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三月、幽霊少女と出会いました。  作者: 藍川ことき
一章 三月、幽霊少女と出会いました。
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「あら?私が何かしたかな?」

 やはり対照的な、天然か挑発しているのかよく分からない態度をとる真奈。

「とぼけないで!!こんな……もの……」

「物侘びしい?」

「そう、それ!わざわざこんな物侘びしい店に呼び出すなんて、もう少しマシな場所は選べなかったの!?」

 抗議に妥当な言葉が見つからずに抗議をしている相手に助け舟を出されてなお、衰えることを知らない会話の勢いには感心するところがある……のかどうかはさておき、

「…美穂、声デカい」

 今ので間違いなく厨房に聞こえただろう。

「――――ッ!」

 数秒間かけて、自分の犯した過ちに気づいた美穂は顔を真っ赤に赤面させたかと思うと、さらに数秒間の間フリーズして、次の瞬間には机に腕枕を置いて突っ伏つつも、微妙に視界を確保して厨房を伺うという傍目から見たら怪しさ100パーセントな行動に出た。

「いや、それやってても普通に美穂がやったってバレるっしょ。テンパってんのは分かるけど」

「しっ、仕方ないのよっ。つべこべ言うなら、あああなたが見てきたら!?」

 羞恥と恐怖で完全にテンパって、呂律が回らなくなっていた。

「…丁重にお断りさせてもらう」

「い、意地悪ぅ!!」

 美穂から悲鳴が上がった。まあ、人に散々命令して、いい気になってたから天罰が下ったんじゃあないすかね。多分。…え?いや、別に俺は美穂のヤツめいい気味だな天罰ザマアとかゼンゼン思ってないデスヨ?本当ダヨ?

「いや、お嬢さん、別段心配する必要はなさそうだよ」

「え?」

「…へ?」

 あれだけデカい声で#店に対する酷評#(ホンネ)を叫んだにも関わらず、心配する必要はなさそうだとはどういうことだろう。

「少年たちが来る少し前、この店はあらかた回ってみた。券売機には電気が通っておらず、厨房には人の気配がなく、かろうじて自販機は使えるかどうかというような状況だった。つまりは食堂は今や昔の話、現在は休憩所として使われている状態だろうな」

「……………は?」

「つまり、この店は食堂なのに廃れちゃってるとかっていうワケじゃなくて、普通に普通な休憩所って感じなの?」

 思考が瞬間的にフリーズした俺に変わり、美穂が俺の発した一言に内包されていた疑問をぶつけてくれた。

「ん?逆にそうじゃないと思ってたのかい?」

「いや、だって…」

「そりゃ、携帯に送られてきたメールの文面を見たり、『昼飯を奢るよ』とか言われたら、勘違いしますよ」

「うーん、そんなものかなぁ…」

 そう言って首をひねる真奈のすぐそばでは、いらない心配から起こした行動により精神を著しく磨耗させた美穂が、未だに火照りの引かない顔を隠すようにしてさっきと同じように机に突っ伏して謎の呻き声をあげていた。

「ま、まあ、ひとまず昼食にしよう。腹が減ってはなんとやら、というだろう?」

 真奈にしては珍しく、少し同様した様子で提案してきた。

「だってさ、美穂」

「―ー…―ぅえ?」

 昼食、という言葉を過敏に察知した美穂が、さながらバネ仕掛けよろしく上体を跳ね起こし疑問符混じりに反応を返してきた。

「メシだ、美穂」

「食べる」

 即答だった。



 空には星が瞬いていた。隣に立つ一人の客が煙草を吸っていて、その紫煙が立ち上って空に吸い込まれていく。

 はい、もう夜ですよ?

 …え?食事シーン?

 いやさ、オンナノコがトンカツ弁当を黙々と胃に詰め込んでいるのは、見てて夢が無いじゃん?

 メシ食ったら食ったで、絶叫系に始まり、まさかのお化け屋敷(大丈夫だと声を大にして叫んでいた割には美穂も絶叫していた)やコーヒーカップ(回転数はお察し下さい)などを連れまわされ、現在は疲労困憊もいいところだ。

 で、さすがに身体的にも精神的にも限界を覚えた俺が美穂にそれを訴えたことにより、今は休息の意味合いも兼ねて観覧車の列に並んでいる。

「…にしても、何時間あいつに連れ回されてたんだ俺?我ながらよく耐えられたな……」

「…?なんか言った?」

「なんでもないっすよ」

 試しにしらばっくれてみた。

 ちなみに、口調に関する命令は既に解除済みだ。美穂曰く『飽きた』とのこと。飽きるなら最初っからやるなよ。

「でも君、今日1日で絶叫系にだいぶ耐性ついたんじゃない?途中からあんまり悲鳴あがんなくなってきたし」

「いや、それは何つーか、途中から疲れて悲鳴上げる気力もなくなってたんだわ」

「なーんだ、若干期待してたのにな」

 そう言って美穂は意地悪そうに笑った。

 しばらくして、俺たちの番が巡ってきて、係員に案内されてゴンドラに乗り込んだ。

「あー……」

 ドアが閉まり、中にある椅子に腰掛けると思わずため息が漏れた。

「何よ、そんなジジくさいため息ついて」

「いや、マジで疲れたんだよ今日。どっかの誰かさんのせいで絶叫系マシン連れ回されて、十歳くらい一気に歳とった気がするわ」

「後半はちゃんと普通のアトラクションもまわったじゃない」

「ああ、そう言えばお化け屋敷で絶叫してたもんなお前。あんときは俺よりビビってたんじゃねぇの?」

「なっ―…――!?」

 みるみるうちに美穂の顔が赤くなっていく。

 美穂はパクパクと魚みたいに口を二、三度開けたり閉じたりすることを繰り返し、数秒間黙った後になんとか言葉を発することができた。

「な、なんで君が私が…その…君より絶叫してたとかビビってたとか、分かったわけ?君もかなり、さ、叫んでたじゃない!」

「あ、冗談冗談。悪ぃなからかっちまって。分かるわけないだろ、そんなもん。俺も普通に怖かったしなぁ。いやーまさか『お化け屋敷なんか敵じゃないわよ。むしろあなたが心配ね』なんて言ってた美穂がお化け屋敷ごときでビビって絶叫してるわけないもんなぁ」

「〜…〜〜ー〜…〜っ!!!!!」

 からかわれていたことに気づかず、自ら墓穴を掘って棺桶まで用意してしまったことを自覚した美穂の顔が、さらに赤くなっていく。


その目つきがヤケに怖かったので、何かアクションでも起こすのでは無かろうかと身構えていたが、幸いと言うべきか美穂はそのままガクッとうなだれるだけにとどまった。

「…………あのー」

「…………………」

 試しに声をかけてみたが、思った通り返事はない。

「……………もしもーし」

「…………………………」

 反応が無い。ただの美穂のようだ。

 …え?デジャヴ?既視感?ナニソレウマイノ?

「………お」

「聞こえてるわよ」

「やっと反応したな」

「あれだけ不自然な声のかけかたをされたら、反応してあげなきゃ可哀想じゃない」

 ゆっくりと顔を上げた美穂の顔には、まだ顔を赤くした余韻で頬がほんのり赤かったが、口調は普段の憎まれ口に戻っていた。

「…………」

「…………」

 だが、そのあとに言葉が続かず、さりとて美穂から目を背けて夜景を見るのも気まずいためにできず、結果として俺と美穂とでしばらく互いに見つめ合うような構図になってしまった。

というか、そもそも今俺たちが乗っているのは観覧車というカップルが乗り込んだら降りてくるまでに120パーセントの確率で何かアクションを起こしてくるという全自動恋愛進展フラグ製造機である。実は俺と美穂は他人から見たら普通にカップルに見えていて、夜の遊園地で観覧車行くなんてキャーナニスルンダローとか思われてたりするのだろうか。

 などと悶々と考え込んでしまった結果、途中からこっちまでだんだん顔が赤くなってきている錯覚を覚え、結局気づいたら外の夜景に目をやっていた。あ、満月が出てる、綺麗だなー。って。

「いや…その…観覧車から見える夜景も、いいもんだな……」

「…それ夜景じゃなくて遊園地のライトアップだと思うよ。ここ広いし」

 今度こそ錯覚ではなく顔が赤くなるのを知覚した。…確かに良く考えてみれば夜の町であんなにどでかい看板やら色とりどりの光やらは無いよな、うん。でももう少しぐらい歯に絹着せて物を言っていただきたいなぁ…とか考えているのが伝わったのか伝わっていないのか(おそらく後者)、ついでのように小さい声で多分ね、と付け加えてはくれたが、気遣いのつもりなのだろうが寧ろ情けをかけられたことに対する気恥ずかしさによってさらに俺の顔の表面温度上昇に後押しをする結果となってしまった。

「い、いいんだよ、夜景って夜の景色って意味だし」

「……………まあ、それもそうだね」

 しどろもどろになり、どもりかけながらも話を続けようとする。頑張れ俺。だが、頭の中で渦巻いていた『今の回答までの間は何!?』『そしてそこで逡巡してまで生優しく接するならもういっそブった斬っちゃって下さい!』『惨めなまま放置されるぐらいなら虐められてる方がまだましです!!』などなど途中からは一歩間違えたらただの変態に墜ちかねないような言葉が喉元まで来たので、さらに地雷を踏み抜く可能性を考慮した上でギブミーデバンを叫ぶ彼らに事情を伝えて喉の奥へ丁重に送り返した。

「………………」

「………………」

『―さあ会話は未だに膠着状態を維持しております!この#戦闘#(デート)を桜原選手はどう切り抜けるのか!?』

 気まずく静かな状況とは裏腹に、頭の中ではアツいBGMと実況が垂れ流しになっていた。

 てか待て。何がデートだ。

 こんなぎこちなさMAXでお互い顔すら見れず、四人がけのシートでそれぞれ対角線上のいちばん離れた所同士で座る男女って、ヲ友達以上恋人以下ってやつだろ。勝手に決めんな脳内MC。いや、実況だからどっちかっていうとブロードキャストか?まあ、どうでもいいことなんだが。

「…ライトアップ、たしかに綺麗だね」

「………?」

 沈黙を破っていきなり話し出した美穂に疑問を覚え、俺は思わず前を向いていた。

「ほら、会話の種そっちに放ってあげたんだから。『ライトアップ、たしかに綺麗だね』ってさ。つながないとだめじゃん。言葉のキャッチボールって大事だよ?」

「…いきなりしゃべり出したと思ったら、そういうことかよ」

「はい会話会話」

「そんないきなり言われてもさあ…」

「まさかと思うけど、実は話すこと何も用意してませんでしたー、なんて言わないよね?」

「うっ………」

「女の子とお出かけしに来たのに、会話のことに関して何も用意してないってどういうこと〜?」


こんちゃ^^アキでっす


また投稿しますよ

もうここら辺で折り返し地点ですかねえ

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