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三月、幽霊少女と出会いました。  作者: 藍川ことき
一章 三月、幽霊少女と出会いました。
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本日二個目。


実はちょっと前にファンタジアのほうにも別作品を応募させていただいたのですが、残念ながら結果は一次選考落選となってたことに今日気が付きました(´・ω・`)

むう……なかなか思うようにはいかないですねぇ……




「全力で辞退させていただきます。真奈さんを祀ってもいいこと無さそうなんで」

「少年は失敬な事を平然と言ってのけるねぇ。それはそうと少年、私にもまだ一つ分からないことがあるんだが、聞いてみても構わないかい?」

「別にいいですよ、色恋沙汰じゃあなければ」

「じゃあ遠慮なく。少年はわざわざ自分にとってデメリットしかない茨の道を進んで、お嬢さんをめでたくも助け出した訳だけれども、少年を死地に送り出したその原動力、私はそれが何なのか、少年にそれを問いたい」

「ああ、そんなことですか」

 てっきりもっと重大な質問でもされるのかと思いましたよ、とでも言いたげなふてぶてしい表情で、態度は斜に構えて、反抗期真っ盛りの俺は、そう答える。

「簡単ですよ。真奈さんにあそこまで魅力的な言い方で一人の女の子を助けろなんて言われて断るようじゃあ、中二病が廃るってもんですよ。女の子一人助けるために命の一つや二つかけるくらいなら、俺ん中じゃあれで十分すぎる理由なんです」

 そう言い放ってやると、真奈は一瞬呆気にとられたような表情をしていたが、次の瞬間にはいつもの不敵な笑みを取り戻していた。

「なるほど、確かに少年はそういうお年頃だったな。それにしても若気の至りというだけで何の躊躇いも無しに女の子を救いに行くことができるとは、少年にも実はなかなか見所があるかもしれないな」

「…だといいですけどね、でもつまるところは若気の至りですから」

「たかが若気の至り、されど若気の至り。意外に馬鹿にならないかもしれないよ?ま、何はともあれ、まずはお嬢さんの精神状態の修復をしてあげないとね。また消えちゃうかもしれないぜ、少年?」

 そういって真奈は肩をすくめ、おどけて見せた。

「別にいいんじゃないですか、人をパシった挙げ句に置き去りにした罰、ってことにしとけば」


「さあ?私はどちらでもいいんだけどねぇ。別に少年が今、お嬢さんのフォローをしなかったのが原因でその後の円満な人間関係が崩れようがぶっちゃけ私には関係無いしね、最後の判断は少年に任せるよ」

「なんですかその如何にも俺に行くことを強要させるみたいな言い方は」

「別に強要はしてないよ?」

「いいやしましたよ」

「してないさ。ただ私は少年が心配なだけだよ」

「……というと?」

「まあ少年に対して長々と婉曲表現的な話をしたところで意味合いが伝わるはずもないから、的確に簡潔に伝えた方がいいかな」

「今さりげなく侮辱された気がするんですが」

「気のせい気のせい、少年の幻聴さ」

「ずいぶんタチの悪い幻聴だな!?」

「分かったよ少年、そんなに気に入らないなら仕切り直しだ。最初からやり直そう」

「別にやり直さなくていいですけど」

 俺の言葉をスルーして、真奈は軽く考え込むような素振りを見せている。だが、それもほんの数秒のことで、しばらくして真奈は顔をあげ、実に安直な口調でこう言い放った。

「…ぶっちゃけ少年はおバカだからはっきり言わないと分からないから直接的に言おうか」

「さりげなくっていうか完全に侮辱されましたよ今!?」

「気のせい気のせい、ただの独り言だ」

「言ったことはもう認めるんですね!?」

「で、そんな実にどうでもいい話は棚上げするとして、」

「すんなよ!」

「おいおい少年、またもや口調が崩れてるぞ?いいのかなぁ、目上の人にそんなこと言ったら話を聞けなくなっちまうぜ?」

「そうですか。で、俺の何が心配なんですか?」


「……少年。最近私は君達にナメられているように感じ始めているんだが」


「気のせいですって多分」


「…………うん、まあいいだろう、今はそういうことにしておいてあげよう。で、なんだっけ?ぶっちゃけ少年が超おバカで歳上に対する態度もなっていないゆとりの権化のような存在だから、将来が結構危ういので一度超厳しい全寮制の男子校に入学して礼儀作法を一から学び直すことを強くお勧めするよっていう話をしていたんだっけ?」


「よくないですよね?なんかあること無いこと構わず俺にぶちまけてくるあたり、絶対恨み抱いてますよね?」


「あれ?おバカな少年にも私の感情が遠まわしに伝わるとは、私の詩心もとうとう錆びついてきたかなぁ」


「あの、拗ねてないで大絶賛脱線中の会話の流れを元に戻してもらえませんか」


「うーん、しかたないなあ、少年が傷つくだけならまだしも、会話自体の流れがずれ始めているというのなら流れを修正していかないとな。で、なにを話してたんだっけ。……あ、思い出した。私は少年がこのまま大人になると絶対幼女趣味の性犯罪者になると思うから今からロリコンの気が出ないように気をつけた方がいいよっていう話をしていたんだ」


「違うわ!だいたい俺がゆとり世代の権化だとか、将来ロリコンになる可能性があるとか、どんだけ危険なヤツなんですか俺!?」


「なにを今更」


「…………。もしかして、俺が寝てた一週間の間、しょっちゅう美穂とこんな会話ばっかしてた、ってことはないですよね?」


「むしろこの上を行くスケールとクオリティでお届けしたよ。お嬢さんが私に対してあまりに無口だったから、いろいろ話しかけてみたんだよ。でも距離を縮めるべくあれこれ工夫しているのに、なぜかお嬢さんには最近距離を取られつつあるように感じるんだよねぇ……」


「あー、その発言からなんか美穂の苦労が死ぬほどうかがい知れますね。ちなみにあいつ、今まで何回くらい会話の途中で絶叫してたんですか?」


「絶叫?なんでそんなことを聞くんだい少年?」


「いや、なんかあいつのストレスがMAXに達するとたいてい絶叫してるような気がしたんで、ある意味での指標になると思ったからなんですけどね」


「うーん、そうだね……………………うん、大丈夫だ、2、3回くらいしか言ってないから」


たっぷりと間を開けてそう答えた真奈の口調は誤魔化しようがないほど完ぺきに上ずっており、その視線はというと完璧に明後日の方向を見つめていて、つまりは嘘をついているのがバレバレだった。こんな調子の会話に一週間近くも付き合わされた美穂に、心の中で合掌した


「……真奈さん、もしや嘘をつくのって意外と苦手だったりします?」


「…………うん?……な、何の話だか全然わっかんないなぁーあははは」


「いや、分かりました。とりあえずここは美穂が絶叫したのはたったの2、3回だったという解釈をするということで手を打ちましょう。だからとっとと脱線しまくりの話しを元に戻せ」


「いやだな少年、そんな言い方しないでくれよ。お嬢さんがこんなに短い期間に絶叫しまくるわけがないじゃない」


「もういいですからとっとと話して下さい」


そう催促すると、真奈は咳ばらいを一つし、何かを話すのかと思いきや、じーっと俺を見つめて来た。


「……なにしてるんですか、じろじろ見てないで話して下さいって何回言ったら――」


「うん、決めた。やっぱ少年には言わないでおこう」


「はぁ!?何言ってんですかアンタ!?『話せば長くなるZE☆』みたいなフラグ思いっきりチラつかせてたのにモロへし折ってんじゃねーよ!」


「あれ?少年がそんなにキレるとは、そこまで私の話が聞きたいのかな?」


「ここまで言葉のドッジボールしておきながら逃げるとか、俺の脳内選択肢が全力で『マジねーわ』って否定してるんで責任取っ」


「だが断る」


「さてはアンタ、それが言いたかっただけだろ!?」


軽く絶叫してしまった。


「いや少年、なにもわたしは何の根拠もなく少年に……なんだっけ、まあなんでもいいや、それを言うのをやめたわけじゃないんだよ?」


「おい、アンタ今思いっきり理由自分で言ったよな、長い会話の中で言うこと忘れたから投げちゃえ☆みたいな根拠(言い訳)さらっとほのめかしたよな?」


「や、違うんだって違うんだよ少年。ちゃんとした訳があるんだってば。……まあでも、少年にはまずお嬢さんを連れ戻してもらわないと、話はそれからだね」


「人の将来を案じる理由を話さない理由なんて、わざわざ人一人探しに行ってまで聞きたい情報じゃないんで、別に行く気もないっすよ。真奈さん頑張ってください」


そう吐き捨てるように告げた俺の解答に対し、真奈はなぜか不気味にほほ笑んだ。


「いや違うね少年。少年にはそんな選択肢は存在しないんだよ」


「え?何言って……」


「すまない、さっきの私の発言には少々意味の補足が必要なようだ。少年、私が今この手に握っているUSBに、君のパソコンのとっっっっても大事であろうカワイイオンナノコのデータのバックアップが入ってるんだ。実はこのデータ、君が今からお嬢さんの捜索に出てくれなかったら後でお嬢さんに見せよっかなーとか考えているんだけど、少年はどうしたい?」


「……〜〜……〜…っ!」


いや、何となくそんな気はしてたんだけどね?真奈の事だからどうせなんか人質ならぬモノ質あたりでもとるんだろーなーとか、実は最初の辺りで軽く想像してはいたんだけどね?


あれだ、予測可能で回避不可能な現実って結構よくあるよな?今回のは多分、あんな感じだ。


「…………悪魔っすねぇ、ほんとに」


「私はあくまで人間だが?」


「こんなときにでもネタ引っ張ってくるんですか……」


「で、どうする?少年」


「分かりましたよ、行きますよ、行けばいいんでしょう?」


「お、さすが少年、物分かりがいいね。じゃ、私は君が出かけている間にこのUSBの中見でも拝見して、少年の趣味でも見せていただくとしようかな」


「見んな!」


そう噛みついてやったが、真奈はただ「怖いねぇ」なんて言っておどけた顔で肩をすくめるだけで、どうにも効果があるように思えない。


「ほら少年、そんな顔で睨んでないでとっとと行ったほうが少年の為になるんじゃないかな?」


「……ほんとに見ないでくださいよ?」


「はい分かったから、行った行った」


やっぱり信用ならないが、どっちみち美穂を探しに行かないことにはあのデータが美穂に閲覧されることは確定している。つまり、ここは大人しく出かけておいた方が身のためなのだろうが……なんだか、釈然としない。


「少年、そんなに睨むなって。……あ、そう言えば言い忘れていたけど、お嬢さんは多分今、ここの裏にあるちょっとした丘のどこかにいるはずだから、がんばって探しだしてね」


行ってらっしゃーい、と真奈が手を振ってきたが、あからさまにUSBを持つ手をこっちに見せびらかしてくるので、行ってきますも言わずに乱暴にドアを開け放ってやった。


「っつか、よく考えたら普通にあの人が行けばいい話だろー……」


家の廊下を歩いている間にもごもごと悪態をついてみたが、それでは何も状況は好転しない。  


なにせ、今俺の生命線はほぼ向こうに握られていると言っても過言ではないのだから、迂闊に動いたせいで真奈さんの手によりデータが美穂に閲覧される→俺の社会的地位の大暴落を招く、なんてことが起きてしまっては困る。


「……裏の丘、って言ってたよな」


そう呟いて後頭部をがりがり掻き、家のドアを開け放ってゆっくりと歩き出す。


確か美穂を探しに行った時もこんな感じの気温だった。まあ、空に出ている満天の星はあの時はなかったが。


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