第四十七話:管理者権限と農機具の革命
「先生、来たぜ。北の峠だ。帝国の『白銀騎士団』……重魔導アーマーを三機も連れてやがる」
カインが双眼鏡代わりに使っている魔法具を片手に、苦々しく吐き捨てた。
カインの裏切りと、この地に眠る「古代遺産」の噂を聞きつけ、帝国が実力行使に出たのだ。
【認証:ツヨシ】
ツヨシは慌てることなく、地下遺跡の入口……今では「地下物置」と呼んでいる場所の操作パネルの前にいた。
「『指紋、虹彩、および音声による認証を行います』……か。なんだか懐かしい響きだね」
ツヨシがパネルに触れると、古代の合成音声が響く。
『——管理者権限を確認。 剛様、お久しぶりです。前回のログインから3,652,410日が経過しています——』
「三、三百万日!? 先生、あんた何者なんだよ……」
カインが呆然とする中、ツヨシは淡々と「設定」をいじり始めた。
「今の私には物々しい兵器は必要ない。ただ、この畑を守るための『道具』を少しアップデートさせてもらおうかな」
【魔改造・トラクター「五月雨」】
村の広場に置かれていた、アイリスが普段引いている「大型耕運機(ツヨシお手製の木製)」が、地下から伸びてきたナノマシン・アームによって包み込まれた。
数分後、そこには——。
重厚なセラミック装甲をまとい、ホバーで浮遊し、複数の掘削ドリルを備えた「多目的災害救助型農機」が完成していた。
「よし、これを『ツヨシ一号』と名付けよう」
「ダサい! 名前はダサいが、放ってるプレッシャーが王宮の守護竜よりやべえぞ!」
【教員の指導、帝国の絶望】
村の入り口まで迫った帝国軍。
「この地の遺産は帝国のものだ! 抵抗する者は——」
騎士の言葉が終わる前に、ツヨシが「ツヨシ一号」の遠隔操作パネルを叩いた。
「皆さん、ここは私有地です。許可なく立ち入ることは、校則違反……いえ、不法侵入ですよ」
『防衛プロトコル:害獣駆除モード起動』
ツヨシ一号のドリルが高速回転し、地面に潜り込んだかと思うと、騎士団の足元の土を瞬時に耕し、底なしの「フカフカの泥沼」へと変えてしまった。
「な、なんだこれは!? 馬が……魔導アーマーが沈んでいく!」
「肥料(堆肥)を混ぜすぎたかな? かなり粘り気があるはずですよ」
さらには、農機から放たれた「防虫用高周波」が、帝国軍の魔導アーマーの制御回路を狂わせ、騎士たちは踊るようにガタガタと震え始めた。
【平和への第一歩】
結局、一発の矢も放たれることなく、帝国最強の騎士団はドロドロの泥まみれになり、最後はカインの「物理的な説得(威嚇)」によって敗走していった。
「……先生。あんた、その気になれば世界を滅ぼせるだろ」
カインが冷や汗を拭いながら尋ねる。
「滅ぼしませんよ。ただ、この機械のおかげで、明日のジャガイモの植え付けが楽になりそうだ。カイン君、君も操作を覚えなさい。数学が得意なら簡単だ」
ツヨシは穏やかに笑いながら、泥だらけになった「かつての教え子」たちに、温かいお茶を振る舞う準備を始めるのだった。




