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異世界転生:66歳元教員ツヨシの悠々自適な開拓生活  作者: 羽越世雌
第四章:なぜこの世界に呼ばれたのか
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第八十話:魔法の酵母と黄金のパン

ルナが「創造の魔力」に目覚めてから一週間。村の畑は見違えるほど豊かになったが、ツヨシには一つの悩みがあった。

「収穫量が増えるのはいいが、これだけ一度に採れると、値崩れするか腐らせてしまうな……」


そこでツヨシが目をつけたのが、農作物の「付加価値」を高める加工食品の開発だった。


1. 究極の「分解」と「発酵」


ツヨシは村の物置に眠っていた古い大麦の樽を指差した。

「ルナ、君の力で、この大麦の『糖分』を分解して、最高の『酵母』を活性化させてみてくれないか?」

「コウボ……ですか?」

首を傾げるルナに、ツヨシは理科の知識を噛み砕いて説明する。微生物による分解、すなわち発酵こそが、食材を魔法のように変えるのだと。


ルナは樽の中に手をかざし、意識を集中させた。

「大麦のデンプンを糖に変え、菌に力を……。壊すのではなく、目覚めさせる……」


2. 黄金の大麦パン


活性化した酵母と、ルナが土壌改良して育てた最高級の小麦。これらを組み合わせ、ツヨシの指導のもとで村の女たちがパンを焼き上げた。


焼き上がったパンは、これまでの村の「石のように固い黒パン」とは別物だった。

外はカリッと黄金色に輝き、中は雪のように白く、手で裂けば驚くほどふわふわと柔らかい。


「……信じられん。これが本当にうちの村の麦なのか?」

村長が一口食べると、その表情は一変した。

「甘い……! 噛めば噛むほど、太陽の味がする!」


3. 『ルナの贈り物』


ツヨシはこのパンを「ルナの贈り物」と名付け、行商人のカイルを通じて近隣の街へ試験的に卸すことにした。


数日後、カイルが息を切らして村へ戻ってきた。

「ツヨシさん、大変だ! パンがあっという間に完売して、街の領主様や豪商たちが『もっと寄こせ』と押しかけてきてるんだ!」


ただの農村だった場所が、一夜にして「伝説のパンが生まれる村」として注目され始めたのだ。村人たちは現金収入に沸き、ルナも自分の力が皆を笑顔にすることに、深い喜びを感じていた。



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