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三月、幽霊少女と出会いました。  作者: 藍川ことき
一章 三月、幽霊少女と出会いました。
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今日も投稿します。

また二個かなあ


こないだいろいろ見てたらまえがきにこういうことを書いている人がいらっしゃったので、試しににまえがき使ってみました。

確かにあとがきを使うより情報が先に来る分、すっきりとしたような気がするんですが…どっちがいいんですかねえ……?


「すんません、俺がより一層訳わかんなくなったんですけど」


「ま、おいおい聞いていけばいいだけの話さ。大丈夫、時間ならたくさんあるから」


「それより、なんで俺はまだ生きてるんですか?俺自身が助かったなんだってのは散々言われてもう理解したんですけど、その理由自体はまだ聞けてないんですよ俺」


「そりゃ簡単な事さ少年、君はまだ生きていてしかるべき人間なんだよ。少年がまだ生きている理由にそれ以上でもそれ以下の物もないさ。少年が言っているのは、そこらを道行く人を捕まえてあなたはなぜ死んでいないの、って質問とほぼ同等の内容なんだぜ?そこは理解してもらいたいなぁ」


「そんなもんなんですかね……あ、じゃあ美穂は?真奈さんは、前に確かそもそも死んだ人間がこの世にとどまっていること自体が自然の摂理に反したことだ、って言ってましたよね?じゃあ、美穂は何で……」


「あのね、自分が何で生きてんのかって他人に質問してるヤツはただのイタい人で済むけど、目の前に当の本人がいるってのにあいつは何で生きてるんだ、って声を大にして詰めよるのは良くないと思うな」


「……ま、少年は何も知らないんだから、このことに関する情報に対して貪欲になるのもうなずけると言えばうなずけるけどね」


 視界の端の方で、真奈が肩をすくめるのが見えた。


「あ……悪ぃ、今のは少しマズかった」


「別にいいのよ、常習化さえしなければね」


「…………」


 美穂の静かな言葉が俺の心に重くのしかかってきて、この時ばかりはいっそけなしてもらった方が気が楽だった。


「……多分、お節介だったんじゃないの」


「…………え?それって一体どういう……」


「助かった理由。君のお節介で、多分私は今生きてるんだよ」


「確かに、とんだお節介だったかもな。本来は消えるべき人が、わざわざこの世に残されたんだからな」


「ほんとに、とんだお節介だったよ。でも、同時に私は君に感謝してもいるから。……まあ、なんていうか、ありがとう」


「……ああ」


それだけ言って、美穂はドアから出て行こうとした。


「……あ、そういえばもう一個だけ言ってないことがあったわ」

 だが、そのまま扉を出て行くかと思いきや、美穂は軽くこっちを見るとそう呟いた。

「君が私を助けるときに、君が昔の友達がいじめられてるのを見過ごして見殺しにした、って言ってたよね」

 美穂は多分、俺が中学の時に親友だったヤツを見殺しにした話のことを言っているのだろう。

「ああ、確かに言ったな」

「……私は、君はもう許されていいんだと思うよ。君は、私を救ってくれたから。その死んじゃった人の分まで救われて、自己満足しちゃっていいんじゃないかな、多分」

「……………」

 美穂は優しい目で俺にそれだけを告げると、今度こそドアを開け放って外に出て行こうとする。

 普段の俺ならば役得だと内心躍り上がっているところだが、――そんな仮定とは裏腹に今の俺の思考を占拠しているのは紛れもない背徳感だった。

「…………あー、ぇーとなぁ」

 だが、口の中でもごもごと呟いていたその言葉は当然というべきか、美穂には聞こえていなかったらしい。

「ちょっと待って、お嬢さん。少年も何か、お嬢さんに言いたいことがあるっぽいよ?」

 その真奈の言葉に、やっと美穂は足を止めてこちらを振り返った。

「…いや、やっぱ大丈」

「少年、何事もずるずると引きずるのはよろしくないというのはよく言うだろう?」

「ま、それもそう…なんですかねぇー」

「ほらさっさと言う言う」

「でも、言ったら美穂が…」

 美穂の方をちらっと見ると、美穂はため息を一つつくと、こう言った。

「別に、今更何を言われても怒ったりはしないわよ。どうせ私に何か隠し事してるんでしょうけど」

 ビクビクッ!と背筋に怖気が走る。

 なんという予測能力。これが俗に言う女のカンってやつか。まさか隠し事をしてることが今の会話だけでバレるとは。

「…いや、少年、今の言い方だったら多分澪でも普通に分かるぞ」

「そんなにあからさまな会話でしたかね…」

「………………」

 真奈がすんごく物言いたげな視線を寄越してくるが、これは気にしたら負けだ。この突き刺さるような視線、それも『なんかつっこめよ少年』とでも言いたげな視線がすごく痛いがそれは幻覚だ。幻想だ。

「…………」

「…………」うむ。何か考え事をするフリをして逃げてみてるけど、思ったよりこれは持ちそうにないな。


 というわけでいつぞやの疼く右腕でこの幻想をぶちこ「ねぇ、なんで二人して黙ってんの?」


重たい視線と沈黙に晒されていた俺を救い出したのは、間違っても疼く右腕ではなく、やや遠く離れた位置に立って首を傾げる美穂だった。


「…いや、俺は少々考え事をしていただけだ。それより美穂、真奈さんがすっっっごい何か言いたげな視線をさっきからこっちに寄越してくるんだけど、どうにかならない?」

「真奈、言いたいことがあるならはっきり言わないと、我慢は体の毒」

「そうかそうか、そんなに私がなんで少年の心が読めたか知りたいのか!仕方ない、そこまで知りたいというんなら教えてやろう。心して聞」

「「聞きたくないです」」

「くといい。聞いて驚けよ?ついに私は人の心へのハッキングに成功したんだよ!これも私の長年に及ぶ研究の成果だね。すごくないか!?すごいと思わないか!?さあ私を崇めろ!讃えろ!」

「まさかのガン無視!?」

「ああ、ついこの間に真奈さんがちょっとかっけぇとか思った俺がバカみたいだ…」

 ついでに現実だったら怖いことをさらっとほざいてたぞ今。

「だって我慢は体の毒なんだろ?ならばと思って全部ぶちまけてみただけだよ」

「話の腰を折ってまで会話を止めようとしたんですけど、止まる気配無かったですね」

「だって我慢は体の」

「もういいです」

「あ、勿論さっきの話は嘘」


嘘かよ。まあ、そんなものがあったら色々とマズイ気がするんだが。

「それはそうと、途中で話が脱線したっぽいよね。君は一体何を言おうとしたの?」

「本当に…怒らないんだな?」

「何をそんなに躊躇しているんだい、少年。大丈夫だよ、この家では男女問わず二言はないからね」

 会話をスルーされまくった真奈が、要らない後押しを手伝ってくる。

「そ。だからとっとと言っちゃいなさいよ」

「あー…」

「言わないようであれば私から説明してしまうよ、少年?」

「そ、それはやめて下さい」

「じゃあ言おうか」

「はいはい…」

 そこで一度、場に沈黙が流れた。だが、その沈黙には明らかに俺という方向性がある。

「俺、こういう沈黙って苦手なんだよなー…」

 痛々しい沈黙が嫌で、誰にも聞こえないようにそうポツリと呟いてみたが、なんだか二人の視線がさらに痛くなったように感じたので、観念して口を開いた。

「分かった、話すよ。確かに美穂の予想通りに隠し事だ。でも、俺は口下手だから、端的に言うからな」

「別にそれでもいいよ」

「まず、俺は今から一週間位前、つまりは遊園地に行った日だけど、あの日に、俺はお前をわざわざ追っかけて説得しに行ったはずだ」

「そうだけど、それがどうかしたの?」

「まあ口挟まずに聞いてろって。で、その時に俺はお前に俺の過去を話して説得したんだよな?」

「そうだけど、『よな?』ってなんで疑問形なの?」

「いや、別に些末事だから気にしなくていい。…で、重要なのはこっからだ。よく聞いとけよ」

「うん」

 しっかりと息を吸い、胸を張って宣言する。

「あの俺の過去なんだが、――…嘘だ」

「……………………………はぁあ?」

 たっぷりと十秒ほどの時間を経て、美穂から予想通りの反応が返ってくる。まあ、ここまでは予測済みだが。

「いや…ちょっと待って、だって君…あの…」

 美穂は口をパクパクしている。遊園地で乗った観覧車でも似たような反応をしていたところを見ると驚いた時の反応はこれ固定のようだ。それにしても、口をパクパクさせるって酸欠の魚かお前は。

「…え、でも、さっき、わたし、君に……わたし、だってさ……」

 もう支離滅裂で日本語が日本語になってない。何が言いたいんだお前は。

「えーと、待って待って、だから、うん、つまり、いややっぱり待って」

「待ってますがなにか」

「君はちょっと黙ってて!」

 ちょっとからかってみたところ、当然のごとくピシャリとはねつけられてしまった。

「つまり、君は、私が、私、わたわたわた」

「先生、日本語でお願いします」

 いつの間にやら、美穂の顔は真っ赤に紅潮しつつある。まあ、心当たりはあるのだが。

「……『つまり、君は私が君の過去を慮って投げかけたついさっきの言葉も、全くの無意味だったっていうの?』――とまあ、こんなもんか?」

「――★@&#…ヰ#―!?」

 美穂が何かをしきりに叫んでいるが、如何せん音域が高すぎるせいか、ほぼ全くと言っていいほど聞き取れない。多分俺の発言がビンゴだったからいろいろ抗議してるのかも。

「いや、それにしてもあんな柔和な表情の美穂は滅多に見れるもんじゃあなさそうだな。加えて言うと発言の方も。あれは少々ぐっとくるものがあったぜ。ま、そうするとさっきの美穂の発言もあながち無意味だったとも言えないんじゃないかなぁ?」

「――あぁああああああ!!!!」

 最っ高の決め顔で最後にそう告げてやると、美穂は怒声を上げながら踵を返し、ドアに突進してそのまま開け放って出て行こうとしたのだが、ドアにぶち当たってからドアが内側にしか開かないと気づいたらしく、乱暴にドアを引きはなってから出て行ってしまった。

「いやー少年もする事がえげつないねぇ。私にはとてもじゃないけど真似できないよ」

「あなたも言えた義理じゃあないですよね」

 いつの間に手にしていたのかは定かでないが、ハンディカム片手に満面の笑顔で一部始終を撮影されていたと思うと、一応加害者のひとりとはいえ美穂に若干の同情が湧いてくる。

「まさかあの深イイ!な話がウーン?に変わるような大どんでん返しを最後に用意していてくれていたとは、さすが少年。私が見込んだ人物なだけはある」

「あなたが何で俺の話のことを知ってるんですか」

「少年の服に高感度で超小型のGPSを兼ねた集音マイクをくっつけといたんだよ」

「さすが真奈さん、俺たちにできないことを平然とやってのけますね。別に痺れたり憧れたりはしませんが」

「いっそ崇め奉ってもいいんだよ?」


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