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魔法学の先生  作者: 市村
第一章 幼少編
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5. 魔力の真実

 この二日間で1400PV、ユニーク340になってました。皆様本当にありがとうございます。

 嬉しいので更新予定をちょっとだけ早めました(この話は14日の0時に投稿するつもりでした)。

 でもこれって多いのか少ないのか、比率的に良いのか悪いのかわからないんですけど、どうなんでしょう。


 

「ソフィーさん、バルドくんちょっと借りますね」

「え? はい、どうぞ……」


 いきなり何を、という感じだ。

 だが突然立ち上がったミレイさんは、ろくな説明もなしに俺の手を取って歩き出す。

 ちょっと腕を(ひね)っているが、まだ身体が柔らかいからか痛みはない。

 それ以上に、ミレイさんの切羽詰まったような行動が怖い。


 ミレイさんに連れられて外に出ると、「ここに立ってて」と言われたのでまっすぐ立つ。

 ミレイさんは三歩ほど道なりに歩くと、こちらを向いてピースをした。


「これ、何本に見える?」

「……にほん」


 ピースじゃないのか。

 そんな俺の感想なんて知るわけもなく、ミレイさんはさらに三歩ほど後ずさると、指を一本立てた。


「これは?」

「いっぽん」



 それを何度かくり返すと、ミレイさんとの距離は二十メートルくらい離れていた。

 転生して、乱視・ド・近眼の前世とは比べものにならないくらい視力が良くなったとはいえ、いくらなんでもそろそろキツい。


「これはー?」

「……わかんなーい!」


 俺の返事を聞くと、遠くにいるミレイさんは息を吐き出すような素振りをして、こちらへ戻って来た。

 さっきよりは怖くなくなったが、まだ複雑な表情をしている。

 何か言いたいことがあるような、そんな顔をして俺の手を取ると、ミレイさんは診察室へ戻っていった。




「ミレイさん……?」

「ああ、すみません。取り乱してしまって」


 部屋に戻ると、テレサはほとんど泣き止んでいた。

 まだちょっとぐずっているが、すぐに落ち着くだろう。


 バルドくんのことなんですが、と前置きしてミレイさんは話し始めた。


「バルドくんはおそらく、魔力過敏症です」

「えっ」


 今度は母が取り乱す。

 なんだ? 魔力過敏症って?


「今までに、何か大けがをしたり、頭を打ったことは?」

「……いえ、特にそんなことは……」


 そりゃあね。安全には気をつかって生きてきましたから。

 どんな傷がどんな病気に繋がるのか、前世の常識が異世界で通じるとは思っていない。

 だから初めての一人歩きも、母の目の前で試したくらいだ。

 俺の地味な気遣いに感謝してもいいんじゃないかってくらい。


「バルドは、ちゃんと見えているんですか?」

「ええ、よく見えています。でも、それにしては見えすぎているようにも……」


 しかし、このまま取り残されるわけにはいかない。

 なんせ自分自身に関わることなのだから。

 二人からはどう見ても、よくない何かとしか感じられない。


「なんのはなしー?」

「あっ、ああバルドくん。そうね、君にも話しておくべきよね」


 そう言って、ミレイさんはこちらに向き直る。


「今までに、ピカピカ光る何かを見たこと、ある?」


 魔力のことだろうか。

 最近では、魔術が行使されるとき以外は全くといっていいほど見なくなった。


「ときどき」

「それは魔力って言ってね、普通の人には見えないの」


 ミレイさんは一通り説明してくれた。

 曰く、時々見えてしまう人が産まれてくること。

 曰く、早いうちに訓練して治さないと目が悪くなること。

 曰く、頭を打ったり大怪我をしても人によっては発現すること。

 曰く、治っても一生付き合っていく必要があること。

 曰く、最悪の場合失明してしまうこと。

 曰く、俺の場合は極々軽度だから助かったと考えられること。


 その他、これまた三才児に説明してもわかんねえよってくらい難しい話もしてくれた。

 正式名称が「活性化魔力元素視覚過敏症」という、やたら長い名前だとかね。


「テレサは大丈夫なんですか?」

「そうですね……」


 そう言ってミレイさんは指先に火を灯す。テレサの目の前で。

 テレサはちょっとびっくりしたようだが、目を瞑ったりはしなかった。

 それどころか興味津々で、目を大きく見開いたくらいだ。

 ……もっと早く泣き止んだんじゃないの?


「大丈夫みたいですね」

「良かった……」


 母の様子を見る限り、よほど人生に響く障害(病気?)だったらしい。

 今となっては笑い話だが、生後一ヶ月の俺が知っていたら気が気じゃなかっただろう。

 訓練しておいて良かったよ、ほんと。

 しかし、障害だったとは。俺の予想も案外当たらないもんだね。


「でも、バルドくんは逸材かもしれません」

「え、え? どういうことですか?」


 それは本当に。

 逸材とか、いきなり良い意味の言葉が出てきてびっくりだ。

 どういうことですか?


「その、生まれつきだと重大な障害なんですが、大人になってから修行して身につけようとする人もいるんです」


 はあ。それは、なんで?

 見ると、母も同じ顔をしていた。


「魔力が見えるというのは、魔術師や魔法学者としては有利な条件なので……。事実、教科書に載るような成果を出した人もいますし、私の学園でも教授が修行の最中でした」


 それはつまり……その。


「バルドくんの場合修行しなくても身についているわけですし、その割に普通の視力も悪くありません。普通はもっと目が悪くてもおかしくないんですが」


 俺TUEEEEE伝説の始まりってこと?

 キタコレ! うははは……と、いかんいかん。ここで笑ったりしたら子供らしくないじゃないか。

 俺は努めて「何言ってるの? わかんなーい」な感じに振る舞う。

 ばれてないよね?


「バルドはどうするべきですか?」

「私が進言してもいいなら……このまま魔術と文字を覚えさせて、近くの学園に通わせるのが良いと思います」

「学園、ですか……」

「はい、確かにお金はかかりますけど……」


 ふむ、お金か。

 神妙な顔をしている二人には悪いが、俺はその未来に賭けると決めた。今決めた。

 そのためにはお金が必要、と。

 わかりやすい目標でいいじゃないか。


 前世の技術を持ってくるか?

 いや、そういうのはだいたい後で痛い目を見るんだ。

 変な商人に目を付けられて、悪用されるとかな。

 そもそもこっちでは何が既存の技術で、何が未来の技術なのかもわかっていない。

 まずはそのあたりから調べるのが得策かな。



 ふっふっふ、俺の第二の人生盛り上がって参りました!

 

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