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吸血神姫《ヴァンパイア・プリンセス》  作者: 瓜姫 須臾
序章 「目覚める」少女・月島礼羽
10/22

第10話 生徒会メンバーはその時……

記念すべき10話目です!


今回は礼羽や偉人ではない人達の話です。


2015/2/23 「・・・」から「…」に修正しました。


2015/2/27 地の文の表現を一箇所、「同僚」→「仲間」に修正しました。

時間は少し戻る。



総会にて男性教師が拳銃を発砲した直後。




パリンッ!!




体育館の窓ガラスが割れた。






「…………唯」


「知世、心配すんな。

 大丈夫だろ。

 逃げてっただけだ」





俺は橘唯。


この荊野学園高等部三年に通っている。



生徒会庶務を勤めているが、正直知世と紫苑、美咲さえいれば他は割とどうでもいいと思ってる。


では何故生徒会にいるのか?



そんなの、理由は一つだ。


知世と紫苑が生徒会役員に選ばれたからだ。



知世とともに紫苑を護る。


それが俺に課された使命。


だから、俺とお目付役の美咲は生徒会役員へと立候補した。



もともと成績もいい方だったし、知世とかに付き合っていろいろ他の生徒の手助けなんかもしてて他の生徒からの信頼も結構あったからすんなりと生徒会役員に選ばれることができた。


生徒会役員に選ばれる手助けになってくれたから、他の人の手助けするのなんかも意外と良いものかもしれないと珍しく思った。



口では絶対に言わないけどな。



まあ選ばれたからにはちゃんと仕事はする。



じゃなきゃ我が主・紫苑や大切な仲間の知世、美咲によって雷が落とされるしな。



そんな動機はどうあれ、珍しく今年は()()()ために頑張ってみようかと思った矢先。



生徒会発足後初の総会中だったついさっき事件が起こった。



「唯、知世。

 美咲とともに礼羽さんの様子を“視て”くれ」



「俺だけで充分だろ」



紫苑が一番慕っている二年の女子生徒・月島礼羽が総会終盤に突如として男性教師に拳銃で撃たれたのだ。



だが、図ったかのように男性教師が発砲した瞬間に体育館の照明が落ちてしまったので誰も礼羽がどうなったのか確認できていなかった。



先程窓ガラスが割れたのは男性教師が逃げていったものであるとして。



俺は礼羽の様子を“視る”。



普通の視力なら、しばらくして目が慣れたとしても細かい様子とか離れた場所は見えない。



だけど俺ら四人は迷わずステージ上の俺の所へ一ヶ所に集まった。




それは俺らが普通じゃないからだ。




ここだけの話、俺や知世、紫苑、美咲は普通の人間が持ち合わせていない、所謂異能力を持っている。



俺は何があっても死なない体と闇の力。




他の三人は三人でそれぞれ別の力を持っている。



まあ、世界の裏じゃありふれてる異能力者ってところだ。



俺らの力はこの世界じゃ珍しいがな。



決まってそういう異能力者同士は力の波長でお互いを認識するし、基本的に視聴覚含めた知覚能力を拡張できる。



知覚系が苦手な俺でもこの体育館の範囲くらいなら問題ない精度で知覚できる。



主の頼みに従って礼羽のいる所へと目を向ける。



まあ普通なら、あの外しようがない距離から拳銃で狙われれば即死のはずだろうが…………



「…………んなっ?!」



俺は目を疑ってしまった。



だって……



「無傷だと…………?!」



偶然弾が逸れて掠ったとかではなく、無傷だった。


しかも弾は掴み取ったように手の平に乗せられている。



「…………あぁ、なるほどな。

 そういうわけか……」


しかし俺はよく礼羽を“視て”ひとり納得した。



「礼羽さんは無事か?」



紫苑が聞いてくる。



その間に礼羽が移動し始めたのを見逃さない。



「ああ。

 無事どころか無傷だ。

 …………こりゃ面白いことになりそうだぜ」


俺はニヤッと笑いながら、キョトンとしている他の三人へむけて説明し始めた。



******


「神威……今、どうなってるんだ?」



「あぁ、とりあえず誰も死んでない。

 それにもう脅威は去ったと思っても良いだろうな」



同じ時、ステージの反対側では冷静に状況分析をしていた。



「そうか。

 おまえがそういうなら大丈夫か」



「葵、お前はちょっと俺のこと信用しすぎじゃない?」



そんなやりとりをしているのは鈴宮神威と群青葵。



「え、そうかな?

 だって僕のチカラが大丈夫って言ってるし」


「まったく…………

 あんまり力に頼りすぎると呑まれるぞ」


「あはは。

 まぁ気をつけるよ」



この二人は誰がこの騒動の陰にいるのか何となくわかっていた。



そして、ついに自分達の所属している組織も本格的に動き始めたと感じていた。



目の前の騒ぎ続ける生徒や教師など眼中にない二人だった。



******


(ど、どういうことよ……っ?!)


ほとんどの生徒が冷静なステージ上にも絶賛混乱中の者が一人。


(なんで教師が拳銃なんて所持してるのよ!!

 というかなんで月島さんが……?)



それは副会長の堂島夏樹だった。



夏樹は混乱しながらも、とりあえず隣にいるはずの生徒会長へと声をかける。


「かっ……会長、どうしましょう?!」


「取り乱さなくても大丈夫だよ、副会長。

 月島さんなら無事さ」


(なんでそんな普通なのよ?!)



普通の人間なら彼女のような心境なのだろうが、この生徒会長は生憎普通ではなかった。



「まぁもうあの教師は出て行ったし。

 それにきっと龍見く…………あ、んんっ!

 青龍院くん(誰かさん)がきっと何とかしてくれる」


「そんな誰かが現れるでしょうか……?

 そういえば……」


(兄さんは大丈夫かしら……)



生徒会長の他力本願な言葉を聞きながら、ステージ下の生徒達の中にいるはずの自分の双子の兄を心配する夏樹。


礼羽のことが心配だったのだが、生徒会長の言葉によってその心配は自身の兄へと方向を変えていた。



それだけ生徒会長の言葉は信頼の置けるものなのだろう。



もともと夏樹に龍見を心配する頭がなかったわけではないのだが、ステージ上にいた同学年の、それも同じ生徒会に所属していて仲もまあまあ良い女の子が撃たれたのだ。



そちらの方がどうしても先になってしまうのは仕方ないだろう。




まあ龍見のことを心配する気持ちが薄かったのもあまり否定はできないが。




普段ならあまり心配しない夏樹でも、こんな事態ではさすがに血の繋がった兄妹だ。



少しは心配にもなる。




それにまだ、夏樹は龍見の本性を知らない。




龍見がこの事態に他の生徒と同じく恐怖して震えているとしか思っていない。




生徒会長の言葉で「礼羽は無事」が決定事項となった途端、兄へと心配の天秤が傾いたのだった。




しかし、


「あ、龍見くんは大丈夫だよ。

 むしろ心配なのは桐生くん…………かな」



暗闇にいるので顔など見えていないはずなのに、夏樹の思考を読みとったように兄の無事を断言してくる生徒会長。




そして、何故か兄と同じクラスの男子生徒の名前を出してくる。



「桐生くんがどうか…………」




「あ、やっぱり動き出しちゃった。

 まあこれはこれでまた一興かな。

 それに月島さん(彼女)にとっては救いになるか…………」




夏樹の言葉を待たずに呟いた生徒会長。



それはまるでこの暗闇の中でも全てを見通せているような発言。




そんな生徒会長をどこか遠い存在に感じてしまう夏樹だった。

どうでしたでしょうか?


今回は一人称の部分がありましたが…



感想等で意見をいただけるとありがたいです。



感想、指摘、意見…


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