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吸血神姫《ヴァンパイア・プリンセス》  作者: 瓜姫 須臾
序章 「目覚める」少女・月島礼羽
9/22

第9話 少年の秘密と少女の決意

前回が長かったので、ちょっと短めです。


2015/2/23 「・・・」から「…」に修正しました。

「俺はな、吸血鬼の半妖である母さんと龍を統べる神である光龍の父さんとの間に生まれたんだ」


まさかの偉人も人間じゃありませんでした。



「えっ?

 ええぇぇっ?!

 それじゃあ…………」


「そう。

 俺には人間の血が4分の1しか流れていない。

 人間じゃねぇ血の方が濃いんだ」


礼羽はまさかのカミングアウトを受け、自分より凄かった偉人に驚いた。


「そもそも俺には吸血鬼の血も4分の1流れてるからそう簡単には死なねぇ。

 なんせ俺は、お前のお父さんとともに【吸血鬼の双王】なんて呼ばれ、敬われてる沙々羅婆ちゃんの血を引いてるからな」



「そうなんだ……。

 というか私のお父さんってそっちの世界じゃ凄い人だったのね」


いやむしろ偉人より自分の父の方に驚いていた礼羽。



「そりゃ、吸血鬼にたったのふたりしかいない王の片割れだ。

 それ相応の絶大なる力も、王たる器も、知恵も持っているんだ」



そんな偉人の言葉に礼羽は「実の娘の自分よりも偉人の方が詳しいなんて……」とか考えていた。



「その王の力の正当なる後継者はふたり……

 その片割れが礼羽……お前なんだよ」



なのでいきなりそんなことを言われても実感が湧かなかった。



「へ?」



間抜けな声を上げてしまう。




「まぁ、吸血鬼のお姫様ってところだな」



「えぇぇ?!」



自分自身のことでさえ今日は驚きっぱなしである。



「まぁ、それを言えば俺も似たようなもんだけどな。

 俺の父さんの力全てを継げるのは俺だけだからな」



偉人は偉人でさらっと凄いことを言っている。




龍を統べる神の力を継げるなんて。



「まぁ、母さんの教育方針で一応人間として高校とか大学までは生活するってことになったんだけど」



「っていうかつまり、あの……

 星羅さんと龍皇さんが人間じゃないってこと?!」



今更ながらようやく頭が追いつき、つい叫んでしまう礼羽。


「そっ、そうだよ。

 ………………やっぱ、俺みたいな奴と一緒にいるのは気味悪いか?」



そう言って少し悲しげに、寂しげな顔をする偉人。


でも―――


「そんな訳ないでしょ!?

 何言ってるのよっ!

 このバカ!

 だって…………私だって……変わんないでしょ、イクトと」



最後は尻すぼみになってしまったものの、その言葉で礼羽の気持ちはちゃんと偉人に伝わったらしい。



小さく微笑んで呟く。



「…………ありがとな。

 あのよ、それで……お前に渡したい物があるんだ」



なんて急に改まった様子の偉人。



その様子に礼羽もつい姿勢を正してしまう。



「これを…………受け取ってくれないか?

 その…………俺の気持ちだっ!」



そう言って、真っ赤になった顔を俯かせながら何かを礼羽へと押しつけてくる。



「これは…………?

 首飾り……?」



その手に握られていたのはとても綺麗な宝石がワンポイントチャームとしてあしらわれた首飾りだった。



「その……

 俺はお、お前のことが…………すっ、好きなんだよっ!」



「えっ」



礼羽は困惑したような表情を浮かべる。




だが偉人は、とりあえず踏み出してしまったのだからちゃんと全ての想いを告げようと決意して言葉を続ける。



「その、ずっと前から好きだったんだ。

 いつからだったかなんてわかんねぇ。

 最近はそろそろ告白しようって思ってたんだ。

 丁度今年は17歳になって龍としては成人を迎えたから…………

 だから今日、学校帰りにでも渡して伝えようと思ってたんだ」


「……の?

 わた……ん…で……?」



礼羽が呟く。



でも、声が小さい上に震えていて聞き取れない。




偉人としては心臓のドキドキが止まらない。




答えはどちらなのか。



冷や汗がどっと噴き出してくる。



「私なんかで……本当にいいの?」



礼羽が言った。



不安そうな顔を上げて偉人を見つめる。



それに偉人は、



「もちろんだ!

 お前以外に考えられないんだ!

 お前ならきっと、俺と同じペースで歩いてくれるから………………

 だから、お前じゃなきゃダメなんだっ!!

 俺と………………将来を前提として付き合って下さいっ!!」



もう一押しとばかりに叫んだ言葉とともに手を突き出して頭を下げる。



礼羽のしたことと正体を知ってなお、赦すどころか嬉しいとまで言ってくれた偉人。



ずっと周りに隠してきた自信の秘密を思い切って話してくれた偉人。



礼羽のことを身を挺して守ってくれた偉人。




こんなにも礼羽のことを強く想ってくれている。




そんな偉人からの告白への返事など、礼羽の中ではすでに決まっていた。



「………………よろしくお願いします」



下へ俯き、顔を赤くしながら出された手をとって応える礼羽。




その返事を聞いて、



「ほっ……

 本当かっ?!

 ありがとう礼羽!!」



と大声で叫び、嬉々として礼羽を抱きしめる偉人。



「…………もうっ、すぐ調子よくなるんだから」


そう顔をしかめながら呟いた礼羽の目許が嬉しげだったのは、もし誰かが見ていたとしたら誰がどう見ても丸分かりだった。



礼羽も偉人のことはずっと好きだった。



だから素直になれないし、ほかの女子を見ている偉人にはイライラしていた。



偉人は顔も格好いいし、頭もいいし、スポーツだってできる。



性格がこんなでなければもっとモテてもいいはずな正真正銘のイケメンだ。



ずっと幼い頃から一緒に過ごしてきた礼羽にとって、偉人はなくてはならない存在になっていた。



そんな偉人がいつか離れてしまうのではないかと少し怖くて、最近は朝もわざと早く家を出て登校する時間をずらそうとしていたくらいに。



想いを告げようと考えたことは何回もある。


でもその度に断られたらどうしようって、この関係が壊れたらいやだなって。



恐怖に負けて決意できなくて、先延ばししていた。




あり得ないと思ってたけど、偉人から告白されないかななんて夢に見たこともあった。



その度に現実はそんな甘くないと自分を叱り、決意できない自分に嫌気がさした。




でもこうして偉人から一緒にいてほしいと、付き合ってくれと言ってくれた。


この愛の告白を礼羽が蹴ることなど、そもそもあり得ない話だった。




私は、偉人にいつまでもついていく。




そう心の中で強く決意した。



例え、周りの皆が偉人の敵になったとしても。



私だけは偉人の味方であり続けよう。



そんな想いを胸に秘めて、




「…………大好きだよ、偉人」



結局礼羽はそれだけ呟き、素直に偉人との抱擁を満喫したのだった。

実は礼羽よりも偉人の方が段違いで凄かった!


まあやっぱり強くてかっこいい男の子には憧れますよね。



次回は、しばらくほったらかしてた他の方々の様子を入れたいです。

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