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三月、幽霊少女と出会いました。  作者: 藍川ことき
一章 三月、幽霊少女と出会いました。
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どうも。25個目になります。

土曜日は午前授業なのでこんな中途半端な時間の投稿となってしまいました



 空に出ている星の明かりだけでも十分に先が見渡せるほど、ここで見る星は明るかった。


 月のぎらぎらとした明かりとはまた異なる、優しさを帯びた光が裏山の道を照らしている。


 色々なことを考えながら歩いていると、五分もしないうちに見慣れたシルエットが道から少し外れた茂みで膝を抱えてしゃがみこんでいるのが目に入った。


「美穂」


そう声をかけると、うずくまっているシルエットがピクリ、と動いた。


「隣、いいか?」


「この間の意趣返しがしたいんなら、それでいいんじゃないの」


「別にそういうわけでもないけど……もう、一週間経ったんだな、俺が死ぬかもって言われた日から」


「君はほとんど寝てたから、体感的にはで一週間も経ってるとは思えないだろうけどね」


「俺が寝てる間って言えば、そっちも結構大変だったみたいだな」


「真奈の事?もう慣れたよ、一週間もすればね」


「そんなことないんじゃねぇの、真奈さんがお前が絶叫しまくってたみたいなこと言ってたし」


「ごめん、見栄張った。全然慣れないよ、あの性格は」


「そんなとこだと思ったわ」


「…………私の事、探した?」


「……めっちゃ探したよ、でも一本道だったし、今回は案外楽だった」


「なにその含みのある言い方。もしかして、こないだの事を根に持ってたりする?」


「さあ、どうだろ。まあ、わざわざ走る必要性がない分、楽だったかな」


なによそれ、と美穂が小さく口の中で呟いた後しばらく、その場には沈黙が流れていた。


「……もう、私も君も消える心配はないよ」


「知ってる」まあ知らなかったけどな。よかったよかった。


「もう私も君も、消えなくてもいい」


「俺が消えなきゃいけない人間だったみたいな言い方すんなよな」


「私は、もう死んだ人間だけど、この世にいてもいいんだよ」


「ああ」


「……って、真奈が私が目覚めたときに言ってたんだけどね」


「なんだそりゃ、受け売りかよ」


「まーね」


思わず軽く笑ってしまった。美穂も、つられたみたいに笑う。


笑ってるのかどうか怪しいようなそれがひとしきりつづくと、またその場に静寂が訪れた。


しばらくしたら、背筋が痛くなってきたから、斜面に体を預けて横になった。


視界には満天の星が浮かび、そのすべてが淡く明滅を繰り返している。


「なにやってんのよ」


「見ての通りだ」


ほんとなんなのよ、と呆れを含む言葉が聞こえた後、どさっと音を立てて美穂が隣に寝ころんできた。


「な?気持ちいいだろ?」


「まあ、星は綺麗ね」


若干上から目線で、美穂はそう感想をこぼす。


「それよりさ、何でここまで私を探しに来たの?」


「どんな回答を期待してるかは知らないけど、満天の星空を眺めることよりも優先できるような理由じゃないぜ?」


「その理由に期待してるんだよ、ちなみに私は真奈さんに色々言われてパシられてきたんだと予想したんだけど。どう?当たってる?」


「ご名答でーす」ま、ちょっとばかし違ってるけどな……。


「ははっ、やっぱり。期待通りだった」


「ご期待に添えてなによりですなー」


「ならこれからもよろしくね。…………あの、えーと……」


「?」


それまで快活だった美穂が突然口ごもり始めたので、空気を読んでとぼけるフリをしておく。


美穂は多分、あの時俺が意識を意識を失った後の事を話そうとしているのだろう。


おそらく、俺がその先を知らないという解釈で話を進めようとしているのだろうが、残念だったな美穂。俺はあくまで大雑把に、ざっくりとだが、美穂の赤面の訳と、あの時に俺の身の上に何が起きたのかということの一部を既に推測している。


まあ、この考えにたどり着いた最初のころは、信じられないとはいかないまでも、あまり信じようという気にはなれなかったけどな。


「えっとさ、聞いても驚かないでほしいんだけど、あの、こないだ、君が意識を失ってからのこと、まだ聞いてないと思うから、話すよ。……黙っててよ!?」


「はいはい」


「あのね……あの、君が意識を失った直後に真奈さんが来て、で、このままだと君も少年も助からない、って言われたから、真奈さんにいろいろ話を聞いて、で、ここからが重要なんだけどね…………」


そういって、美穂は黙ってしまう。ちらっと横目で盗み見ると、耳は既に真っ赤だったし、顔の方も同様だった。赤面症でもないのに。


「それで、あんなことやこんなことが色々あって、あの時に、私、君に………………キス、した、らしいんだよ、ね…………」


最期の方は、最早何を言っているのやら分からないくらいにボソボソとした言い方でしゃべっていたが、それでもまあ、なんとか聞こえた。


「キス?って、あのキス?」


「そ、それ以外ないでしょ!?」


「ふーん、キスねぇ……」


「そんなに連呼しないで!……あーもう、なんか恥ずかしがるとかそっぽ向くとか、それっぽい反応返してよ!すんごい恥ずかしいじゃん!」


それだけ言って、美穂は寝転がったまま反対側を向いてしまった。


いや、反応返せって言われてもねぇ。一応予想線のやや上を行っていたとはいえ、あらかた想像ついてたんだぜ?


「だいたい何よ、なんで私君にキスなんてしちゃったのよ、初めてだったのに……」


む?ちょっといじけ気味ですねお嬢さん。これはセリフをしっかり選んでいかないと。


「うーん……でも、俺はよかったよ、初めての相手が美穂で」


「……えぇっ?」


美穂がこちらに振り返り、完全に上ずった声を上げた。うん、パラメータ低下は防げたかな。


「二度は言わねーぞ」


「え、今、君なんて言って……」


「二度は言わねーつったんだよ」


「……うん」


美穂の口調に、なぜか恥じらい以外のプラスの感情が交じっているような気がしたんだけれども、気のせいだろうか?もしやフラグ来た?


「……って、そんだけなのか?」


「え?そんだけって何が?」


「や、だから美穂が俺に」「わあぁぁぁああ言わないでお願いだからそれはやめてえぇぇぇ!」「あ、うん、じゃ言わないから、落ち着け。だから、さっき俺が言いかけたこと以外で、美穂が俺に言おうとした事はないのかってことだっつの」


「まあ、うん、特には無いかな……って、これでも私さっきのこと言うのに、すっごい覚悟したんだからね!?シチュエーションとかすっっっごい考えてたんだからね!?それだけって言い方は無いと思うんだけどな!?」


 でも、俺に美穂が……ここは黙るとして、そのこと以外言ってないよな?やっぱり俺にまだこの状況の詳しい説明ってまだしてないよな?もしかして、かん口令でもしかれてるんじゃなかろうか。


「……はいはい分かったから」


「それと、この話は金輪際……ぇくちゅ!」


……やばい。今のは正直ちょっとかわいいって思ったかも。


「……じゃなくて!」


「え!?どうしたのいきなり!?」


「や、何でもない。それよりそろそろ帰ろうぜ」


「私はまだ残るから……っくしゅん!」


「よし、帰るぞ」


緑に覆われた斜面から体を起こして、ついでに美穂も引っ張り上げる。


「さーて、帰るか」


「うん、分かったよ……あ、けど、さっき言いかけたことは絶対守って!」


「あれ?なんか言ってたっけ?」


「さっきの話を金輪際忘れて、記憶の底に厳重に蓋でもしてしまっときなさいって言いかけたのよ!」


「さっきの話ってなんだっけなー忘れちゃったなあ」


「もう、だからっ……」


次の瞬間、夜の闇に小さなくしゃみの音が連続して吸い込まれていった。






「駄目じゃないか少年、女の子を寒風吹き荒れる夜の森に放置するとか、正気の沙汰じゃないよ?」


真奈宅に到着して、無事美穂を真奈にお届けした後俺がしばらく休んでいると、唐突に真奈が俺に抗議を申しつけて来た。


「いや待ってください、今回俺は全く悪くな」


「ほんとよ!まったく、これだから最近の……いや、やっぱなんでもない」


となりからコーンポタージュを啜ってくつろいでいる美穂からも、抗議が上がりかけた。って待て、俺はわざわざお前を迎えに行ったんだぞ?


「そこの真奈2号機は大人しく休んで黙っとけ」


「だから言ったんだよ少年、夜の森で女の子と二人きりとか、もう何が起きても全面的に男の子の方が責任とんなきゃいけないシチュエーションじゃないかって」


「いや言ってねぇけどな!?」しかもあんまりに意味深なんですけどね!?


「うわ、君私にそんなことしようとか思ってたんだ、マジ無いわ」


「とんだ誤解だぁ!」


「まったく、これだから最近の少年は……」


「本家も永遠に黙ってろ!」


「本家って何だい少年」


「あと私は二号機なんかじゃないって!」


とまあ、こんな感じの会話をひたすら続け、結局俺が自宅に帰れたのは既に日付けが変更した後のことだった。






謎の寒けを身に覚え、うっすらと意識が覚醒すると、目の前には自室の天井があった。別に白い壁なんかじゃないです。

 変な気分で体を起こし、ぼんやりと昨日自分がなにをしていたのかを考えると、意外とすぐに答えは出てきた。

 確か、昨日は真奈の車に乗せられたところですぐに意識がとぎれたんだった。

 で、家に着いた段階で起こされて、着替えるのもそこそこに布団に潜り込んでしまっい今に至る、っていうのが大体の流れだろうな。

 そこまで考えて上体を起こすと、何かベッドの下に見覚えのあるモノが転がっているのが目に入った。


それは俺の布団を完全に引っぺがすような形で強奪し、長く伸びている髪を俺の部屋の床に無造作に放り出して、すやすやと寝息を立てている。多分、起きた時に寒かったのは布団もないままで寝ていたからだろう。


と、そこまでの観察を終えたときに、その謎の物体がもぞり、と動めいて小さく声を上げた。


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