表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの日の風の、その続き 〜戦う公爵令嬢と、王女が選んだ未来〜   作者: 凛花


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/36

第五話 お前がいない世界で






「リゼ!!」


リゼの姿を見つけたエリシアは、駆け寄るようにリゼを強く抱きしめた。



「リゼ、髪が……!それに、ひどい怪我を!」



涙を溜めるエリシアの頭を、リゼは優しく撫でた。



「邪魔だったから切っただけ!」


そう言ってなんでもないように笑ってみせるリゼの声は、いつも通り明るい。



ただ、その腕や肩に巻かれた包帯が痛々しかった。



いつもそうだ。


リゼはいつも無茶をする。


傷付いても、倒れても、それでも立ち上がる。



守られることを嫌い、いつだって誰よりも強くあろうとする。




「……いいかげんに、してくれよ。」



クロードは、エリシアと話をするリゼを少し離れた位置から見ていた。


その拳は、爪が食い込むほど強く握り締められていた。



(まただ。)


リゼは、何も変わらない。


誰の心配も、届かないまま前へ出る。


そのたびに、自分の中の何かが削られていくのに。




リゼは、子供の頃から頑固で負けず嫌いだった。


公爵令嬢でありながら、近衛騎士になると言い出した日。


誰もが止めた。


「女の子なんだから」


「公爵家の令嬢が」


そんな声を、リゼは全部振り切った。


兄・ゼンに頼み込み、護衛隊の試験を受けた。


その頃からすでに、剣の腕は突出していた。


男たちの中でも、遅れを取らなかった。


その様子を見ていた団長が、その才能を気に入り隊に迎え入れたのが三年前。


リゼが十四歳の時。


クロードは十六歳だった。


その頃の彼は、騎士になる気などなかった。


ただ、リゼを放っておけなかった。


父が元団長だったこともあり、試験は簡単な実技だけで通った。


気づけば、同じ隊にいた。


そのときもリゼは、不満そうに睨んでいた。


「なんであんたがいるのよ」


そんな顔をしていた。


明るくて、まっすぐで、眩しいほど強い少女。


それでも身分は違う。


リゼは公爵家。


自分は伯爵家の次男。


近くにいることすら、本来は許されない距離だ。


それでも。


(守りたい)


その気持ちだけは、消えなかった。


けれど、それを口にしたことは一度もない。


ただ、そばにいられればそれでいいと思っていた。


――もっと強くならなければ。


リゼより強くなって。


彼女の前に立てる存在に。


その理由さえ、言葉にすることはなかった。




『お前がいない世界で――』


クロードの声を思い出しながらも、リゼはまだ知らない。


その言葉の重さを。


その意味を。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ