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吸血神姫《ヴァンパイア・プリンセス》  作者: 瓜姫 須臾
序章 「目覚める」少女・月島礼羽
6/22

第6話 異変と邂逅

ランキングタグを目次ページ下に設置しました。

よろしければ投票して下さい!


今回は今までよりも少し長めです。


2015/2/23 「・・・」を「……」に修正しました。

「来月から特殊なカリキュラムを取り入れないかという提案が政府からこの学校に来ているんだけど…………

 もちろん拒否もできなくはない。

 だから、みんなの賛否を聞きたいんだ。

 今からの説明が終わったら、みんなに賛成か反対かのどちらかに投票してもらうからね」


瑠が言い終わるのを確かめ、夏樹が口を開く。


「では、私から説明させていただきます。

 我が校に先日、政府より『職務能力開発プログラム』をモデル校として受け入れてくれないかという依頼がありました。

 これは政府が内密に行ってきた『人材育成事業』の一環として最近考え出された物で、生徒の向いている分野を義務教育期間で見極め、高校在学中から分野ごとに第一線で活躍されているプロに指導を受けて大学卒業時には就職先でも通用する能力を身につけることを目指します。

 小中学校から大学までの教育機関、企業も一丸となって協力し、昨今の就職難民増加や少子高齢化による労働力低下を防ぎ、経済再生の活力を養う目的です。

 政府としては、幼等部から大学部まで揃っている我が校をモデル校として先行導入し、様子を見て他校にも広げていきたいそうです」


これは今朝臨時召集されたときに説明された件。


瑠的には受け入れるべきだと言うが、生徒の反応は…………


「職務能力開発プログラムか……」


「なんか面白そうだよな」


「でも、今でさえキツキツなのにまだ授業増えるってわけ?」


「俺らもう高校生だけど適性の見分けどうするんだろうか……?」



と、三者三様の反応をしている。



そこで、


「ボクとしては、この国の……そして君達の未来を考えたら、受け入れるべきだと思うけどね」


と瑠は言う。


その発言がどうやら生徒の大半の気持ちを動かしたようだ。


「では、これから採決を採ります。

 賛成か反対に投票して下さい。

 なお、この開票結果は明後日の昼に校内放送します」



その後も滞りなく総会は行われていった。



そして総会も終盤。



そろそろ総会と併せて行われることになっている「新入生部活説明」に移ろうかという時。



パアァァァァンッ!



突然体育館に銃声が響き渡る。



騒然となる生徒達。


教師でさえ突然のことすぎて唖然としている。



銃声の発生源に周囲が気づき始めた時、


「…………“命に従いて”」


そうボソッと呟いたのは黒い拳銃を天井に向けていたひとりの教師。


規則に厳しいことで有名な生徒指導の教師。




「…………月島礼羽を……」



礼羽の名を口にしたその顔には、普段のこの教師の顔ではなかった。


ただ虚ろな瞳と空虚な表情のみ。


まるで何かに操られているかのような。



周りがこの光景に呆気にとられているうちに、拳銃を所持した教師はステージ上の礼羽に拳銃を向ける。



そして、


「………………殺す」



パアァァァンッ!


「殺す」の言葉と同時に発砲する。


「い、いやあぁぁぁぁあっ!!」


「た、たすけてくれえぇぇぇぇぇっ!」


発砲と同時に生徒達の悲鳴が一気に上がり始める。



しかもその教師が発砲するのを待っていたかのように、同時に体育館の照明が全て落ちる。



体育館の窓は全て黒い遮光性のカーテンで閉めきられている。


一筋の光も射さない暗闇。


そんな暗闇では多くの教師と生徒は冷静さを保てなかったようだ。


悲鳴がだんだん大きくなる。


誰も照明が突然消えてしまったために礼羽がどうなったのかを見ていない。


しかしそれどころではなく、大半の者は頭からすっぽり抜けてしまっている様子。


周囲は暗闇。


その上、闇に紛れてこの体育館のどこかに拳銃所持した教師がいる。



次は自分がターゲットになるかもしれない。


ほとんどの者がそんな恐怖心で支配されていた。





パリンッ!





そんな教師や生徒達を煽るように、体育館の窓ガラスが割れる音がする。


余計に悲鳴や喚く声が大きさを増す。


だが、こんな状況でも冷静さを保っている一握りの教師と生徒は、拳銃を所持した教師が窓ガラスを割って体育館の外へと逃げていくのをしっかりと見逃さなかった。



******



そのころ、撃たれたはずの礼羽はどうなっているのか。



(撃たれた弾が異常に遅く見えた。

 しかも………………)



実は無事だった。



礼羽は握っていた手を開く。


そこには自分を狙って放たれた銃弾があった。


(これを掴み取りするなんて、どうしちゃったのよ私?!

 明らかにこれ異常よね?!

 いくら昔から運動神経が良かったっていってもこんなに人外じゃないわよ!)



ひとりその異常さに押し問答していた。



照明が落ちてしまったので誰も見ていなかったが、礼羽は自分に向かってくる銃弾を見切り、反射的に素手で掴み取りしていた。



しかもその掌さえ無傷。


昔から運動神経が良かった礼羽だが、こんな経験は初めてでありどうしていいのか分からなくなっていた。


そして、


(でも、とりあえずあの教師はほっとけないし。

 それに何か知ってるかもしれない。

 なら…………)


とりあえず自分の体については棚に上げ、


(追うしかない!)


決意するや否や、すぐに椅子から立ち上がり動きだした。


******



一方、偉人はというと。



(いったいどうなってやがるんだ……?

 しかもさっきの男教師、窓突き破って外に逃げやがった)


実は偉人も冷静に暗闇を見通していたのだった。


(礼羽は………………?

 あぁ、やっぱり無事か……)


そして、礼羽の無事もしっかりと確認している。


(礼羽も無事なら……

 たぶんあいつのこと追うだろ。

 あ、動きだした。

 ってことは、俺も追った方がいいよな)


礼羽が動き出したのを確認すると自分も静かに動き出した。


******


「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ…………」


その頃、礼羽に向けて発砲して体育館から飛び出した教師は普段の身体能力からは考えられないほどの速度で強制的に短距離とはいえ走らされ、呼吸が大きく乱れて言葉を発せない状態だった。



「…………やはりこんな程度でしたか。

 まぁでも、一応は命に従った働きを全うしてくれましたし、弱い《精霊の加護》を契約解除とともに与えましょうか」


今回の騒動の黒幕らしい水色の髪の少女は無感情を保ちつつ、ため息混じりにそう言う。


「………………“我が意に従いし僕、我が意の通り働きけり。故に【古の約定】に則って解放せしめん”」


その言葉を少女が呟き終わると、その教師の瞳が徐々に光を取り戻す。


虚ろだった顔に明確な意志のある表情が浮かぶ。


それは、見知らぬ少女への未知の恐怖。




だがその恐怖が何かの行動へと移されることは、なかった。




教師が恐怖を感じたと同時に、教師の体に異変が生じる。


異変の正体であるそれは、教師が少女へ恐怖を感じた瞬間に教師の意識を刈り取った。



それは少女が教師に与えたほんのわずかな報酬。




少女は他人をどう扱おうとも何も感じない。




しかし、さすがに自らの術で一時的にせよ契約を結んだ圏族である者には、契約に応えて働いてくれた報酬は当然働きに見合う分だけ与えるようにしている。


それが世界の暗黙の了解であり、他者と契約を交わす力を持つ者の義務であった。


だから、いくら期待通りではなかったとは言え、一応任務をこなしたこの教師にだって少女は報酬を与えるのである。



この教師の報酬は、弱い《精霊の加護》。



《精霊の加護》とは、存在する全ての世界・空間に存在している「精霊」を視認し、「精霊」から力を借りられるようになる能力。


「加護」とついているとおり、その能力者がどの「精霊」に気に入られるかによって使用できる能力が違う。


まぁこの教師に与えたのはかなり弱い加護なので、それほど力のある「精霊」に気に入られることはないだろう。


それはさておき。


少女は手に持つナイフを眺める。



ナイフには強力な致死毒が塗られている。


この毒を使用することが多く、特徴を知り尽くしていると言っても過言ではない少女でさえ、この毒の解毒薬は調合できない。


人体に入り込めば即死。


そこらへんの魔物でさえも数時間から数日で死に至らしめる。



おそらく解毒できるのはこの毒の製作者か医療を司る神のみであろう。



そんなことを少女が考えているうちに、少女の背後に何者かが現れる。




「…………やはり早いですね」




少女の視線は相変わらずナイフへと向けているものの、言葉と意識は背後に現れた者へと向けられていた。


「やっぱり気づかれてたか……。

 まぁこの速さが僕としては普通なんだけど。

 それよりも…………」


少女の背後から前へと移動する背後に現れた人物。


「龍見様」


少女に「龍見」と呼ばれたその人物は、素顔を隠す仮面を被り、荊野学園高等部の制服の上に青のケープを羽織った少年だった。


「凛、くれぐれもやりすぎてはいけないよ?

 ただ覚醒を少し早めるだけにするんだ」



そう少女に言う少年。


紺がかって見える艶やかな長い黒髪が風に吹かれてたなびく。


その美しい髪は、少女の作り出した“夜”の結界の中で月の光に照らされている。


それに見入っていた少女。



少年の声で現実世界へと引き戻された。


「さて、そろそろあのふたりが来るな。

 じゃあ凛、僕は姿を隠して見ているよ」


そう言い残した少年は、あっという間もなく姿を消した。


******



「はぁっはぁっ…………」


「はぁっ、はぁっ、はぁっ…………」


『あの教師ってば速すぎる(ぜ)っ!!』


走るのに疲れた偉人と礼羽は同時に同じことを叫ぶ。


「えっ?」


「は?」


そこでお互いに隣に立っていることに気づく。


「まさか、偉人もあの教師を追って?」


「ああ。

 まあ、お前が動き出したからだけど…………

 その、どうせ放っておかないだろうし。

 だけど、お前だけだと危ねぇかなって」


だんだん耳が赤くなる偉人。


「そっか。

 私の為に、ね。

 …………ありがと」


少し嬉しげに呟く礼羽。


その顔を見た途端、すぐさまそっぽを向いてしまう偉人。


「べ、別に礼を言うほどのことじゃねぇだろ?

そっ、それよりもあっちにあの教師いそうじゃねぇか?」


強引に教師の行方についての話へと戻す偉人。


それは誰がどう見ても照れ隠しであった。


「それは偉人の勘?」


礼羽が照れ隠ししている偉人を追求することもなく、素直に話に乗る。


「ああ、そうだ。

 これは間違いねぇ。

 けど、その他にもうひとりいる」


偉人には常人よりも鋭い勘がある。



その勘は今まで外れたことがない。




「なら確実か。

 でもふたりもいるのに背後から無力化してってのは厳しいよね…………じゃあ大人しく正面突破しかないかな」





意外なことに、礼羽は冷静に見えて冷静ではなかったようだ。



それに対し、偉人は突っ込みもせずに頷く。


覚悟を決めたふたりは走り出した。


******

数分後。



「な…………なんでお前が…………」


「遠くに引っ越したはずなのに……」


ふたりは教師ともうひとりの所へたどり着いていた。


だが、ふたりはそのもうひとりの人物に驚き開いた口が塞がらないようだった。



そこにいたもうひとりの人物は、この世界で珍しいパステルカラーの淡い水色の髪に濃紺の瞳を持った少女だった。



礼羽と偉人の言葉を受けた少女は口を開く。


「凛は戻って参りました。

 礼羽様、あなたを今日この地で覚醒させるために!!」


そして、いきなり手に持っていた猛毒塗りナイフを礼羽へ向けて放つ。




礼羽は突然のことすぎて反応できない。



「危ない!!」



そう叫ぶ偉人。




刹那。




グサッ。




ナイフが肉に刺さる音がした―――。

結局謎の少女の正体はわかりませんでした(汗)


すみません。


そして、なかなか話が進まない…。


感想や意見、誤字脱字等の指摘がある方は感想やメッセージを是非下さい!!


いつでもお待ちしてます!!



次回こそは少女の正体がわかると思います!

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