表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生:66歳元教員ツヨシの悠々自適な開拓生活  作者: 羽越世雌
第二章:社会構造の変革(魔物との共生)
38/75

第三十八話:裸の付き合いと極楽の露天風呂

「……出たぞーッ! お湯だ! 温かいお湯が吹き出したぞ!」


アルベルト騎士団長の歓喜の叫びが、村の北側にある岩山に響き渡った。

聖教国が誇る秘宝「聖剣」は今、ツヨシの指導により「ツルハシ代わりの掘削具」として酷使され、ついに地下深くの熱源へと到達したのだ。


ツヨシはタオルを首にかけ、満足げに頷いた。

「いやあ、お疲れ様。アルベルト君。これでようやく、私の悲願だった『教育的リフレッシュ施設』が作れるよ」


【異世界初のスーパー銭湯「悠々湯」建設】


ツヨシの指示は的確だった。

定年後に趣味で通い詰めた全国の温泉地の記憶を呼び起こし、彼は現場監督として騎士たちと魔族たちを指揮した。


石造りの大浴場:

騎士団が切り出した大理石を、魔族の土魔法で隙間なく接合。床には「滑り止め」の加工を施す念の入れようだ。


魔力式追い炊き機能:

火系魔導師たちが「一生の不覚」と泣きながら、風呂の温度を42度に保つ魔法陣を刻み込んだ。


サウナと水風呂:

「我慢の先にある『ととのう』という境地を教えよう」というツヨシの言葉に、騎士たちは新たな修行だと思って食いついた。


【「裸の付き合い」の教育的効果】


数週間後、ついに「悠々湯」がプレオープンを迎えた。

そこには、前代未聞の光景が広がっていた。


「……おい、魔族。背中を流してやろうか?」

「ふん、人間ごときに。……だが、その、左の方が少し痒いな。頼む」


脱衣所で武器を預け、服を脱ぎ捨てれば、そこにあるのはただの「おじさん」と「若者」の肉体だけだ。

ツヨシが提唱する「裸の付き合い」は、種族間のわだかまりを溶かす強力な洗浄剤となった。


湯船に浸かりながら、アルベルトは隣に座る魔族の戦士に語りかける。

「……我々はなぜ、あんなに血眼になって戦っていたのだろうな。こうして湯に浸かっていれば、平和が一番だとわかるものを」


「全くだ。ツヨシ先生の言う通りだ。戦いよりも、風呂上がりの一杯の方が価値がある」


【風呂上がりの黄金コンビ】


風呂から上がった客たちを待ち受けていたのは、ツヨシが用意した「湯上がり処」だった。


「はい、お疲れ様。冷えた牛乳……と言いたいところだけど、今日は特製の『フルーツフレーバーウォーター』と、出来たての『温泉卵』だよ」


ツヨシが手際よく配るのは、村の養鶏場で採れた卵を温泉の熱でじっくり仕上げた温泉卵。それに、ほんの少しの岩塩を振っただけのシンプルなものだが、火照った体には何よりのご馳走だ。


「……う、うまい。この絶妙な半熟加減、奇跡か!?」

「ツヨシ先生、この黄色い飲み物(マンゴー風果実水)は一体……!? 魂が洗われるようだ!」


【波乱の予感:観光地の噂】


この「温泉リゾート」の噂は、瞬く間に近隣諸国へと広がった。

教皇が持ち帰った石鹸とカレー、そして「敵同士が全裸で笑い合っている」という衝撃的な報告。


視察を終えた各国の商ギルドや、密偵たちは皆、同じ感想を抱いて帰国した。

「あそこは楽園だ。それも、一人の老教師が支配する、恐ろしく平和な楽園だ」


そんな中、ツヨシの元に一人の客が訪れる。

それは聖教国の人間でも、魔王軍の魔族でもなかった。


「……お主が、噂の『導師』か? ウチの若い衆が世話になったようで」


現れたのは、小柄だが筋肉質な体躯に、長い髭を蓄えた老人。

大陸随一の技術集団「ドワーフ族」の族長であった。


「ツヨシさん。あんたの作った『モール』と『風呂』、面白いが……構造が甘いな。わしらドワーフの技術クラフトを入れれば、もっとすごいもんができるぜ?」


ツヨシは眼鏡を指で押し上げ、不敵に微笑んだ。

「それは心強い。ちょうど『全自動洗濯機』と『床暖房』の設計で行き詰まっていたところなんですよ。……さあ、まずは一風呂浴びてから話をしましょうか」


ツヨシの開拓生活は、ついに「異世界産業革命」の入り口へと差し掛かろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ