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異世界転生:66歳元教員ツヨシの悠々自適な開拓生活  作者: 羽越世雌
第二章:社会構造の変革(魔物との共生)
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第三十七話:教皇の家庭訪問と村の百貨店構想

「……ここが、報告にあった『魔窟』なのか?」


聖教国の頂点、最高教皇ベネディクトゥスは、豪華な馬車の窓から外を眺め、絶句していた。

彼が予想していたのは、不気味な魔力が漂い、騎士たちが洗脳されて鎖に繋がれている地獄絵図だった。


しかし、目に飛び込んできたのは、見たこともないほど平坦で美しい「舗装道路」と、規則正しく並んだ真っ白な街灯。そして、何より衝撃的だったのは、上半身裸で「イチ、ニ、サン!」と軽快な掛け声を出しながら、巨大な石材を軽々と運ぶ元・鉄血騎士団の姿だった。


「アルベルト……お前、その手にあるのは聖剣ではないのか?」


馬車から降りた教皇の前にいたのは、泥だらけの顔で満面の笑みを浮かべる騎士団長だった。その手には聖剣の代わりに、ツヨシ特製の「一輪車ネコ」が握られている。


「おお、教皇殿! 良いところに来られました! 今、ツヨシ先生から教わった『コンクリートの養生』が終わったところです。見てください、この滑らかな表面!」


「……養生? ツヨシ先生……?」

教皇は、あまりの変貌ぶりに頭を抱えた。


【ツヨシvs教皇:伝説の三者面談】


村の中央にある「開拓者事務所」という名のプレハブ小屋(騎士たちの実習で建てられた)にて。

ツヨシは、威厳たっぷりの法衣を纏った教皇を、ごく普通の「生徒の保護者」として迎え入れた。


「まあまあ、教皇さん。そう固くならずに、まずはこのハーブティーでもどうぞ。村で採れたミントです」


「……貴様がツヨシか。我が国の精鋭を勝手に土工に変えた不届き者とは」


教皇は鋭い眼光でツヨシを射抜こうとしたが、ツヨシは動じない。定年まで数多のモンスターペアレントと渡り合ってきた彼にとって、この程度の威圧感は「少し元気な保護者」レベルだ。


「アルベルト君たちは、本当に優秀な生徒ですよ。ただ、少しだけ『力の使い道』を教わっていなかっただけです。彼ら、今では自分たちが作った道を通る村人の笑顔を見て、泣いて喜んでいますよ。これこそが本当の『救済』ではありませんか?」


「ぐっ……それは……」

正論を突きつけられ、教皇は言葉に詰まる。


「ところで教皇さん。せっかく遠出されたんです。この村の新しい試み、『ショッピングモール・ツヨシ』のプレオープンを見ていきませんか? 経済の循環も、教育の一環ですからね」


【ショッピングモール・ツヨシの衝撃】


ツヨシが騎士たちに「卒業制作」として作らせたのは、巨大な二階建ての石造建築だった。

そこには、これまでこの世界には存在しなかった概念が詰め込まれていた。


対面販売ではない「セルフ形式」:

「どうぞ手に取って見てください」というツヨシの発案に、教皇は驚愕する。高級品を客に触らせるなど、この世界ではあり得ない。


定価販売の導入:

「値切りの交渉」を不要にし、誰もが同じ価格で買える平等。


フードコートの併設:

一階の一角からは、スパイシーなカレーや、焼きたてのパンの香りが漂ってくる。


「これが、魔族も人間も共に利用する店……だと……?」


教皇が見たのは、魔族の少女が聖教国の騎士に「そのリボン、似合うね」と笑いかけ、騎士が顔を赤らめながら「ああ、ありがとう」と答える光景だった。


そこには、教皇が長年唱えてきた「異端殲滅」という教義の欠片もなかった。あったのは、ただ穏やかな日常と、美味しい食事への期待だけだ。


【教皇の敗北、そして……】


夕暮れ時。

教皇は、自分のお土産として「ツヨシ印の高級石鹸」と「冷凍保存されたカレーセット」を大量に買い込んでいた。


「ツヨシ殿……。認めざるを得ない。我々の教会が数百年かけて成し得なかった『平和』が、ここにはある」


「ははは。私はただ、みんなが気持ちよく過ごせるように掃除と整理整頓、そして少しの勉強を勧めただけですよ」


教皇は深くため息をつき、御者に告げた。

「……王都へ戻る。そして、国の教科書をすべて書き直すぞ。これからは『剣』の時代ではない。『スコップとカレー』の時代だ」


こうして、聖教国との紛争は「ツヨシによる教育的指導」によって、実質的な和解へと向かうのであった。


しかし、ツヨシの野望は止まらない。

「次は……やっぱり、冬に備えて『温泉施設』が欲しいね。アルベルト君、掘削作業の準備だ!」


ツヨシの悠々自適な開拓生活に、今度は「リゾート開発」の波が押し寄せようとしていた。

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