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三月、幽霊少女と出会いました。  作者: 藍川ことき
一章 三月、幽霊少女と出会いました。
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「うおぁ痛いなあおい!?」


「なぁにが『痛いな』よ。君ってばほんとに物忘れがひどいんだね…」


「あのすんません、起きがけ早々その差別と侮辱全開の視線を照射するのはやめていただけますかね……」


「はぁ。こんなんだから最近の若者は…」


「お前も十分若いぞ。なんか話し方が真奈さんっぽくなってきてないか?」


「え?ほんとに?ここに一週間も来てたから、口調移っちゃったのかな……」


「別に私は移されても全く問題ないけどねぇ」


「ほら、本人もこう言ってるし…え?」


「え?え?待って、真奈さん?あなたどこにいるの?」


会話に真奈がいきなり首を突っ込んできたことに関しては気にせず(というかあまり気にしているとロクな目に逢わない)、俺と美穂がその瞬間に驚いたのは、真奈の声が普通にしたにも関わらず、問題の真奈の姿がどこにも見当たらなかったからだ。


「じゃーん」


そういう声と同時に前方から飛来した何かによって、俺の視界に本日二回目の火花が散った。


「っ痛あぁ!」


俺は何が起こったのか理解もままならぬまま、ぶつかった何かの勢いを借りるようにして上半身が後ろに吹っ飛び、そのままベッドに打ち倒されてしまった。


「なんとびっくり!天井裏に実は下の階に下りるための梯子があって、真奈さんはそこから声を出していたのでした!え?声が自然に聞こえていたわけ?そこまでして知りたいと言うなら仕方ない教えてあげよう、実は何とびっくり部屋の隅々にスピーカーが仕込んであってそこから音声を流していたのでしたあ!」


「「聞いてない!!」」


俺と美穂の声が重なった。


「あはは、今までどおりに会話に自然に溶け込むだけではマンネリ化すると思ってね。急遽この装置を増設したんだ。幸いこの部屋は天井が高いからもし下で寝ている人が起き上がっていてもこの蓋は当たらない安心設計になっております!」


「いや……」「現にあたっている人がいるんですが!?」


「あれ?嘘だろ?実はドッキリをされたことにキレて私を嵌めて謝らせようとしているんだな?まったくもう、これだから最近の若者は……」


聴覚の片隅で美穂が「ほんとに似てたよ……」とうめいていたが、今はとりあえず無視してまた上体を起こす。


ジクジクと痛む鼻を押さえつけて起き上がり、先ほどの強襲の正体を確かめてみると、なるほど、確かに頭上にぶら下がる蓋は俺の頭に全然かすりもしない位置に設置されていた。


だが、その蓋から延びている何か…多分、上り下りするための梯子だと思うが、その梯子はだらしなく伸びていて、おそらく木製のそれが遠心力を伴って俺の顔面を強打したんだろう。それにしてもかなり痛かった。


「あの、梯子伸び切っちゃってる。これが当たったんじゃないかな?」


「あ、ほんとだ。うーん、これは再設計の必要ありかな?…いや、違うな。ここのねじが緩んでいたのか。よかったよかった、これでまだ使えそうだね」


「こんなもんベッドの上に増設すんな!」


真奈はその梯子伝いに降りてきて、ベッドの上に降り立つとその梯子をするすると格納していく。


「で、少年には現状の説明が必要だよね?」


「ええ、まあ」


「じゃあ端的に言おう。今日の私は黒だ」


「ちょっと黙れ」


「ああちなみに上は黒だよ。どうだいどうだいこの組み合わせ。扇情的だろ?」


「あと十歳くらい若ければ」


「ちなみにお嬢さんは確かクマさんがプリントされていたかな」


「そうですか」


「……な、なに適当な事いってんの!?」


真奈の一言で、我関せずと一歩引いた位置で立っていた美穂も、この発言は看過し得るものではなかったらしく、慌てて会話に加わって来た。


「上の方は……まあ、察してやれ」


「……分かりました。要は現実って残酷なんだってことが言いたいんですよね」


「うあぁぁぁぁあああ!お前ら全員殺してやるぅ!!」


「まったくもってキレ症ですね」


「ほんとだな、少年」


視線を合わせ、せーの、と声を合わせて、次の言葉をつぐ。


「「これだから最近の若者は…」」


直後に美穂のゲンコツが降って来たのは言うまでもない。






「で、ちゃんとした現状の説明だったかな」


「こんどはふざけないで下さいよ」


「善処する」


「ふざけたらブン殴るから」


俺は着替えを済ませ、リビングに通されて小さめのテーブルでやや遅めの夕食を取っていた。


そこには美穂も同席していたが、美穂の方は既に済ませているらしく、いかにも手もちぶたさといった感じでいすに座っていた。みた感じややご機嫌斜めなのは気のせいだ。……と信じておこう。


「……」


「……」


しばらく場には俺が夕食としてあてがわれたサンドイッチをもぎゅもぎゅと咀嚼する音と、いつの間に持ち出して来たのか、真奈が使っているパソコンのキーボードを打つ音だけが流れた。


「……」


「……」


「……なんか喋んなさいよ」


場の空気に耐えられなくなったのか、美穂が一人ぼそっと呟いたのが聞こえたが、あいにく俺は現在進行形で栄養摂取にいそしんでいるので話せないし、真奈に至っては最早話をする気がないのか、高価そうなヘッドフォンを頭にはめて何かを聴いているようだ。っつかアンタだよな?現状の説明するって言ったのは。


「……真奈さん、なんか言って下さいよ」


「……」


「真奈、黙っているのは良くないよ」


「……」


「真奈さん、言い出しっぺのくせに会話で自分だけ率先して放置ゲーしないでください」


「……」


「真奈、いい加減なんとか言って」


「そうですよ。RPGのレベリングだって、モンスターを倒すという単調極まりない作業を続けているうちにだんだん苦痛が快感にすり替わるその過程が面白いのであって、そもそも作業自体にすら関わろうとしない放置ゲーというのは邪道極まりn」「真奈、コイツがうるさいから何とかして」


「……」


会話自体が全く耳に入ってないのか、そのふりをしているだけなのか、真奈は依然黙ったままパソコンに向き合っている。


と、そこで美穂の短い堪忍袋に限界が来たのか、「ヘッドフォン引っぺがしてやる」と物騒なことを呟いて席を立ち、大股気味に真奈の方へと近寄っていった。


「真奈、いい加減に――」


「――お?どうしたんだいお嬢さん、いきなり立ち上がって。トイレならあっちの方だとこの間説明をしたよね?」


美穂が近寄って来たのに気づき、ヘッドフォンを外した真奈がすっとぼけた発言をした瞬間、ブチン!と何かがキレるような音がした。


「真ぁ奈あ〜………」


美穂の言葉に込められた怒気はその臨界点が近いことを如実に示しており、直接表情の読みとれない後ろからも美穂の表情筋の引きつり具合が見て取れた。


「――はいはい、状況説明だったね」


「分かってんなら最初っからやっとけよ!」


「じゃあ少年、まずは話をする前に私に心よりの感謝をささげて欲しいものだね」


「は?ついに頭までおかしくなったんですか真奈さん」


「いやいや、別段私は気がふれたとか、トチ狂ったとか、そういうわけでもないから。少年は気を失ってから後の事、何も知らないだろ?」


「いやまあ、そりゃまだ知らないですけど……」


「じゃあ教えてあげよう。少年の意識が途切れたとき、少年の体は…というか、自分ですでに分かっていたかもしれないが、もう少年の体の7割方はお嬢さんに吸収されていたんだよ」


「そーなんですか。確かにそんな感じもしましたけど」


「あんまり驚かないんだね」


「逆に思いっきり驚いてもうざったいだけだと思いますけどね」


「それもそうか。でも、私は驚いてもらっても別にかまわないんだけどね……ちなみに少年、結局最後は私があの手この手でとっても頑張って少年を助けてあげたんだぜ!知らなかったろ?どうだ、すごいだろう少年」


「え?結局最後は真奈さんが助けてくれたんですか?てっきりあのシチュエーション的に美穂が助けてくれたのかと思ってたんですけどね」


「違うわよ!」


美穂がそこで口を挟んできた。


「助けたのは私!この人は何もせずに傍観してただけ!」


「ひどい言われようだねぇ。私はちゃんとお嬢さんに色々と手段をレクチャーしてあげたし、体がきちんと元に戻るまでケアをしていたのは私だよ?」


「すんません、俺全く理解が追いついてないんですが…」


「そうかそうか。じゃお嬢さん、無知な少年に全てを伝えてあげるといいよ」


「分かったわよ…って、全部ってことはまさか、あれも言うの?」


「もちろん。何から何までだからね」


そう真奈が告げるとなぜか美穂は顔を真っ赤にして、いきなり慌て始めた。


「い、いやよ、それは私、パス!」


「じゃあ、私が話していいのかな?」


「そ、それもだめぇ!」


「そういうわけだ少年、私から事情を話すのはどうやら無理なようだ。仕方ない、あとでじっくりお嬢さんから聞いてくれ」


「あぅあ……」


美穂は顔を真っ赤にしたまま、椅子から立ち上がってフラフラと部屋の扉に向かい、出て行こうとする。


書き終わってしばらくしたら別のをかくべきかそれとも今のこれの続きを書くべきか悩んでます( ・ω・)?


でもまずはこれを手直ししなくちゃならないことに気が付いたw

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