第2話 幼馴染
第2話です。
まだまだ序盤なので、これから頑張っていきたいと思います。
2015/2/22 一部描写の追加変更をしました。
家を出た礼羽はいつも通りのペースで通学路を歩く。
礼羽の家から学校まで直線距離は0.9kmくらい。
だから徒歩でも約20分程度でつく。
荊野学園では通学に使用する道路の距離が最低2.5㎞はないと自転車通学は認められない。
主な理由としては、いくつかある最寄り駅のうち一番大きな駅がそれくらいの距離の所にあるからだ。
いくつも最寄り駅があるのにも関わらず何故その最寄り駅に合わせているのかというと、自宅から電車などの公共交通機関を使用して通っている生徒の中でも取り分け遠方からの生徒がよく使う路線がその最寄り駅に乗り入れているのだ。
その最寄り駅よりも距離が短いことを考えれば、礼羽の家から学校までの道のりは比較的近い方である。
礼羽も徒歩通学をそれほど苦に感じている訳ではなかったし、むしろ友達と話しながら自分のペースで歩ける徒歩通学を気に入っていた。
大通りに出ればもう荊野学園の学校の目の前なので荊生(荊野学園生徒の略称である)がちらほら歩いている。
礼羽をはじめとした女生徒達は、白のワイシャツに男子学生のネクタイと同じ色のリボン。
そしてチェックのプリーツスカートと荊野学園の校章の入った黒地に白いラインのブレザーを着ている。
ちなみに数種類あるチェックのプリーツスカートはサブスカートであり、一応入学式や進級式、卒業式などで着る正装とされているのはグレーのプリーツスカートだ。
また、男女ともに学校指定の紺色のソックス(女子はハイソックス)と黒のローファーを履いている。
(靴下は夏期のみ白色、夏期以外は紺色である。)
しかし礼羽の登下校にはひとつ、悩みの種があった。
そしてその人物はほぼ毎日といってもいいほどに必ずやってくるのだ。
しかもその悩みの種の人物とは教室でも嫌というほど、顔を合わせなくてはならない。
と、その時!
礼羽が歩いてきた道を猛スピードでこちらへ走りながら呼びかけてくる声がする。
「お~いっ!
月島~っ!!」
やはりその声は凄く聞き覚えのある声で。
明らかに、礼羽の悩みの種である人物の声で。
「……はぁ」
と思わず、ため息を漏らしてしまう。
それでも一応、頭を振って振り向く。
するとやはり、予想通りの人物がこちらに向かって爆走してきていて。
白いワイシャツにサックス色のネクタイを締め、礼羽と同じ荊野学園の校章の入った黒地に白いラインが入ったブレザーを着ている。
そして男子学生規定の黒いスラックスを身につけている。
少し癖の強い紺色がかった黒髪。
これまた紺から黒っぽく見える瞳。
背丈は礼羽よりちょうど15㎝高い。
そしてその性格故か学校では注目されていないが、よく見ればかなりの端正な顔立ち。
しかしどこからどう見ても、普通の男子高校生である彼は礼羽の幼馴染である。
高校二年に進級したこの春からは晴れて同じクラスになった。
しかも隣の席である。
そんな礼羽の幼馴染は、
「ったく、なんで置いてくんだよ!」
などと若干不貞腐れながら追い付いてくる。
名は、桐生偉人。
それはもう親同士でも親交が深く、礼羽にとっては赤ん坊の時からの幼馴染だ。
「別にいいでしょ?
今日は生徒会の仕事があるの」
もちろん仕事なんて本当はない。
だけどつい、偉人には辛く当たってしまう。
「でも、おいてくことないだろ?
今日はせっかく、いつもよりも早く準備しておいたのによ」
なんて、まだ不貞腐れ気味なのだが。
とそんなこんなで学校につき、校門をくぐって昇降口へと歩く。
靴を上履きへと履き替えてローファーを靴箱へと入れる。
それから偉人と教室へ向かおうとした時、
「あっ、あの……月島さん……
ちょっと、いいですか?」
と、礼羽は後ろから声をかけられる。
控え目に声をかけてきたのは礼羽達のクラスの委員長を任されている朱雀院紋葉である。
普段はかなりおとなしいが、人一倍仕事をこなす子だ。
しかも、紋葉の家はここら辺の地域一帯を昔から治めてきた五院家のうち、頂点の麒麟院・鳳凰院一族を南から護衛してきた朱雀院である。
ここら辺一体の旧家の中では数少ない、今もかなりの力を持っている家でありお金持ちでもある。
そういう家に生まれた影響なのか、紋葉の周囲に漂う雰囲気からして内気なお嬢様という感じだ。
そんな紋葉が礼羽に声をかけてきたということは、ひとつしか理由が思いつかない。
そこで礼羽は、
「生徒会の用事かしら?」
と予測を口に出して聞き返す。
それに紋葉は驚いたように目を見開きながら、
「そうです。
さすが、月島さんですね。
昨日の総会打ち合わせで抜けてしまった案件の説明を行いたいそうで……
全クラスの委員長と生徒会役員、全委員会委員長には召集がかけられています」
と紋葉は、重要な伝言を伝える。
それに礼羽は、
「わかった。
ついていけばいいのね」
と理解した意を告げる。
それから少し離れたところで待っててくれていた偉人の方へはジェスチャーで「先に行ってて」と伝えてから、紋葉の後に続くようにその場を後にした―――――――――。
まだまだこれからも、作品世界を広げていけたらな、と思います。