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異世界転生:66歳元教員ツヨシの悠々自適な開拓生活  作者: 羽越世雌
第二章:社会構造の変革(魔物との共生)
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第四十八話:不本意な聖地、そして開校のチャイム

「先生……。どうすんだよ、この状況」


カインが指差した先には、開拓地の入り口に続く一本道に、見渡す限りの行列ができていた。

それも、武装した兵士ではない。豪奢な法衣をまとった聖女、尖った帽子を被った自称大魔道士、さらには国を追われたという若き貴族たちまでが、キラキラとした瞳でこちらを見つめている。


「伝説の賢者様! ぜひ、私に万物を操る真理を教えてください!」

「あの泥の沼……あれは空間転移の応用ですか!? ぜひ弟子に!」


彼らの前には、ツヨシが「立ち入り禁止」の立て札代わりに置いた、古びた黒板とチョークが置かれていた。


【教員のさが


ツヨシは深いため息をついた。

「私はただ、静かにジャガイモを育てたいだけなんですがねぇ……」


しかし、並んでいる若者たちの中には、慣れない野宿で顔色の悪い者や、魔力の使いすぎでフラフラになっている者もいる。それを見た元教員・ツヨシの「職業病」が疼き出した。


「……カイン君、アイリスさん。とりあえず彼らを整列させてください。あと、そこの聖女様、猫背ですよ! シャキッとしなさい!」


その一喝で、ざわついていた群衆が「ピシッ」と凍りついた。

現代日本の「厳しいが愛のある生活指導」が、異世界の天才たちに突き刺さった瞬間だった。


【聖地・ツヨシ学園の誕生】


数日後、開拓地は劇的な変貌を遂げていた。


ツヨシは、地下遺跡(物置)から持ってきた「プレハブ工法ユニット」を使い、あっという間に複数の平屋を建てた。それが、彼らにとっての「教室」であり「寮」となった。


「いいですか、魔法の前にまずは『算術』です。計算ができない者に、正確な魔力出力など不可能です」


ツヨシは黒板に向かい、現代の数学を教え始めた。

「聖地」を求めてやってきた賢者候補たちは、当初「なぜこんな単純な数字を……」と侮っていたが、ツヨシが教える「微分積分」や「統計学」の概念に触れるや否や、泡を吹いて卒倒した。


「こ、これは神の言語だ……! これまで感覚で使っていた魔法が、数式で完全に説明されていく……!」

大陸屈指の魔導師が、ノートに数式を書きなぐりながら涙を流している。


【給食当番と掃除の時間】


ツヨシの教育は学問だけにとどまらない。


「聖女様。魔法で汚れを消すのは禁止です。雑巾がけは下半身を鍛える立派な修行ですよ。はい、一列に並んで!」

「は、はい! ツヨシ校長先生!」


大陸で崇められる聖女が、膝をついて廊下を磨く。

「剣聖」と呼ばれる凄腕の戦士が、三角巾を被って「今日の給食(ジャガイモの煮っころがし)」を配膳する。


カインは、その光景を遠くから見ながら呆れ果てていた。

「……最強の軍隊を作るより、こいつらを更生させる方がよっぽどすげえよ。今じゃ帝国のスパイですら、先生に叱られるのが怖くて必死に草むしりしてやがる」


【そして、本当の校門が立つ】


ある朝、ツヨシは物置から「あるもの」を取り出した。

それは、古代の素材で作られた重厚な門扉と、カインに頼んで彫ってもらった一枚の看板。


そこには、この世界の言葉と日本語でこう刻まれていた。


『開拓地立・ツヨシ学園』


「先生、ついに看板出しちまったか」

「ええ。こうなったら、卒業するまではしっかり面倒を見てあげないと。何より……彼ら、結構いい労働力になりますから。今年の収穫は豊作間違いなしですよ」


ツヨシは眼鏡をクイと上げ、満足げに微笑んだ。

伝説の賢者としてではなく、一人の「校長」として、異世界での第二の教育人生が本格的に始まってしまったのである。

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