだったとしてもなんらおかしいことはないのだが、本当に平和で、底抜けに明るい願いだ。


 なぜだかは全く分からないが、美穂の未練というか、願いが復讐や他人を呪うとかの黒々しいものじゃなかったことが、今はすごくうれしい。


「ほら、早くしないとおいてくよ」


ポン、と肩を叩かれて我に返ると、私服に身を包んだ美穂が俺の目の前に立っていた。俺が目を開けたのを確認すると、自分だけさっさと玄関から外へ出て行ってしまう。


「おい、待てっての……」


慌てて靴をつっかけ、玄関の外に出る。


 瞬間、視界いっぱいに広がる光に目がくらみ、思わず倒れそうになってしまった。


「ずっと薄暗い部屋の中にいたから、日が眩しいでしょ」


 一足先に出ていた美穂は、手か何かで日の光を防いだのか、すでに目を慣らしているような様子で立っている。


「ああ、とっても眩しいな」


「で、どこに行くの?」


「……あ、そう言えば何にも考えてなかったな」


「え?だめじゃん君、何やってんのよ」


「まあまあ。とりあえずそこら辺をぶらぶらしてみようぜ」


「うーん、まあそれもいいかな。分かった。……じゃあ、青春に向かって出発進行!」


ようやく回復しつつある視界の中で手を高々と上げた美穂が、眩しいばかりの満面の笑顔でそう宣言した。


 ―生まれて初めて学校をさぼった日に、生まれて初めての同年代の女の子との外出。


 楽しくなりそうだ、と俺は口の中でこっそり呟いてみる。


 今日が想い出に残るような、いい一日になるような予感がした。


?


To be continued…?


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