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天海の星屑  作者: 藍村 泰
第二章 略奪
7/13


 別れは思ったよりも呆気なかった。

「元気で帰ってこいよ」

 ぶっきらぼうな口調で父は言った。充はむっつりと頷いた。母や弟妹達は涙まじりに抱きついてくる。女友達も「元気でねえ」と目のふちに涙を溜めて声をかけてくれた。

「帰ってきたらいい男捕獲しといてあげるわ」

「そういうのはいらない」

 充の返しに、友人達は紅を引いた唇の端を半ば無理矢理引き上げた。

 ごく少数の人々と言葉を交わしている充と反対に、螢はたくさんの人々に囲まれて別れを惜しまれていた。誰も彼もが螢のことを心から心配しているようだった。

「螢がいなくなったら、華がなくなるわ」

「早く帰ってきてね。危なくなったらすぐに逃げるのよ」

「地祗国が復古したら螢はお姫様かあ。俺にはますます手が届かなくなっちまうさ」

「地祗の加護があらんことを」

 螢への思いやりにあふれた言葉はあたたかかった。人々の中から、にゅっと無骨な手が伸びてきた。それは螢の細い手首を掴んだ。烙である。彼は真剣そのものの顔をして螢に言い含める。

「いいか。天神国の兵士に会ったら充やあいつらを盾にしてでも生き延びろ」

 烙、と充は額に手を当てて溜め息を吐いた。容赦なさすぎる。充だって集落から出ることにかなりの抵抗があるのだ。それをなんだ。盾にして逃げろ、と。つくづく男というのは美しい乙女に弱いものである。

 朔達はその様子は少し離れた位置から見守っていたが、一人の若者が言った「盾にしてでも生き延びろ」のくだりで、あからさまに渋面を作った。彼らにしたって気分の良い言葉ではないだろう。

 螢は浮かない顔をして――それでも気丈に笑顔を絶やさず一人一人に頭を下げている。その殊勝さが彼女の魅力だ。外面だけでない、内面から溢れ出る汚れなき美しさ。妬みさえ彼方に追いやられるような清廉さである。

 それを横目見、充は大泣きする弟妹の頭を撫でて彼らの目線に腰を落とす。

「充……」

 弟は泣きすぎて腫れた瞼をこすりながら声を絞り出した。

「こら、呼び捨てにするなって何回言ったらわかるの」

 だって、と弟は女々しい仕草で抱きついてくる。それをしょうがなしに受け入れ、充は苦笑気味に相好を崩した。

「大丈夫。大丈夫だから。今生こんじょうの別れでもあるまいし男の子が泣くんじゃない」

「うん、うん……」

 ようやく弟が泣き止んだと思ったら、今度は彼に触発されて妹や友人、そして母までも泣きついてきた。その誰もをなだめながら、充は己の行く末を密かに案じていた。螢に着いていくことを決めたのは自分だ。後悔はしない自信があった。しかし、一抹の迷いもないとは言えない。

 もしも途中で一行とはぐれてしまったらどうしよう。もしも螢を守りきれなかったら集落の人々はのこのこ帰ってきた自分をどう思うだろう。もしも、もしも――。不安はとぐろを巻いた蛇の如く渦を巻く。それでも決めたのだ。

 充は強い眼光を朔達へ向けた。あたしは逃げない。そんな思いを込めて。


 山の木々は身をくゆらして葉を落とす。

 集落から離れて入山してから数時間後。太陽は空の頂点にとどまっていた。

 そろそろ飯を食うかと擯が発言し、一同は山中の拓けた場所にて腰を下ろした。集落では朝夕あわせて二食しか摂らない生活を送っていた充と螢はさほど空腹を感じていなかった。しかし、ここで食べないのも悪いと思い、万に差し出された粟の握り飯を頬張る。

「さて、腹もふくれたところで、これからの動向を伝えておこうと思う」

 そう前置きして万は話し始めた。充と螢は黙って老婆の言葉に耳を傾ける。

 万は今後どんな道のりを辿る予定かをザッと教えてくれた。どうやら天神国の都を抜けて連合軍の集まっている火神国へ行くつもりらしい。

「天神国の都を越えるの……?」

 螢は形の良い眉を不安げにひそめた。彼女を安堵させなければ、と充はつとめて気丈にふるまう。

「大丈夫。皆いるんだから……安心していればい――」

「何を言っている。油断は禁物だ」

 充の言葉を遮って商が口を挟んできた。充は余計なことを言った商を睨みつける。

 他の誰もが黙っていた。それはすなわち、商の意見に同調することを意味している。

 ますます不安げな顔をする螢に追い打ちをかけんばかり、商は再び口を開いた。

「天神国の情報網と兵力をあなどってはいけない。一寸の隙がすべてを台無しにしてしまうぞ」

「……そんなことわかってる。でも、不安に思っている人の前で、わざわざそれを口にしなくてもいいじゃない」

 我慢出来ずに充はそう反論した。

「君は甘いな」

 鼻白んだかのように商は顔をしかめた。

「たしかにやわらかな言葉は安堵を生むかもしれない。だが、それは一時だけのものだろう。ならば、もとより本当のことを告げるべきだ」

 強い者特有の考えだ。自分の身を自分で守れる自信がある者だけが思える論理。

 螢はおびえきっている。彼女の握り飯を持つ手が微かに震えていた。大きな瞳が潤む。

 充は思わず立ち上がる。それに呼応して商も立ち上がる。威嚇的な空気を纏って二人とも無言のまま互いを見つめていた。

「まあまあ」

 のんきな声が間に入った。朔は握り飯片手に充と商の顔を交互に見やって笑う。

「先は長いんだから、仲間内で対立し合ってもしょうがないよ。とりあえず、ゆっくり腹ごしらえしようよ」

 充は朔の提案を受け、嘆息して不承不承腰を下ろす。それから飯を食べ終わってその場を去るまで一度たりとも、商の方は見向きもしなかった。


 夜が山を覆う直前。今日はここらで野宿だ、と擯が声を上げた。ふくらはぎが重い。充は川辺近くにある硬い岩場まで歩いて行き、むくんだ両足を投げ出した。岩場は一つ一つが大きい。大の大人一人余裕で寝転がれる広さがあった。

 きっと、岩の上で寝ることになる。そう思っていた充だったが、それは良い意味で裏切られた。

 朔達は慣れた手つきで野宿の準備を始める。擯と商は天幕を張り、朔は薪をくべて火を焚く。巫である万は岩場に胡座をかき、川へ乾燥した草を浮かべている。まじないの言葉を呟いているのを聞くに、この場を借りることへ感謝の念をと地神へ送っていることが察せられた。

 天幕など準備しているとは露程も思っていなかった。彼らの用意周到さに、ただただ感心する充と朔の目が合った。彼は優しく微笑んだ。

「寒かったろう。ほら、近くに来てあったまりな」

「あ、うん」

「螢も」

「ありがとう、ございます」

 戸惑いながらも二人は朔の厚意に甘えた。

 充は火に手をかざす。足がじんじんする。ちらりと自らの足裏を覗くと、豆がつぶれて痛々しい有様となっていた。思わず顔が引き攣った。

「初めての山越えなのに、強行軍でごめんよ。でも、山は少しでも早く抜けた方がいいから」

 神が降りてくるからね、と朔は小さく呟いた。

 呟きの意図が読めず、充と螢は首を傾げる。神が降りてくるとはどういうことかと問おうとするも、擯が「見張りの順番を決めるぞー」と大声で呼ぶので訊けずじまいになってしまった。


 話し合いの結果、万と螢を除いた四人で見張り番をすることになった。一人では心許ないだろうから、二人ずつ交代で夜通し焚き火の近くで敵襲や獣達が寄ってこないか見張ろうと意見が落ち着く。しかし、充が見張りをするということに、一人だけ否を唱える者がいた。

「君はみこ達と一緒に寝ろ。おなごが男と同じことをしなくともいい」

「気遣いはいらない。あたしは螢の護衛として同行しているんだから」

 充は言い含めてくる商に歯向かった。

「…………」

 商は小さく溜め息をつく。そんな彼に充はつんとそっぽを向いた。商とは全くそりが合わない。きっと相手もそう思っているだろう。女のくせにでしゃばる鬱陶しい奴だと思われているに違いない。

 ぎすぎすした二人の肩に、擯は腕を回してがははと豪快に笑った。

「喧嘩するほど何とやら! 言い合い、殴り合い、大いに結構!」

「この娘と殴り合いをするつもりはありません。ただ――」

「いいからいいから。はあ、若いってのはいいなあ。おれ様もおぬしらと同じくらいの時は……」

 何かを思い出すように擯は目を閉じ、しみじみと語り出した。自分がいかに女から人気であったか、顔貌だけでなく、武芸にも秀でていたため男達からも羨望の眼差しを向けられていたこと(それは今でもだが、という言葉を添えるのを忘れないあたりが擯らしい)。

 また始まったという風な商は、うんざりした目をしている。商は「ついこの間、その話は聞きました」や、「別におなごと懇ろになることなど望んでおりません」など口を挟んでいたが、擯の自慢話は一向に終焉を迎えない。

 頭が痛くなってきた。目のふちで夕飯を食べている朔達が見える。かなりうらやましかった。

 ようやく解放された時にはとっぷり日も暮れていた。

 天幕の中からは高いびきが聞こえてくる。擯だ。あの男は豪快過ぎる。しかし、何故か憎めない。まったく、火神国の王とは思えない気さくさだ。

 そんなことを思いながら、充は見張りの相方を横目見た。商である。

 いきなり彼と見張り番になるなんて、予想だにしていなかった。これもすべて擯のせいだ。

 充と商の性格が合わないと判断した朔や万は気を遣って、二人が一緒に見張りをすることを回避しようとしてくれた。しかし、擯は「それではこれから先、ずっと腹を割って話せなくなるだろう」と言い張った。そのためこうして商と見張りをする羽目になってしまったのだ。

 気まずい空気が垂れ込めている。居たたまれなくなった充は重い腰を上げた。

「……どこへ行く」

「水を汲みに」

「そうか」

 短い言葉を交わし、充は竹筒片手に川の上流へ向かった。

 水面は暗闇に沈んでいた。

 細い月と幾千の星が空に輝いている。背の高い木々の隙間から覗く空は、集落で目にしたどんなものより美しく見えた。充は静かに目を閉じ、風の音、木々のざわめき、虫の声に耳を傾けた。秋特有の乾燥した冷風が吹きつけてくる。

 ぐだぐだと物思いに耽りながら皆のいる場所まで戻る。

 焚き火に浮かぶ涼しげな横顔。張り詰めた空気の中で商は気だるげな表情をしている。

 充の足裏で細い木の枝が折れた。斜め下を見つめていた商がゆっくりと顔を上げる。彼は前屈みになって指を交差させていた。

「遅かったな」

「上流に行っていたので」

「山中で火の近くから離れると危険だぞ」

「――はい」

 会話が途切れる。つなげる努力などする気にもならなかった。

 充は護身用にと父からもらった長剣と、地祗の秘宝である短剣を胸に引き寄せる。短剣は本来、螢が持っておかねばならないものだ。しかし、螢はそれを頑なに拒否した。

『充に預けておきたいの』と彼女は言った。まだ短剣を持つ覚悟が出来ていなかったのだろう。そこで集落長や充の父は嘆息し、短剣を充に預けたというわけだ。

 充は短剣の煌めきを見る。見ていると不思議に心が落ち着いた。

「すまなかった」

 唐突に商が謝ってきた。何に対して彼が謝っているのかわからず、思わず呆けてしまう。

「いや、君に対して俺は随分高圧的な物言いをしていたかもしれないと思ってな」

 商は下唇を軽く噛む。

「風神国にいた時も、この旅の道中でも、君のように意見を言える女に出会ったことがなかったから……反論されたらついきつい言葉で切り返してしまっていたかもしれない」

 商は風神国の王子だ。そんな彼に、女はもちろん、男であっても意見できる者はそうそういないだろう。充が彼に意見できたのはただ単に世と隔絶された集落で育った故の無知さがあったからに他ならない。だから、彼が謝る必要などこれっぽっちもないのだと充は思い、それを口にしようとした。

 しかし、充の言葉を商は遮った。それに、と真面目な顔をして彼は言う。

「俺はもとから死ぬほど口が悪い」

 充は思わず吹き出した。

 商は片眉を上げる。

「何がおかしい」

「いいえ、そんな真剣な顔をして何を言うのかと思ったら。……あたしは別に口が悪いとは思いませんけど」

「そうか? 側仕え達には『王子が口を開けば皆に誤解される』と毎日のように諫められていたがな」

「誤解されやすいの?」

 ああ、と商は頷く。

「俺としては心配しているつもりが、詰問しているのでは、と勘違いされたりする」

 商は遠い目をして言った。

「それは、気の毒な」

 充は心の底から商に同情した。ここにきて初めて彼の腹の内を知ることができた気がする。商もそう思ったのか、少しだけ表情を和らげた。

「交代だ」

 その声に充と商はハッとした。後ろに朔と擯が立っている。擯は首を上下に揺らし、うつらうつらしていた。そんな彼を朔が半ば無理矢理立たせていた。

「ううん……おれ様にかかれば、美酒や装飾品などすぐに手に入れられるぞ~」

 擯は夢で女を口説いているようだ。

 朔はにっこりと充と商に笑顔を向ける。

「明け方まで、二人ともゆっくり休んでよ」

「うん、ありがとう。朔も擯殿も寒いから風邪を引かないようにね」

「充は優しいなあ」

 朔はしみじみと言った。擯は寝ぼけ眼で片手を上げる。

「それでは後は頼んだ」

 商はそう言い残し、さっさと天幕へ入っていく。そのあとに充も続いた。

 天幕内には万の寝息が響いていた。商は万の横に転がった。すぐに商からも健やかな寝息が聞こえてくる。充は螢の横にもぐり込む。

 背中越しに伝わる螢の息づかいは非常に浅い。充は寝返りを打って螢の細い背を見つめた。

 螢は起きているのだろうか。そう思っていると、螢の体が動いた。彼女がこちらを向く。やはり、起きていた。

「眠れないの?」

「ええ、なんだか緊張してるみたいで……」

 それはそうだ。いきなり地祗国復古なんぞ大任を背負わされ、緊張しない方がおかしい。

「充……あなたが来てくれていなかったらと思うと、わたし、わたし……」

 螢の瞳が潤んだ。充は目の縁に溜まった涙をカサカサした筋張った指で拭ってやる。くわえ、少しでも彼女が安心できるように微笑みを添えてやった。

「大丈夫。無事にあなたを火神国まで送り届けるから」

 充の手に螢がそっと触れた。長い睫毛から雫がこぼれた。

 と、天幕の入り口が開く。

「……起きてるのかい?」

 小さく朔は尋ねた。充と螢はそれに反応する。

「ああ、二人とも起きてたんだ。良かったら、団子でも食べない?」

「……行く?」

「ええ」

 充の問いかけに螢は首肯する。二人は朔に促されるまま、外に這い出した。

 焚き火の傍では擯が眠りこけていた。見張りの意味がないではないか、と充は肩をすくめた。

「はい、どうぞ」

 朔が団子を差し出してきた。それと一緒に温かい白湯まで用意してくれた。充と螢は礼を言う。団子を頬張り白湯を飲み込むと、心が落ち着いた。自分が思っていたよりも緊張していたようだ。

「初めての野営だ。二人とも眠れないだろうと思ってね」

 朔は常備食である団子を、こっそり万の荷物から拝借したらしかった。

 朔の気遣いに感動したのか、螢は頬を染めた。

 三人は他愛ない話をした。何気ない話をすることが、緊張状態をほぐすための一番大切なことである。


 と、螢の頭が充の肩に乗った。螢はぐっすり眠りこけている。もちろん、擯も相変わらず高いびきをかいて寝ていた。

「ありがとね」

 充は朔に何度目か知れない礼を述べた。朔は目をくりくりとさせて首を傾げる。彼は、どうして自分が礼を言われているのかわかっていない様子である。

「気を遣ってくれたから」

「ああ……いや、別に気を遣ったつもりはないよ。俺だって、あんた達の立場におかれたら不安だろうな、と思っただけ」

 それが気遣いというものだ。朔は何の計算もなくそれをやってのける。そんな彼に充は手放しで尊敬の念を抱いた。

「螢、緊張し過ぎて眠れなかったみたいだから……助かった」

 朔は充の言葉を受けて黙り込む。そして、呟いた。

「この子の重圧も相当だろうけど、俺が一番危惧してるのはあんたのことだ」

「え?」

「護衛なんてやってことないだろう。かなり気が張ってるんじゃない?」

 それは……と充は口ごもる。自分は申し子という大任を背負っているわけじゃない。だから、不安を口にするなんてできないと思っていた。

 朔は矢の如く真っ直ぐな瞳をこちらに向けた。

「これから何が起ころうとも、俺は決してあんたを死なせたりしない。守りきる。絶対だ」

 心臓が、止まるかと思った。じんとする。

 螢と違い、戦力として……螢のおもりとして連れて来られた充は庇護対象ではない。なのに、朔はそんな充を守ると言ってくれた。それが嬉しかった。

 ――腕っ節なんて関係ないね。ただ、俺はあんたがいい。

 ――こんな広い世で、偶然出会えたんだ。一緒に行こう。……一緒に行きたい。

 朔の言葉は充の心によく沁みる。

 充は俯く。そして唇を開いた。

「……ありがとう」

 声が震えたのは寒いからだ、と自分自身に言い聞かせた。



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