第九十二話:鉄の馬、草原を駆ける
村の防衛網がシステム化されたことで、侵入者の位置は即座に特定できるようになった。しかし、一つの課題が浮き彫りになる。「駆けつけるスピード」だ。
「ツヨシさん、北の果てまで走って行くのは、若者でも息が切れます。防具を付けていればなおさらだ」
自警団のリーダー、カイルの言葉にツヨシは頷いた。
「やはり、移動手段の機械化が必要か。馬もいいが、誰でも扱えて、餌(燃料)の心配が少ないものがいいな」
1. 試作一号:魔導原動機付自転車
ツヨシが設計図を引いたのは、かつて日本で愛用していた「スーパーカブ」を彷彿とさせる、質実剛健な二輪車だった。
フレームは鍛冶屋のドワーフ、バルカンに依頼した強化合金製。心臓部はガソリンエンジンではない。
「魔石の熱で水を沸騰させ、その蒸気圧でピストンを回す。あるいは、雷の魔石を使ってモーターを回すか……」
ツヨシは後者を選んだ。銅線を幾重にも巻き付けた「魔導モーター」を後輪に直結。ペダルを漕ぐことで補助的に発電し、魔石のエネルギーを効率よく引き出す「ハイブリッド式」だ。
2. 悪路を走破する「テレスコピック」
村の道はまだ舗装されていない。ツヨシは教え子に教えた「バネの法則」を応用し、フロントフォークにサスペンションを組み込んだ。
「これで段差の衝撃を吸収する。年寄り……いや、今の私なら腰を痛めずに済むな」
さらに、タイヤには弾力性のある魔樹の樹液を加工したラバーを巻き、深い溝を刻んだ。まさにオフロード仕様である。
3. 「鉄の馬」の初陣
数日後、村の広場に奇妙な音が響いた。「ウィーン」という静かだが力強いモーター音。
ツヨシが跨る「鉄の馬」が、地面を蹴って加速する。
「おおっ! 馬よりも速いぞ!」
「あんなに重そうな鉄の塊が、あんなスピードで……!」
村人たちが驚愕する中、ツヨシは時速30キロほどのスピードで村の周回路を駆け抜けた。操作はハンドル右手のスロットルを回すだけ。クラッチ操作もいらない「オートマ仕様」だ。
4. 迅速なる緊急展開部隊
「これなら、中央管制室で警報を聞いてから、3分以内に村のどこへでも駆けつけられる」
ツヨシは数台の量産を指示した。
サイドバッグには予備の「音響閃光弾」と「救急キット」を完備。
さらに、荷台を連結した「サイドカー仕様」も開発し、負傷者の搬送や重装備の輸送も可能にした。
「これで私の足腰も少しは楽になる。……さて、次は道路の舗装(アスファルト化)を考えんといかんな」
ツヨシの飽くなき探求心は、ついに村の「物流」と「交通」に革命を起こし始めていた。




