第1話 月島礼羽という女の子
初の連載なので、不十分なところもありますが、作品世界を楽しんでいただけたらなと思います。
2015/2/22 一部描写の追加・変更をしました。
―――世界には、まだ世間に知られていない裏がある――――――。
誰かがそう言った。
何時の時代の誰かはわからない。
でも、そう主張する者は何時の時代にも必ずと言っても差し支えないくらいに存在する。
だが悲しいかな、その主張は「他愛もない夢だ」と吐き捨てられてしまうのが現状である。
しかし、よく考えてみてほしい。
子供の頃には誰しもがそういう「憧れ」を持っていたはずである。
では一体人は、どれくらいの歳になるくらいからその「憧れ」を捨ててしまうのだろうか――――?
と話は逸れてしまったが、これからお話しする世界ではこういった世界の裏の顔があるという。
そして、その世界の裏の顔に運命を翻弄されてもそれに抗って苦悩していく少年少女の物語であり。
決して、戯れ言などという一言では片付けられない話である。
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「礼羽~?
起きて来なさい!
もう朝よ~?」
月島礼羽は、下の一階から呼ぶ母の声で目を覚ました。
ベッドから体を起こす。
礼羽が今いるのは、家の二階にある自分の部屋のベッドである。
日本人特有の綺麗で艶やかで黒い、腰まで届くくらい長い髪。
キリッとしているように見えるのだが意外と大きくて澄んでいる、角度によっては少し蒼っぽく見える不思議な瞳と長い睫毛。
ハチミツを溶かし込んだように滑らかで艶のある乳白色の肌。
そして、整った顔立ち。
スタイルも良く、それほど背も低くはない。
大体161㎝くらいである。
もちろん、体重は秘密である。
そんな、街を歩けば即刻モデルにスカウトされそうな彼女は、
「ふぁ~あ……。
今日も学校だった……」
と、大きく伸びを一つしてベッドから立ち上がる。
その時、一瞬フラッと足がふらつく。
ただほんの一瞬だけだったし、頭が痛いとかずっとふらついていたりとか、体がだるいとかもない。
「ただの立ち眩みかな」と思い、礼羽は何事もなかったかのように普段通り手早く身支度を済ませる。
鞄の中身を詰めながらふと、動かしていた手を止めて呟く。
「確か今日は…………総会だったかな……」
そう呟くと、残りの身支度を再開してすぐに済ませる。
それから下の階へと降りる。
「おはよう礼羽。
今日は確か、学校の総会よね?
わかってるわ。
なるべく早く帰ってきてね?」
と、母・裡々羽は礼羽に朝の挨拶ついでに言ってくる。
でも母には珍しく、「早く帰ってきて」などと言うものだから、つい礼羽は聞き返してしまう。
「なんで?」
それに母はものすごく「恋してる乙女な顔」をして答える。
もう、その顔を見ただけで礼羽にはなんとなく予想がつく。
「今日は、お父さんが帰ってきてくれるのよ」
そう。
礼羽の父は単身赴任中で、今現在は家を開けている。
いや、あまりにも単身赴任や出張が多いので、礼羽からすれば今現在でなくとも家を開けている時間の方が多いような気がする。
もう結婚して結構経っているはずの両親の熱々な関係に少々あきれつつ、
「でも今日は総会があるから……
まぁ、なるべく早く帰ってくるけど……」
とだけ答えたらテーブルの席について朝食を食べ始めた。
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礼羽が通う「私立・荊野学園」では『生徒主体の学校運営』を主な教育方針としている。
その為、生徒会長を学園で一番の責任者として生徒会が学園を仕切っていた。
教師はもちろん、理事長や校長、教頭らも基本的には静観を決め込む。
だが、さすがに全部が全部生徒に任せるわけにもいかないのが世間一般の常識であり、金銭関係などは理事長などが関わることもある。
また、この学校は違った面でも変わっている。
私立のこの学園はとある会社の社長と学園の理事長の共同で立ち上げた学校だった。
故に、校舎の作りも一風変わっており常に最新鋭の技術を取り入れていっている。
そんないくつかの理由から最近では周辺地域に留まらず全国的にも有名になるほど人気である。
そして、生徒会が実権を握るという生徒主体の運営ならば全生徒が集まる生徒総会も他校とは比べ物にならないくらいに重要性を増してくるのである。
そんな責任重大な生徒会の役員として、礼羽は二年生という中堅の学年でありながら同じ役職に立候補していた三年生を打ち破り、圧倒的な得票数で当選を果たしてその仕事に従事していた。
そう。
礼羽は、学校でも地域でも評判の完璧超人なのだった。
しかしそんな礼羽にも唯一、可愛らしい弱点がひとつある。
それは、幼馴染・桐生偉人の存在だった。
偉人といる時の礼羽は何故かいつもの調子が狂わされてしまう。
偉人が誰か他の女の子といると無性にイライラする。
偉人が自分に振り向いてくれているときはフワフワとした幸福感に包まれる。
いつもの優等生らしさは形を潜め、自分以外の女の子と仲良くする幼馴染へと少しヤキモチを妬いてしまう普通の女子高生へと変わってしまうのである。
それを他人に指摘されるといつも礼羽は支離滅裂な反論をするので余計にからかわれるネタとなってしまっていた。
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そんな可愛らしい弱点をも持ち合わせる完璧超人な礼羽は朝食を済ませると鞄などの荷物を手に持ち、玄関で靴を履く。
そして後ろに立つ母の方を振り返り、
「いってきまーす」
今日もそう言って、家を出た。
初の連載投稿です。
是非、作品世界を楽しんでください。
感想等を書いて頂けると嬉しいです。