表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生:66歳元教員ツヨシの悠々自適な開拓生活  作者: 羽越世雌
第三章:未開の地のポテンシャル
67/74

第六十七話:噂を呼ぶ黄金の香り

「トマトソース」と「チーズ」の衝撃は、森の小さな村を瞬く間に変貌させた。

第六十六話で隣町へと流れた「奇跡の料理」の噂を聞きつけ、この不便な村にまで馬車を走らせる者が現れ始めたのである。


1. 押し寄せる「美食の探求者」たち


村の入口には、見慣れない身なりの商人や、好奇心旺盛な冒険者たちが数名、手持ち無沙汰にたむろしていた。


「おい、ここか? 白い宝石がとろけるという料理があるのは」

「赤い実のソース、あれを一度食べないと商人の面目が立たんのだよ」


村長が困り顔でツヨシの元へやってくる。

「ツヨシさん、嬉しい悲鳴ですが、皆が例の『ぴっつぁ』を求めて村の食料を食い尽くしそうな勢いです。どうにかして、もっと手軽に、大人数に振る舞えるものはありませんか?」


ツヨシは顎をさすり、少し考え込んだ。

「石窯で焼くピッツァは時間がかかりますからね。……よし、では『黄金の揚げ物』と、新しい『主食』を試してみましょうか」


2. 黄金の包み揚げ:パンツェロッティ


ツヨシが目をつけたのは、ピッツァと同じ生地を使いつつ、より手軽に調理できる「揚げピザ(パンツェロッティ)」だ。


「リナさん、生地の中にチーズとソースを閉じ込めて、そのまま油で揚げてみてください」

「えっ、焼かずに揚げるんですか?」


大鍋にたっぷりと注がれた良質な木の実の油。そこに三日月形に包まれた生地を投入すると、ジュワーッという心地よい音と共に、香ばしい「黄金色」へと変化していく。


「これなら歩きながらでも食べられます。まさに、異世界のファストフードですよ」


3. 麺の進化:カルボナーラ風ソース


さらにツヨシは、トマトに飽きた者たちのために、村で余り始めた卵と山羊のチーズを使った新しいパスタを提案する。


「トマトを使わない、濃厚な『白いパスタ』です」


茹で上がった麺に、たっぷりのチーズ、卵黄、そして塩漬けにして干しておいた「猪肉の燻製」を刻んで合わせる。粗挽きの黒胡椒を振れば、それは現世でいうところの「カルボナーラ」に近い。


その濃厚なコクと肉の旨味は、特に体力を消耗する冒険者たちの心を鷲掴みにした。


「なんだこれは……! 赤いソースも凄かったが、この白いソースの重厚感はどうだ。力がみなぎってくるぞ!」


4. 開拓地が「聖地」へ


村の広場には、丸太で作った簡易的なカウンターが並び、ツヨシが教えた「揚げピザ」や「濃厚パスタ」を頬張る人々で賑わっていた。


「ツヨシ先生……あなたはただの開拓者じゃない。この土地を、食の聖地へと変えてしまった」

村長が感動に震えながら呟く。


ツヨシは、賑わう人々を眺めながら、自作のハーブティーを一口飲んだ。

「食は文化のいしずえです。お腹が満たされれば、人は争いを忘れ、笑顔になります。教員時代も、給食の時間はみんな大人しかったものですしね」


しかし、この賑わいは単なる「食」の流行だけでは終わらなかった。

ツヨシの作る「黄金の料理」が、やがてこの辺境の村に巨大な富と、そして権力の影を呼び寄せることになるとは、まだ誰も気づいていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ